今回の記事では、MediaTek の Kompanio Ultra を世界で初めて搭載した Chromebook Plus となる「Lenovo Chromebook Plus 14 Gen 10(日本では Lenovo Chromebook Plus Gen 10)」の実機レビューをお届けします。
このモデルは、MediaTek が 2025 年 4 月初めに Chromebook Plus 向けの高性能チップとして発表した「Kompanio Ultra 910」だけでなく、OLED ディスプレイや Dolby Atmos 対応スピーカー、独自の AI 機能などを Chromebook Plus として初めて搭載しています。
2025 年 6 月後半にグローバルで発表、7 月には日本でも投入が発表されており、その高性能さ、長時間駆動、軽さから「2025年最高のChromebook」になると言われています。さらに、Chromebook Plus ならではの AI 機能と独自の AI 機能も搭載されており、その点も大きな魅力です。
Lenovo Chromebook Plus Gen 10 のスペック
まずは今回購入した「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」のスペックです。
ディスプレイ | 14 インチ OLED 1,920 × 1,200 最大輝度 400nits 100% DCI-P3 タッチスクリーン |
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CPU | Kompanio Ultra 910 |
RAM | 16GB LPDDR5X |
内部ストレージ | 256GB UFS 4.0 |
外部ストレージ | なし |
Web カメラ | 5MP (プライバシーシャッター) |
ポート | USB-C (5Gbps) ×2 USB-A (5Gbps) ×1 3.5mm コンボジャック |
バッテリー | 最大 17 時間 65W 急速充電 |
ネットワーク | Wi-Fi 7 Bluetooth 5.4 |
その他 | Dolby Atmos 対応スピーカー 指紋センサ |
サイズ | 314.4 × 219.1 × 15.8mm |
重さ | 1.25kg |
このモデルには、12GB RAM / 128GB UFS 3.1 ストレージモデルと、16GB RAM / 256GB UFS 4.0 ストレージモデルが用意され、それぞれタッチ対応、タッチ非対応が用意されています。
また、タッチ非対応モデルは 1.17kg と軽量なことに対し、タッチ対応モデルはやや重たい 1.25kg(それでも 14 インチモデルの Chromebook Plus としては軽量)となっています。
今回、筆者が購入したモデルは最上位となる 16GB RAM / 256GB ストレージのタッチ対応モデルです。

なお、今回レビューする機種は海外での発表直後に Bestbuy (BigAppleBuddy 経由) で購入し、なぜか遅延に遅延が重なり、本来の入手日から 1 週間以上経過して届きました。そのときにはすでに日本での発売も発表されていました。
Kompanio Ultra 910 について
先に補足として、Kompanio Ultra 910 について簡単に説明しておきます。
このチップセットは冒頭でもお伝えしたように、今年 4 月に MediaTek がプレミアム Chromebook 向けのハイエンドチップとして発表し、3nm プロセスで製造され、性能と消費電力のバランスに優れ、第 8 世代 NPU を搭載することで 50 TOPS の AI 処理能力を備えています。
CPU のコアは以下のような 8 コア構成となっています。
- Arm Cortex-X925 @3.63GHz ×1
- Arm Cortex-X4 @2.80GHz ×3
- Arm Corex-A720 @2.10GHz ×4
X4 と A720 の最大クロック周波数は抑えられていますが、この構成はハイエンドスマートフォン向けの Dimensity 9400 と同じく、オールビッグコアアーキテクチャを採用しています。
これにより、Intel Core Ultra 5 プロセッサと比較して、ベンチマークではシングルコアが最大 18% 向上、マルチコアは 40% 向上し、さらに消費電力は半分になるとされています。
デザインと外観
「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」のデザインは至ってシンプルで、”Luna Grey (日本ではシーシェル)”と呼ばれるシルバー系の色合いを採用しています。

天板やサイドフレームなどは金属製となっており、底面は樹脂素材ですが、かの Google Pixelbook Go のような特徴的なデザインを採用しています。

なお、このモデルはファンレスとなっているため、静音性に優れており、膝の上やスタンドの上に置いても給排気口を塞ぐといったことはありません。一方で、高負荷時の発熱は少し気になるかもしれません。
今回の実機の重さは約 1.25kg ですが、このサイズとバッテリー、性能でこの重量はかなり軽量と言えます。一方、非タッチモデルはさらに軽い約 1.17kg となるため、タッチが必須でなければ非タッチがおすすめですが、国内で一般購入できるモデルはタッチ対応モデルのみとなります。
天板部分は、最近の Lenovo のノートパソコンのデザインを踏襲し、Web カメラ部分がややせり出しており、ここに指を引っ掛けて天板を開きやすくしています。

