Google は The Android Show I/O Edition 2026 で Android をベースとした新しいデバイスカテゴリ「Googlebook」を正式に発表しましたが、OS の正式名称を含め、デバイスの詳細はまだ伏せられています。
公式発表で触れられた Gemini との連携やいくつかの AI 新機能、一部の UI のほか、Google 幹部からのコメント、リークから開発中の機能なども明らかにされていますが、とにかく現状では情報がなさすぎて、どのようなデバイス・仕様になるかがはっきりとしていません。
この記事では、Chromebook を 10 年以上使ってきた筆者が、Googlebook に対して不安に感じていることと、期待できることについて簡単にまとめていきます。
Googlebook に対して不安に思うこと
まずは、Googlebook に対して不安に思うことからですが、これについては多くのユーザーは共通していると思います。
デスクトップ版と同等の Chrome が使えるか
Chromebook (ChromeOS) では、Chrome ブラウザは Android 版ではなくWindows や macOS などと同じデスクトップ版で動作しています。実際にはアップデートや OS の差異があるため、厳密には同等の機能が利用できるわけではありませんが、Android 版では利用できない Chrome 拡張機能が使えることが最大のメリットです。
現在、Android 版 Chrome でも拡張機能への対応が進められており、すでにいくつかの Aluminium OS (Googlebook に採用される暫定の OS 名称) に関連したリークでは Chrome 拡張機能が利用できることが示されていますが、すべての拡張機能が完全に動作するわけではないことも指摘されています。
さらに、今年に入って正式導入された、1 つのタブで 2 つのページを並べて表示できる「分割ビュー (分割表示)」が利用できるかどうかも分かりません。少なくとも Android のデスクトップモードでは利用できませんでした。
このほかにも、Gemini in Chrome やパフォーマンス関連の設定項目などが、リリース時に利用できるかどうかわからない点が課題です。
おそらく、今年の秋の正式リリースまでにはほとんどの機能を共通化してくるとは思いますが、デスクトップ版ではなく Android 版の拡張・拡大のようになってしまい、使いづらくならないかが懸念されます。
UI が Chromebook と違う
Googlebook の正式発表や、これまでのリークで確認されている画面 (UI / ユーザーインターフェース) を見る限りでは、ChromeOS ではなく Android デスクトップモードがベースとなっているようです。
Android ベースの OS になるので仕方のない部分ですが、従来は右下に表示されていたクイック設定などのアクセスが左上または右上に移動し、デスクトップにアイコンやフォルダ、ファイルをなどを置くことができるようになるといった違いがあります。
また、Chromebook ではアプリのウィンドウを 4 つの分割方法(フラグ Window splitting を使うことでさらに細かく分割) で利用できましたが、Android では左右の分割が基本になるため、細かい調整ができるか気になる点です。
あとは、これまで ChromeOS の UI にようやく慣れたユーザーが Googlebook に移行するときに抵抗がないかということです。現在の ChromeOS は、キーボードの配置を含めて Windows からリプレイスしたユーザーが違和感なく使えるようにしていますが、新しい UI のホーム画面は、どちらかといえば macOS に近い見た目となっているため、パッと見た印象で抵抗を持たれないかという点もあります。
いずれにしても、これまで ChromeOS や Windows を長く使ってきたユーザーが、新しい UI を見てどう思うか、実際の操作性はどうなのかが懸念点です。
大画面でどこまでできるのか
Chromebook で Android アプリを使えばわかるように、OS 側がある程度サポートしていても、アプリ側が大画面をサポートしていなければ快適に使うことができません。
そのため、Google は今年 3 月にアプリ開発者に向けて、Android アプリのデスクトップ向けデザインガイドラインを公開しています。しかし、結局はアプリ側の対応次第であり、Googlebook がリリースされたときに必ずしもアプリが最適化されているわけではないことに注意が必要です。
おそらく、最近 Android 版 Premiere の投入を発表した Adobe や、ChromeOS に最適化されたアプリを示す「add to chromebook」バッジ取得済みアプリの Android 版などは早期に対応する可能性があります。
