Google が開発中の次世代ノート PC プラットフォーム「Aluminium OS」について、その全体像が少しずつ明らかになってきました。
ChromeOS と Android を統合するこのプロジェクトは 2024 年の発表以降、求人情報やリーク動画、Google 幹部の発言など複数の経路を通じて開発の進捗が確認されており、2026 年後半のリリースに向けて着実に動いています。
Aluminium OS とは何か
Aluminium OS は、Google が Android の技術基盤の上に構築している、ノート PC (Chromebook) 向けの次世代プラットフォームです。
Google は 2024 年 6 月、ChromeOS の基盤に Android の Linux カーネルや Android Framework といった技術スタックの一部を取り込んでいく方針を正式に発表しました。
目的として挙げられたのは、AI 機能のより速い展開、パフォーマンスの向上、スマートフォンと Chromebook の連携強化です。
同時に、セキュリティや一貫した操作感、管理機能は引き続き提供するとも明言されており、「ChromeOS の見た目や使い勝手はそのままに、OS の内部だけを変える」という方向性が示されていました。
2025 年 7 月には、Android エコシステム担当プレジデントの Sameer Samat 氏が TechRadar のインタビューの中で、ChromeOS と Android を単一プラットフォームに統合する計画が進行中であることを初めて公式に認めました。
翌日には追加の補足として、将来の ChromeOS は「Android の基盤技術の上に ChromeOS のエクスペリエンスを構築したもの」になるとも説明しており、統合の方向性がより具体的に示されました。
「Aluminium OS」という名称が公式に確認されたのは 2025 年 11 月で、Google が LinkedIn に掲載した求人情報に “new Aluminium, Android-based, operating system” という記述が含まれていたことから明らかになりました。
名称の由来は不明ですが、ChromeOS の「Chromium」と同じく金属名+ium という命名規則に沿っている可能性があります。
OS の設計と対象フォームファクター
求人情報には、Aluminium OS が対応するフォームファクターとして次のカテゴリが示されていました。
- ノート PC
- デタッチャブル(キーボード着脱式)
- タブレット
- ボックス(Chromebox 相当)
これは現在の ChromeOS デバイスと同じ構成であり、ハードウェアの展開方針は大きく変わらない見込みです。
価格帯のカテゴリとしては、現行の「Chromebook」、「Chromebook Plus」に加えて、AI 機能に特化した新しい上位グレード「AL Entry」、「AL Mass Premium」、「AL Premium」の 3 つが追加されることが示されています。
また、OS は「AI を軸に構築」されることも明記されており、Gemini をはじめとする AI 機能が基盤から組み込まれる設計になるとみられています。
これまでの主な情報
Aluminium OS に関する情報が本格的に出始めたのは 2025 年秋以降で、以下の出来事が特に重要なポイントとなっています。
Google が PC 向け Android 開発を公式に認める(2025 年 9 月)
2025 年 9 月に開催された Snapdragon Summit 2025 において、Google のプラットフォーム & デバイス担当シニアバイスプレジデントである Rick Osterloh 氏が、PC 向け Android 開発プロジェクトについて公式に言及しました。
Osterloh 氏は「私たちは PC とデスクトップコンピューティングシステム向けの共通の技術基盤を構築しています」と述べ、その基盤が Android であることを明確にしました。
Qualcomm の Snapdragon X シリーズを搭載した Chromebook の開発も Snapdragon Summit 以前から進められており、Google と Qualcomm の協力関係が継続していることが改めて示されました。
「Aluminium OS」の名称が判明(2025 年 11 月)
2025 年 11 月、Google が LinkedIn に掲載した求人情報から、このプロジェクトが社内で「Aluminium 」と呼ばれていることが明らかになりました。
求人情報には対応フォームファクターや価格帯カテゴリのほか、OS が「AI を軸に構築」されることも記載されており、実際の開発に関する情報が初めて示されました。
Android Desktop のリークと動作確認、Desktop Camera の登場(2026 年 1 月〜2 月)
2026 年 1 月、Google の Chromium Issue Tracker に誤って公開された投稿から、開発中の Android デスクトップインターフェースの詳細が明らかになりました。
録画されたデバイス「HP Elite Dragonfly Chromebook (Brya / Redrix)」であることが確認されており、ChromeOS ではなくコードネーム「Aluminium OS (ALOS)」と呼ばれる Android ベースの OS が動作していることが判明しました。ビルド番号「ZL1A.260119.001.A1」から Android 16 ベースであることも示されています。
バグ報告に添付された動画の UI は、現行の Android デスクトップモードとも異なり、ステータスバーは高く、左側に秒付きの時刻と日付、右側にバッテリーや Wi-Fi に加えてキーボード言語表示や Gemini アイコンが並ぶデザインになっています。アプリウィンドウの操作部には最小化・全画面・閉じるボタンが配置され、ChromeOS のウィンドウ操作と非常に近い設計であることに加え、Chrome ブラウザにデスクトップ版でしか利用できなかった拡張機能ボタンも確認されています。
翌 2 月には、Google が Play ストアに「Desktop Camera」アプリ(com.google.android.desktop.camera)を追加したことが確認されました。