ただし、タッチ対応モデルは天板側が重たいせいか、片手で開くことができません。非タッチモデルであれば片手で開くことができるかもしれませんが、その場合こそ、Pixelbook Go の再来と言えます。
なお、天板はフラットまでは開きませんが、160度くらいのかなりの角度まで開くことができるため、膝上で作業をしたり、ノートパソコンスタンドにおいて作業をするときにも角度調整が楽です。

ちなみに、この天板と底面のデザインはコンバーチブルタイプの「Lenovo Chromebook Plus 2-in-1」でも採用されているため、クラムシェルタイプの本機とは兄弟機のようになります。
ポート
本体の側面には USB-C ポートが 2 つ、USB-A ポートが 1 つ、3.5mm オーディオジャックがあります。嬉しいことに USB-C ポートが左右 1 つずつになっており、モニターや周辺機器の位置調整がしやすくなっています。
また、USB-A ポートも 1 つあるため、FIDO セキュリティキー(Yubikey など)や USB ヘッドセットを使うときに困りません。


一方で、最近搭載する機種が増えていた HDMI ポートがないため、USB-C モニターを利用していない人やプレゼンなどで HDMI のプロジェクターなどを使う人にとっては少し不便になりました。
個人的には USB-C が 2 つと USB-A が 1 つあれば問題ありませんが、仕事で使うとなると HDMI はあっても良かったかと思います。また、USB-A がもう一つあれば周辺機器の対応がより柔軟になります。
なお、ポートについては後述する 4K モニターへの出力の問題もあるため、4K モニターで「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」を利用しようと考えている方は注意してください。
キーボードとタッチパッド
今回、米国の Bestbuy で購入しているため、キーボードの配列は日本語ではなく英語配列となっています。

配列は比較的シンプルで、素直な英語配列です。新しいモデルのため、「クイックインサートキー」と「G ロゴのランチャーキー」が搭載されています。また、ファンクションキー(マルチメディアキー)の配置が Lenovo らしく機能ごとにまとまっています。
キーボードはキーストロークがやや浅めで、反発がやや強めに感じますが、指に負担が来るような圧力ではないため、文字入力はしやすいです。また、キートップが指にフィットするように少し凹んでいるため、タイピングは非常にしやすいと感じました。

バックライトキーボードも搭載されており、キーボードに特段の不満はありません。ただ、視覚的なものなのかキーのサイズが他のモデルよりも少し小さく感じる(キーとキーの隙間が大きめに感じる)ため、慣れるまではミスタイプがあるかもしれません。
タッチパッドについては、14 インチの Chromebook としてはスタンダードなサイズ(120 × 75mm)で、滑りや反応もスムーズで特に大きな問題はないと思います。ここについては、HP Elite Dragonfly Chromebook のような感圧タッチパッドに慣れてしまっていると物足りないかもしれません。
なお、「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」には全モデルで指紋センサが搭載されています。
スピーカー
また、スピーカーには Chromebook で初めて Dolby Atmos に対応しました。キーボードの左右にスピーカーが上向きに配置されているため、Chromebook のなかでも音と大きさは良い方だと感じました。
動画を見たり音楽を流すには十分ですが、どちらかといえばオンライン会議中のスピーカーという使い方も悪くないと思います。
ディスプレイ
ディスプレイは 14 インチで初の OLED パネルを採用しており、アスペクト比は 16:10 です。このアスペクト比は縦に広く使えるため、Web ブラウジングやドキュメント作成作業が快適に行えます。

ネイティブ解像度は 1,920×1,200 ですが、ChromeOS の設定ではそれを超える 2057×1286 での表示も可能です。ネイティブに比べて少しぼやけてしまいますが、一時的に領域を広げたいときや、ぼやけても気にならなければ便利に使うことができます。

画面の明るさも最大 400nits あるため、直射日光下などの状況でなければほとんどの場面で、画面が見づらいといったことにはならないと思います。OLED パネルを採用しており、色味も良く視野角も広いため、クリエイティブな作業でも対応できるレベルに仕上がっています。
また、環境光センサーが搭載されており、周囲の明るさに応じてディスプレイの色味を自動で調整する機能も備わっています。タッチスクリーン対応については、個人的には必須ではありませんでしたが、タッチ対応モデルでありながら軽量な点は評価できます。
一方、ディスプレイはグレア液晶となっているため、屋外や明かりの下、窓際などでは反射がやや目立つかもしれません。