デバイスのサポート期限がどうなるのか
Chromebook の場合、Google が定めたアップデートの保証期間 (自動更新ポリシーの期限) が統一されており、最新モデルの場合は最大 10 年間が適用されるため、2036 年 6 月までのアップデートが提供されています。これは Google が各メーカーに指定しているものであるため、全メーカーがこれに合わせています。
一方で、Android デバイスの場合は、皆さんもご存知のようにメーカーごとにサポート方針・期間が異なり、Google Pixel スマートフォンであれば 7 年間の OS・セキュリティアップデートが保証されていますが、それ以外のメーカーは独自の裁量に任されています。
そのため、Googlebook も ChromeOS のように一律でサポート期限が保証されるのか、Android ベースになることで各メーカーの方針に任せられるのかが分かりません。場合によっては 5 年未満、OS 更新やバージョンアップなどがメーカーによって異なってしまう可能性も考えられます。
とはいえ、あくまでも Googlebook というデバイスカテゴリで統一されるので、これは一律で保証されるものだと考えていますが、Chromebook と同等のレベルを実現できるのかは分かりません。
なお、Google は Googlebook の発売後も Chromebook を継続する方針を示しており、最大 10 年間のサポートも継続することを明言しています。これは一般ユーザー向けだけでなく、教育・法人向けも同様です。
デバイスの管理が複雑にならないか
一般ユーザーにはあまり影響はありませんが、企業や学校で Chromebook を使っている場合、Google 管理コンソール (admin.google.com) を使うことで、Chromebook を簡単に管理することができます。
Chromebook は Google アカウントと紐づくことで、アカウントの管理と一緒にデバイスも簡単に管理できることが特長でした。
しかし、Android ベースになることで、従来の「Chrome」の設定で対応できるのか、「モバイルとエンドポイント」扱いで対応することになるのか、はたまた「Googlebook」という新しいカテゴリで管理するのかがまだ分かりません。
この点について、Google は企業・法人向け Googlebook の導入は段階的に行う方針であることを明らかにしており、管理者や既存のユーザーへの負担を最小限に抑える仕組みを検討していると述べています。そのため、混乱は最小限になると思われますが、しばらくの間は管理がやや複雑になる可能性もあります。
Gemini の機能がどこまで実用的か
Googlebook は Gemini を活用した AI 機能が統合されていることがウリの一つで、現時点では、「Magic Pointer」と「Create Your Widget」という 2 つの機能が正式に発表されていますが、その機能がどこまで実用的かという点です。
「Create Your Widget」はプロンプトを入力するとカスタムウィジェットを Gemini が生成するという機能ですが、便利そうな機能であるものの、何度も使う機能ではない印象です。
「Magic Pointer」も使いどころはありそうですが、Chromebook Plus でも Gemini in Chrome などでも似たようなことができるため、あえて Googlebook でやる必要があるのかという気がします。
しかし、Googlebook は AI ネイティブに構築されているため、オンデバイスで処理できるといったメリットがある可能性があります。また、モデルが選択できるのかや、カスタム指示・スキルにも対応するのかなど、まだ不明な点は多いため、今後機能の詳細が明らかになるまでは、なんとも言えません。
発表時に紹介された「Cast My Apps」や「Quick Access」といった機能は、Chromebook で導入されている「スマートフォンハブ」や「アプリストリーミング」に近い機能です。
実際にこれらをお使いの方はわかると思いますが、接続が不安定になることが多いため、これも安定して使えるかどうかや、そもそもスマートフォンから直接ファイルを転送したり、アプリをキャストする機会があるかどうかといった点も課題になります。
価格次第
不安に感じていることの最後は、Googlebook の価格帯がどの程度になるかという点です。
Google は最初のリリースをプレミアムな価格帯に絞っており、これまでの情報では平均的な Chromebook Plus の価格よりも高い可能性が示唆されています。つまり、海外では 800 ドル以上で、日本では 10 万円を確実に超えるラインとなります。
