今回の記事では、2024年にリリースされた MediaTek の新しいチップセット Kompanio 838 (MT8188) を初めて採用した「Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9」の実機レビューをお届けします。
この Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9 は、11インチのタブレットスタイルの Chromebook で、キックスタンド付きカバーと着脱式キーボード、Lenovo USI ペンが同梱されています。2024年10月2日にグローバルで発表され、日本でも10月25日から発売となりました。この機種は2022年にリリースされた Lenovo IdeaPad Duet 370 Chromebook の後継機となります。
なお、国内では Amazon.co.jp 限定モデルの Duet Chromebook 11 Gen 9 には 8GBRAM が搭載されていますが、公式サイトや家電量販店で販売されている同モデルは 4GBRAM になっていることに注意してください。
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ちなみに GIGA スクール構想向けなど教育市場では、ペンホルダーを備えたより堅牢性の高いキックスタンド付きカバーに変更された「Lenovo Chromebook Duet EDU G2」としてリリースされています。Duet EDU G2 はカバーが異なるだけでハードウェアは同じです。
スペック
今回、レビューしている実機のスペックは次のとおりです。なお、本機は海外から購入しているため英語配列キーボードとなっていますが、それ以外の仕様は国内向けの Amazon.co.jp 限定モデルと違いはありません。
ディスプレイ | 11インチ(10.95インチ) 1920×1200 タッチ対応 USI ペン対応 |
---|---|
CPU | MediaTek Kompanio 838 |
RAM | 8GB LPDDR4X |
内部ストレージ | 128GB eMMC |
外部ストレージ | – |
Webカメラ | 5MP プライバシーシャッター |
アウトカメラ | 8MP |
ポート | USB-C (3.2 Gen 1) ×2 3.5mm ジャック |
バッテリー | 最大12時間 |
ネットワーク | Wi-Fi 6 Bluetooth 5.3 |
その他 | USI ペン・キーボード・カバー 同梱 |
サイズ | [タブレットのみ] 255.37×166.92×7.6mm [全部込み] 255.37×166.92×17.8mm |
重さ | タブレットのみ : 510g キーボード : 295g キックスタンドカバー : 159g 全部込み : 964g |
MediaTek の新しい Kompanio 838 を搭載し、8GBRAM と 128GB eMMC ストレージを搭載しています。Chromebook のパフォーマンスのなかではミッドレンジクラスになり、これまでの MT チップや Kompanio 500 シリーズのチップよりも一つ上の性能です。
後ほどベンチマークを紹介しますが、前世代に採用されていた Snapdragon 7c Gen 2 や Celeron N4000 シリーズよりもベンチマークスコアは上で、実際の体感上もそれらより上で、Intel N100 プロセッサなどと同程度の快適さがありました。
デザイン
Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9 のデザインですが、タブレットとしてはスタンダードな見た目で、リアパネルは上4分の1とそれ以外のツートンカラーっぽくなっています。
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本体にはしっかりと剛性があり、金属ボディなのでチープさはありません。Chromebook でもタブレットでも安心して使うことができます。
ペンホルダー & キックスタンド付きカバー
一方、キックスタンドの形状はこれまでのデバイスと違って少しユニークで、斜めにカットされた部分を折り曲げて角度を調整できます。これも Surface ライクな無段階調整になっているため便利ですが、膝上で使うには不安定です。写真では少しタブレットが斜めになっているように見えますが、画面側はちゃんとフラットに見えるので、特に問題はありません。
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ちなみにこの独特な形状のキックスタンドのおかげで、横向きだけでなく縦向きでもある程度の角度までは使うことができます。
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ドキュメントやウェブサイトなど縦長コンテンツを見たいときに活用できますが、角度をつけすぎると不安定になって倒れるので一応使える程度の認識が良いです。
また、キックスタンド付きカバーには USI ペンホルダーがあります。ここに同梱されている Lenovo USI ペンをマグネットとツメ部分で収納しておくことが可能です。
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ただし、この USI ペンはワイヤレス充電や USB 充電はサポートしておらず、電池式となっています。マグネットはペンをくっつけるためだけですので注意してください。本体収納式でもありませんが、ペンホルダーがカバーにあるだけでも失くしたり忘れたりしないのでありがたいですね。
ポート類
本体の側面には横持ち(Chromebookとして使う)の状態で、左側面に電源ボタン、3.5mm オーディオジャック、USB-C ポートがあります。上部側面にはボリュームボタン、ウェブカメラのプライバシーシャッターのスライダー、2つ目の USB-C ポートがあります。