また、ビジネスで使うときには左右から良く見えてしまうので、社外などで機密性の高い作業をするときには注意が必要です。そういう場合には、後付けのプライバシーフィルター(覗き見防止フィルム)を貼ることをおすすめします。
パフォーマンスと実際の使用感
パフォーマンスについてですが、「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」に搭載されている Kompanio Ultra 910 は、公称に偽りなく非常にハイパフォーマンスです。
以下は実機で測定している各種ベンチマークスコアです。
ベンチマークソフト | スコア |
---|---|
Geekbench (Single) | 2,293 |
Geekbench (Multi) | 7,228 |
Geekbench (GPU Valkan) | 18,167 |
PCMARK | 18,483 |
Octane 2.0 Plus (Single) | 90,428 |
Octane 2.0 Plus (Multi) | 483,097 |
JetStream2 | 279 |
Speedometer (2.0) | 455 |
Speedometer (3.1) | 25 |
これまでに測定した Chromebook の上位勢とベンチマーク (Geekbench と Octane 2.0 Plus) を比較してみます。


Geekbench と Octane 2.0 Plus の両方で、筆者が愛用する Intel Core i7-1265U や Core i5-1240P を搭載した Chromebook よりもシングルコアは上のスコアを記録しました。マルチコアは Core i5-1240P には届きませんでしたが、i7-1265U を引き離しています。
また、公式の引き合いに出されていた Intel Core Ultra 5 115U と比較しても、スコアは上回っていました。いずれにしても、Chromebook としてこのレベルであれば文句無しのハイエンドです。
実際の環境では、Gmail と Google チャット、X Pro、Inoreader、Telegram、Slack、Gemini を常時起動した状態でタブを 15〜20 枚程度開いて作業をしていても、動作は非常に軽快で快適でした。
一方で、Lenovo Chromebook Plus Gen 10 はファンレスモデルのため、高負荷な状態が長時間続くと、サーマルスロットリングが発生してパフォーマンスが落ちることがあることに注意してください。
ただし、筆者が実際にこれに気付いたのはベンチマークを回しているときぐらいで、4K モニターに出力してタブを 20 枚程度開き、Google Meet でオンライン会議をしている状態でも同様の現象には遭遇しませんでした。おそらく、ほとんどのユーザーでここまで使い切るケースは稀かと思います。
AI 機能
ちなみに、Lenovo Chromebook Plus Gen 10 には ChromeOS 組み込みの AI 機能だけでなく、独自の AI 機能として「ギャラリーアプリ」から背景の削除やステッカーの作成など、高度な画像編集ツールを使うことができます。

また、開いているタブやドキュメントを、タスクに基づいてグループ化することを提案する「スマートグルーピング」については、記事執筆時点では筆者の環境だと利用できませんでした。
今回は詳しく触れませんが、Chromebook Plus ではウェブ版 Gemini だけでなく ChromeOS 組み込みの AI 機能を使うことができ、Kompanio Ultra はその中でも高い性能を生かした独自の機能を使うこともできます。
バッテリー駆動時間は驚異的
パフォーマンスの高さだけではなく、「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」で衝撃的だったのは、そのバッテリー駆動時間の長さです。
高負荷な状態でも 6 時間近く持ち、常時開くタブを最小限(Gmail、チャット、NordVPN、Gemini)にして、タブを 10〜15 枚程度開く作業では、8〜10 時間近く持ちます。

実際に出張やカフェの作業で計測しましたが、タブを 15 個前後開いた状態で NordVPN (Android アプリ) を有効にし、画面の明るさは 40% 程度、Bluetooth と Wi-Fi を有効(接続済み)にした状態で 4 時間使用した段階でバッテリー残量は 70% 前後を維持していました。
この結果からも 5 時間以上の連続使用は余裕であり、使い方次第では 10 時間以上も期待できるため、半日〜終日の外出や充電できない状態での作業もほぼ問題はありません。
もちろん、使用状況により大きな差が出てきますが、少なくとも過去のハイエンド Chromebook のなかでも、バッテリー駆動時間は最も長く、かつパフォーマンスも維持しています。
4K モニター使用時は注意
ここで問題点として挙げておきたいのは、「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」を 4K モニターを使用するときです。
筆者の作業環境において USB-C ポートから 4K モニターに映像出力しようと思ったとき、片側のポートではモニターに接続した周辺機器は認識されるが映像出力ができず、もう一方のポートは映像出力はできても色味が不正確で不安定(時々切断されたり、画面の読み込みが行われる)でした。