アイコンやシャッターボタン、写真と動画の切り替えトグルなど UI の各所が Pixel カメラと共通しており、これまで独自 UI だった ChromeOS カメラアプリから Pixel との統一感を持たせる方向へ向かっていることが分かります。また、動作の様子を示したデスクトップのスクリーンショットは、前述の動画でリークされた UI とは異なり、現在の ChromeOS に非常に近い UI となっていました。
裁判資料が示唆したリリース時期(2026 年 2 月)
Google を巡る独占禁止法訴訟の裁判資料に、Aluminium OS の完全リリースは 2028 年以降になる可能性を示す記述が含まれていたことが報じられました。
この資料によると、2026 年に提供されるのは「商用の Trusted testers 向け」の段階にとどまり、一般向けは 2028 年以降になる可能性があるとされています。一般提供のタイムラインについては、現時点でも公式から明確なアナウンスはありません。
Sameer Samat 氏が MWC 2026 で 2026 年後半リリースを示唆(2026 年 3 月)
2026 年 3 月に開催された MWC 2026 において、Sameer Samat 氏が Android Authority のインタビューに応じました。
裁判資料をめぐる臆測に対し、Samat 氏は「今年後半を非常に楽しみにしている」と述べ、Google 側としては 2026 年というリリース目標を変えていないことを示しています。
また、生成 AI ツールの活用や複雑なワークフロー処理には物理キーボードと大画面が最適だという認識を示し、クロスデバイス連携については Android 17 で開発が進んでいるデバイス間のアプリ引き継ぎ機能をさらに高いレベルで実現するものになるとしています。
同インタビューでは、ChromeOS の存続についても改めて明言されています。教育機関や企業向けには ChromeOS が引き続き提供され、一般消費者向けには Aluminium OS というかたちで、2 つのプラットフォームが並行して維持される可能性が示されました。なお、2026 年 1 月には ChromeOS 製品担当 VP の John Maletis 氏も Chrome Unboxed のコミュニティイベントで同様の方針に言及しています。
壁紙リークと既存 Chromebook のアップグレード対象(2026 年 4 月)
2026 年 4 月には、Aluminium OS の公式壁紙と見られる画像がリークされ、壁紙はライトモード/ダークモードの自動切り替えに対応する「Adaptive wallpapers」と「Chromebook wallpapers」の 2 セットで構成されていることが確認されています。
この壁紙フォルダ名には、開発中の Chromebook のコードネームとなる「lapis」「moonstone」「quartz」「ruby」「sapphire」に加え、現行の Chromebook Plus デバイスのリファレンスボードである「brya」も含まれていました。
Google 幹部は以前より、既存 Chromebook のアップグレードについてはハードウェアのスペック要件が基準になると説明していたものの、どのデバイスが対象になるかは明言していませんでした。しかし、今回の発見により「Brya」ベースの Chromebook Plus は Aluminium OS のサポート対象となることが示されました。
Samsung の参入とパートナー展開(2026 年 4 月)
Samsung が Aluminium OS と Android 17 ベースの One UI 9 を搭載した Galaxy Book の開発を進めていることが明らかになりました。
ローエンド・ミッドレンジ・フラッグシップの 3 グレードが計画されており、それぞれが Aluminium OS の新しいデバイスカテゴリ(AL Entry / AL Mass Premium / AL Premium)に対応する可能性があります。
Galaxy AI 機能と強化された DeX も搭載される見込みで、Samsung の Android スマートフォンやタブレットとの連携強化が期待されます。
また、Android 17 のコード内からノート PC 向けの「Pixel Glow」アニメーションが改めて確認されており、Aluminium OS との関連が示唆されています。
ChromeOS の今後と既存ユーザーへの影響
Aluminium OS が登場しても ChromeOS がすぐになくなるわけではなく、Google は Chromebook に対して「リリースから最大 10 年間の自動更新ポリシー」を約束しており、Aluminium OS への移行後もこの期間はサポートが継続されます。
ChromeOS は教育・企業向けの OS として独自のポジションを維持することが明言されており、管理機能やセキュリティモデルは引き続き提供される方針です。たとえば、日本では GIGA スクール構想により ChromeOS は約 6 割のシェアがあることから、こうした教育市場での普及状況も背景にあるとみられます。
一般消費者向けには Aluminium OS、教育・法人向けには ChromeOS という棲み分けの可能性が示唆されていますが、実際にどのような関係になるのか、具体的な線引きや移行のタイムラインはまだ明確になっていません。
まとめ
現時点で分かっていることを整理すると、以下のとおりです。
- Aluminium OS は Android ベースで AI を中心に設計された次世代のノート PC 向け OS
- 2026 年後半のリリースを Google は目標としているが、一般提供の時期は未確定
- 対応フォームファクターは現行の ChromeOS デバイスと同様
- HP Elite Dragonfly Chromebook(Brya / Redrix)の実機で Android 16 ベースの動作が確認済み
- Samsung が Galaxy Book として参入を計画、Lenovo などの開発も進行中
- 開発の状況から Android 17 ベース(以降)となる可能性が高い
- 既存の Chromebook Plus(Brya ベース)が Aluminium OS のサポート対象となることが確認されている
- ChromeOS は教育・企業向けとして当面維持される方針が示されているが、Aluminium OS との関係性は不明
まもなく開催される Google I/O 2026 では Android 17 の詳細とともに、Aluminium OS に関する新たな発表が行われる可能性があります。
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