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タブレットデバイスながら USB-C ポートが2つ用意されている点は Chromebook Duet 11 Gen 9 のメリットです。充電しながらヘッドセットやマウスのレシーバーを接続したり、周辺機器の接続などにも使えます。USB-A ポートがあればもっと汎用性があったかもしれませんが、USB-C が2つあるだけでも十分です。
なお、どちらも映像出力に対応しており、嬉しいことに WQHD (2,560×1,440) までの外部出力をサポートしています。ただし、外部出力は1つまでに制限されているようなので、2つの USB-C ポートを使ってそれぞれ映像出力するなど2枚以上のモニターに出力はできません(WQHD+FHD はダメだった)。
着脱式キーボードカバー
着脱式キーボードカバーに関しては、前世代の Duet 370 Chromebook と同じキーボードカバーが採用されているようです。そのため、見た目も前世代から大きな変更はありません。
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英語配列ではエンター周りのキーが少しだけ小さめですが、それ以外は小さすぎるわけではなく、キーピッチは確保されています。打鍵感は少し柔らかめですので好みが分かれるかもしれませんが、ドキュメントなどの資料作成から長文メールなども特に不満なく入力することができます。
一方、タッチパッドは小さめです。出先でのちょっとした作業やタッチ操作中心であれば気になりませんが、カーソルを使う細かい作業などにはワイヤレスマウスを使うほうが楽です。
ディスプレイ
ディスプレイは10.95インチで 1,920×1,200 解像度を採用しています。色味や視野角などは十分で、タブレットとして使ったときのタップへの反応などもスムーズで申し分はありません。
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解像度はデフォルトで 1,200×750 相当で表示されており、タブレットとして使うときにはコレくらいがちょうど良いです。Chromebook として使うときには、1,412×882 (デフォルトから85%)に変更すれば11.6インチの HD ディスプレイ搭載モデルよりも広い作業領域を確保することができます。全体的にかなり小さくなりますが、最大の 1,920×1,200 で表示することでフルHD相当の作業領域の確保も可能なので、ディスプレイサイズは小さいもののできることは多いと思います。
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私の場合、普段はタブレットでも Chromebook でも 85% の表示サイズでブラウザやメール、YouTube や Hulu (Android) などで動画視聴などに使っています。Chrome で調べものをしながらドキュメントや Notion など2つのアプリや2つのウィンドウを使うときにはネイティブ(1,920×1,200)にして使うこともあります。
パフォーマンス
Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9 のパフォーマンスですが、これまでのエントリークラスの Chromebook に比べて想像していたよりも優秀です。もちろん Intel Core シリーズや Ryzen シリーズのデバイスまでとは言いませんが、Celeron N4000 シリーズや Snapdragon 7c などよりも快適で、Intel N100 に近い快適さがあります。
ベンチマーク
実際に Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9 で測定しているベンチマークは次のとおりです。
ベンチマークソフト | スコア |
---|---|
Geekbench (Single) | 1,013 |
Geekbench (Multi) | 2,275 |
Geekbench (GPU Valkan) | 1,876 |
PCMARK | 10,665 |
Octane 2.0 Plus (Single) | 37,347 |
Octane 2.0 Plus (Multi) | 204,724 |
JetStream2 | 121 |
Speedometer (2.0) | 94 |
Speedometer (3.0) | 6 |
これを手持ちのいくつかの Chromebook で測定した、近いスコアの Geekbench と Octane 2.0 plus のベンチマークと比較してみます。
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さすがにインテル第10世代 Core i5-10210U には届きませんが、シングルコアでは少なくとも過去数年のエントリークラスの Chromebook で採用されているチップを上回り、マルチコアでは新しい Intel N100 を上回るかほぼ同等クラスの結果となっています。
そのため、タブレットデバイスとしても使える Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9 は同クラスの中でもパフォーマンスが優れており、Chromebook としてもこれまでのエントリーモデルより間違いなく高性能です。