使用しているモニターは 4K 120Hz で Thunderbolt 4 を備えた「Dell U3225QE」で、もしかしたら Thunderbolt 4 や 120Hz などがネックになっている可能性もありましたが、TB4 非対応の Acer Chromebook 516 GE などでは問題は起きませんでした。
そのため、モニターやケーブルの問題ではなく、Lenovo Chromebook Plus Gen 10 のポートの仕様か、Kompanio Ultra の制限である可能性が高いと思われます。この点については少し残念でしたが、新しいチップを搭載したモデルではよくある(とくに Arm)ので、仕方ありません。
今回の件も含め、これまでの経験上では Chromebook で外部モニターを使用するときには、4K よりも FHD や WQHD を 1〜2 枚、またはウルトラワイドモニターを使うほうが安全です。
あるいは、こういった周辺機器との相性や安定性を考慮すると、比較的新しいモデルのなかでは Intel Core Ultra を搭載した ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus も悪くはありません(法人であればこちらも一考の価値があります)。
価格
日本における「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」は、2025 年 7 月 25 日から発売予定となっています。
価格については、Lenovo 公式サイトでは 12GB RAM / 128GB ストレージを搭載したベースモデルが 115,280 円で販売されます。筆者がレビューしている最上位構成(タッチ対応、16GB RAM、256GB ストレージ)は、Amazon において 124,740 円でとなっています。
また、国内モデルは安心して利用できる国内サポートが受けられるほか、期間限定で非常にお得なキャンペーンも実施されます。
- キャンペーン期間: 2025 年 7 月 1 日から 2025 年 8 月 31 日まで
- 対象: 期間中に取扱い店舗の店頭にて本商品を予約または購入した方
- 特典内容: 「アクシデント・ダメージ・プロテクション(3年間)」をプレゼント
- 注意点: このキャンペーンは、レノボ・オンラインショッピングおよび量販店のオンラインショップでの購入は対象外となります
落下や水濡れなどの万が一の事故による故障にも対応できる保証が 3 年間付いてくるのは、非常に大きなメリットです。購入を検討されている方は、ぜひこの期間中に店頭での購入をおすすめします。
おそらく、量販店であればポイント還元などを駆使することで実質価格はさらに手頃になると思われます。性能・バッテリー駆動時間・軽さという点から見ても、このデバイスが 12 万円前後で購入できるなら非常にお買い得です。
さらに 2026 年 1 月 31 日までの期間は、Google AI Pro プラン(旧 Google One AI プレミアムプラン)が 12 ヶ月無料になる特典があるため、実質 34,800 円相当がお得になります。
まとめ
「Lenovo Chromebook Plus Gen 10 (Lenovo Chromebook Plus 14 Gen 10)」は、非常に高いパフォーマンスと驚異的なバッテリー駆動時間を見事に両立させた、まさに「2025 年最高の Chromebook」と呼ぶにふさわしい一台です。
ファンレス設計でありながら、Core i7-1265U や Core i5-1240P といったハイエンド CPU を上回るほどの性能を持ち 、実際の作業でも複数のアプリや多くのタブを開いた状態で快適に動作します。
それでいて、使い方次第では 10 時間以上も期待できるバッテリー駆動時間を実現している点は他にはない強みです。ある意味、「Chromebook」の「MacBook Air」のような存在です。
一方で、ファンレスであるため高負荷状態が長時間続く場合のパフォーマンス低下や、筆者の環境で遭遇した 4K モニターへの映像出力が不安定になる問題などに注意が必要です。
新しい Kompanio Ultra チップの特性である可能性があり、今後のアップデートでの改善が期待されますが、現時点では 4K モニターの利用を前提としているユーザーは注意が必要です。また、HDMI ポートが搭載されていない点も、利用シーンによってはデメリットとなる可能性があります。
とはいえ、これらの点を差し引いても「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」の魅力は圧倒的で、外出先でも長時間作業することが多く、パフォーマンスとバッテリー駆動時間の両方を一切妥協したくないユーザーにとって、これ以上の選択肢はないと言っても過言ではありません。
筆者としては間違いなくおすすめですので、ぜひこの機会に「Lenovo Chromebook Plus Gen 10」の購入を検討してみてはいかがでしょうか。