なお、Kompanio Ultra 910 を搭載した Lenovo Chromebook Plus Gen 10 の価格が約 17 万円(発売当初 12 万程度)に値上がりしていることから、初期の Googlebook は 20 万円を超えて来る可能性が高いと考えています。
Googlebook に期待していること
続けて、Googlebook に期待していることを簡単にまとめていきます。
Android アプリとの親和性が高まる
これまで、ChromeOS では仮想環境の Android が動作していたため、Android アプリが必ず使える、あるいは安定して使うことができるとは限りませんでした。また、デスクトップに対応していないアプリもあるため、Chromebook では Android アプリを使うよりも Web アプリを使うことが基本となっていました。
しかし、Googlebook では Android ベースになることで、Android アプリをネイティブに使うことができるようになり、さらに開発者次第ではあるものの、Android PC (大画面デバイス) 向けのデザインガイドも公開されているため、Googlebook でも使いやすくなることが期待されます。
アプリの選択肢が増える
Android アプリとの親和性が高まることで、アプリの選択肢がこれまでの ChromeOS よりも大きく広がることになります。
そのため、従来 Web アプリでは制限されていた機能や、Web 版がないアプリ・サービスであってもモバイルアプリ版があれば利用できるようになります。ただ、前述のようにアプリ側の対応が必要である点は変わりません。
また、Googlebook 上で Linux ターミナルを使えるか気になるユーザーもいると思いますが、すでに Google Pixel デバイスをはじめ一部の Android デバイスでは、ChromeOS と同様に Debian をターミナル上で使うことができているため、ここは心配をしていません。
オフラインでもできることが増える
Chromebook でどうしてもネックになりがちだったのは、オフラインでの作業です。
昨今の業務環境であればほとんどがネットワークに接続されており、Chromebook を選ぶユーザーはそれが前提だとは思いますが、東海道新幹線での移動中やネットワークの不調などにより、やむを得ずオフライン状態での作業が必要になるケースは稀にあります。
この場合、Google Workspace の一部アプリや PWA、 Android アプリではオフラインに対応するものもありますが、アプリの選択肢が少ないこともあり、オフラインでの作業は割り切りが必要でした。また、事前にオフラインで利用できるように設定しておく必要もありました。
しかし、Googlebook では Android アプリを利用することで、この点をカバーすることができるようになります。とはいえ、Googlebook もより快適かつ便利に使うにはオンラインへの接続が必要になると考えられます。
オンデバイス AI の活用
Googlebook は AI の利用を前提に設計されていることから、Gemini Nano などオンデバイス AI を活用した様々な機能が導入されると考えられます。
すでに「Magic Pointer」と「Create Your Widget」の 2 つの機能は発表されていますが、例えば、現在 Chromebook Plus で利用できる「文書作成サポート」や「文書読解サポート」などの AI 機能はネットワークに接続していないと利用できませんが、これらの機能がオフラインでも利用可能になるなども期待されます。
まとめ
Googlebook は、Android ベースになることで従来の Chromebook の弱点であったオフライン作業の制限やアプリの選択肢の少なさが改善され、オンデバイス AI をさらに活用できる可能性があります。
一方で、デスクトップ版 Chrome の拡張機能や新しい UI の操作性など、従来の ChromeOS ユーザーにとっては実用性の点で懸念があります。また、初期モデルは 20 万円を超えるようなプレミアムな価格帯になる可能性も高く、ユーザーを選ぶ可能性が高いこともあります。
しかし、既存の Chromebook は引き続き利用することができ、現行のユーザーはすぐに Googlebook に移行する必要はありません。Google は将来的により手頃な価格や普及帯の Googlebook を投入する意向も示しているため、今後はこの状況が変わる可能性があります。
まずは今秋の正式リリースを待ち、詳細な仕様や価格などが出揃うのを待ってから検討することがベストです。
- 関連記事:








