この 1 年間、ChromeOS の開発で特に注目を集めているのが、MediaTek の高性能プロセッサ 「Kompanio Ultra (MT8196)」 を搭載する Chromebook です。
このプロセッサは 「Rauru」 という共通のベースボードを基に開発が進められており、パワフルかつ電力効率に優れた ARM 搭載 Chromebook の新しい時代を切り開くものとして期待されています。
この 「Rauru」 から派生したデバイスとして、主に 「Navi」 と 「Hylia」 という2つのコードネームが追跡されてきました。
これまでの「Navi」と「Hylia」の開発状況
これまでの調査により、「Navi」 は Lenovo 製のプレミアムなクラムシェルタイプの Chromebook になる可能性が高いとみられています。スペックとしては、14インチの 1,920×1,200 OLED ディスプレイ (16:10)、Wi-Fi 7、指紋センサーなどを備えたフラッグシップモデルとなることが予想されています。
一方で、もう一方の 「Hylia」 に関しては、これまで具体的な情報が少なく、「Navi」 と同様にクラムシェルタイプのデバイスとして開発されていると考えられてきました。しかし、今回新たな情報により、クラムシェルではなくコンバーチブルになる可能性が示唆されました。
「Hylia」はコンバーチブルモデルか
この情報は Chrome Unboxed が Chromium Gerrit に最近投稿されたコミットから確認しているもので、「Hylia」 がコンバーチブル型の Chromebook として開発されている可能性が高いことが分かりました。

コミット内で明確に 「tablet mode (タブレットモード)」 について言及されていることが、この推測の根拠です。ここでは「タブレットモードに移行したときに、もしキーボード上に電源ボタンがあるならそれを無効化する」と書かれています。
現時点では、このデバイスがタブレットかコンバーチブルモデルかは確定ではないものの、着脱式キーボード(デタッチャブル)に関する記述や、タブレット開発で見られる特有のキーボードコードネームは見つかっていないことなどから、コンバーチブルモデルになる可能性が高いと考えられます。
もしかして、Acer のモデル?
今回の「Hylia」に関連するコードを少し掘り下げてみたところ、この「Hylia」のオーディオ品質の改善を目的としたコミットのなかで、「DTS チューニングファイルをロードする」といった記述が見つかりました。

「DTS (Digital Theater System)」は、一般的にはサラウンドサウンド技術で知られていますが、この文脈では、おそらく特定のオーディオハードウェア(コーデックやDSP)の音響特性を最適化するためのチューニングデータや設定を指していると考えられます。
DTS Audio 技術は、現在 Chromebook において Acer の多くのモデルで積極的に採用されているオーディオ技術です。他の主要な Chromebook メーカーでは、DTS の採用は Acer ほど一般的ではありません。そのため、まだ確実ではないものの今回の「Hylia」は Acer が手掛けている可能性が高いと推測されます。
14 インチコンバーチブルで Acer のハイエンド Chromebook となれば、Acer Chromebook Plus Spin 714 として登場する可能性もあります。実際、Acer Chromebook Plus 714 Enterprise(クラムシェルの 2025 年モデル)は 5 月に予告されていますが、Spin 714 の 2025 年モデルはまだ予告されていません。
まとめ
「Hylia」がコンバーチブルモデルとして開発中である可能性が濃厚となったことで、MediaTek Kompanio Ultra 搭載デバイスは、少なくともクラムシェルとコンバーチブルの 2 種類が登場することになりそうです。
現状ではどちらのデバイスに関しても情報は不足していますが、現状では「Navi」が Lenovo、「Hylia」は Acer からリリースされる可能性が高く、どちらも 14 インチ前後のデバイスとなることが予想されます。
これらのデバイスがいつリリースされるかもまだわかりませんが、今年 5 月に開催された COMPUTEX TAIPEI で MediaTek ブースに Kompanio Ultra を搭載したデモ機が置かれていたことから、正式リリースもそう遠くないことが期待されます。
出典: Chrome Unboxed