今回のデバイスは画面が小さいので本格的な作業はしていませんが、タブを10個程度開いた状態で記事を書きつつ Pixlr Editor で画像の編集をしたり、ブラウザを開いて調べものをしつつ Notion やドキュメントを使う、Hulu や YouTube で動画を見るといった使い方であれば、動作に目立つ不満はありませんでした。ただ、重たいサイトを10個以上開いていると、読み込み中や描画中に多少待ち時間が出てきます。この辺の許容範囲は人によりけりですが、私の場合は本格的な作業はコレでしないので特に気にはなりませんでした。
バッテリー
一方、Kompanio チップセットなのでバッテリー駆動時間も優秀で、私の普段の使い方に近い使い方で(ただし、同時に開くタブは10個未満)、1時間あたり15%前後のバッテリー消費となりました。そのため、6〜7時間は余裕で使うことができ、サブデバイスとしてちょっとした調べものや動画視聴などで使う程度であれば、7時間以上使うこともできるはずです。
Android アプリの Hulu でドラマを連続で5〜6時間視聴してみましたが、視聴中にバッテリーが切れてしまうことはありませんでした。
カメラ
Chromebook Duet 11 Gen 9 には 8MP AF リアカメラと 5MP フロントカメラが搭載されています。どちらもスマートフォンのように高精細というわけではありませんが、リアカメラではホワイトボードや備忘録としての撮影などには十分に使えますし、フロントカメラも出先などから会議に参加するには十分なレベルです。想像していたよりもキレイに撮影できた印象です。
ウェブカメラ(フロントカメラ)もタブレットデバイスとしては想像していたよりも良く、色もはっきりと映っているため、出先などから会議に参加するときでも問題はないと思います。
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タブレットですがフロントカメラにはプライバシーフィルターが搭載されている点もよく、自宅や学校、職場などで使うときでも不意な映り込を防ぐことができるのは便利ですね。
ただ、AI 関連の機能(個人の Google アカウントでは Google One AI プレミアム課金が必要、GWS では Gemini アドオンが必要)を全部オンにすると、映像が少し遅れたり重く感じるようになるため、常にオンにせず必要に応じて使う程度のほうが良さそうです。
使用感
10.95インチサイズのタブレットデバイスですが、Chromebook として使っても十分使いやすく、外部モニターへの出力も安定して行うことができるため、入門用やサブデバイスだけでなく、外出時のメインデバイスとしても検討する価値は十分にあります。
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メインのデスクトップはゲームやヘビーな作業に使い、ブラウザや動画視聴程度なら外部モニターに接続した Chromebook Duet といった使い方もアリです。
性能的には Chromebook Duet 11 Gen 9 をメインとして本格的な作業は可能ですが、10.95インチのディスプレイではさすがに厳しいため、もしメインで使うのであれば自宅や職場などでは外部モニターを組み合わせるほうが楽です。あとはスプレッドシートの編集や細かい作業をするならマウスを使うほうが楽なので、持ち運び時でもこれも用意しておくと安心かもしれません。
私の場合、メインの Chromebook は外部モニターに接続しっぱなしにして、別アカウントで対応する必要があるときやリビングなどに移動しての軽作業、メインでの作業中の音楽再生や動画視聴などに Chromebook Duet を活用しています。ペンを使う必要があるときにも便利です。
価格
最後に価格についてですが、Amazon.co.jp 限定モデルは通常69,300円で販売されています。この価格は Intel N100 と 8GBRAM を搭載するモデルと大きく変わらず、もう数千円出せば Chromebook Plus を購入することも可能なラインです。
しかし、Amazon では時々クーポンセールなどを実施しており、6万円前後で購入できるチャンスがあります。この場合は非常にお買い得といえるため、もし購入を検討するのであればセールのタイミングを狙うほうが良いかもしれません。
なお、代替候補としては、ASUS Chromebook Detachable CM30 (CM3001) があります(レビューはこちら)。より手頃な価格で本体収納式スタイラスペンを備えますが、Kompanio 520 とワンランク下のエントリークラスチップを搭載しています。マルチタスクをしない作業や動画視聴、会議に参加するだけなどにしか使わないのであれば CM30 もありです。
もしくはマウスコンピューターの Chromebook U1-DAU01GY-A という選択肢もあり、こちらは Intel N100 と 8GBRAM を搭載した11.6インチクラムシェルタイプの Chromebook です(レビューはこちら)。マルチタスクを含め、文書作成などを考えているのでれば選択肢に入ります。
とは言え、11インチクラスのタブレットタイプで、Intel N100 に近い性能を持つ 8GBRAM は Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9 しかないため、できる限り軽量コンパクトで高性能、ペンも使えてタブレットとしても使いたいと考えているユーザーには間違いなくおすすめです。
まとめ
今回は Kompanio 838 と 8GBRAM を搭載した新しいタブレットタイプの Lenovo Chromebook Duet 11 Gen 9 のレビューでした。
パフォーマンスとバッテリー駆動時間を重視してタブレットタイプの Chromebook を探しているのであれば、現状では最もおすすめできる1台です。また、自宅や外出時のサブデバイスでも性能を妥協したくないユーザーにもおすすめです。
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