Google は 2025 年の終わりに合わせて、教育分野の取り組みを振り返る公式ブログ「2025 Year in Review」を公開しました。
Google の公式まとめでは、AI が授業準備や指導支援において、もはや単なる実験的な技術ではなく「現実的かつ実用的なツール」として定着し始めた 1 年であったと総括されています。
本記事では、この Year in Review の内容をもとに、Google が2025年の教育分野で特に重要だと捉えたポイントを整理します。
Gemini for Education の拡大と教育現場での成果
Google の報告によると、2025年は Gemini for Education の導入が劇的に進んだ年となりました。米国の高等教育機関だけでも 1,000 校以上、1,000 万人以上の学生が利用する規模に達しています。
導入の効果も具体的な数値として表れています。
- 北アイルランド: 教育者が週に最大 10 時間の作業時間を削減
- メキシコ: 週末を丸ごと費やしていた作業がわずか 20 分で完了
Google はこうした事例を「AI が教育現場に実際の成果をもたらしている証拠」と位置づけています。また、アジアやオーストラリアでも活用が広がり、授業準備や学習支援の一部が Gemini に置き換わり始めています。
AI ツールの活用トレンド:NotebookLM・Gemini・Gem
2025 年、教育コミュニティでは特に以下のAI活用法が定着しました。
- 深い理解を促す「ガイド付き学習」: 単純に回答を得るのではなく、手順を追って学習を進めるアプローチが主流となっています。
- Gemini Canvas と NotebookLM による教材生成: Google が「学習のための新しい基盤」と呼ぶ NotebookLM は、研究支援や情報の整理ツールとして普及しました。
- Gemini Canvas: 練習問題や学習ガイドを自動生成
- NotebookLM: 資料間の関連を可視化する「マインドマップ」や、試験対策向けのフラッシュカード作成に活用
- コンテンツ制作とキャリア支援: AI は学生の学びだけでなく、将来のキャリア準備にも活用されています。
- 動画・音声解説: 動画形式の教材や、文章からの音声解説を半自動で作成
- キャリア支援: 履歴書のフィードバックや、AIによる証明写真(ヘッドショット)作成など、就職活動の実務的なサポートにも利用
Classroom と LMS の統合が進む
Gemini in Classroom は、18 歳以上の Google Workspace for Education ユーザーに無償提供され、授業案作成や教材拡張に活用されています。
また、NotebookLM や Gem が、Google Classroom だけでなく Canvas や Schoology といった外部の LMS(学習管理システム)に直接共有可能になり、プラットフォームの垣根を超えた AI 活用が容易になりました。
ChromeOS と Chromebook Plus の進化
2025 年に投入された Chromebook および ChromeOS のアップデートも、教育現場の変化を支えています。
Class tools:管理対象 Chromebook の操作が容易に
ChromeOS 138 で正式導入されたこの機能により、教師は管理対象の Chromebook に対して以下の操作が容易になりました。
- 生徒の画面へ教材やリンクを共有
- 作業状況の確認
- 探索 / 集中 / ロックモードの切り替え
Chromebook Plus の AI 機能
Lenovo Chromebook Plus Gen 10(MediaTek Kompanio Ultra NPU 搭載)などの一部新機種では、以下のオンデバイス AI 機能が強化されています。
- クイックインサート: 主にオンデバイスの画像生成
- テキストキャプチャ(かこって検索): 画面の情報を抽出し、アクションを提案
既存設備の活用:Chromebox OPS と ChromeOS Flex
- Chromebox OPS: 教育用ディスプレイ(電子黒板)に接続して ChromeOS 化できるデバイス。「既存のハードウェアを最大限活用できる手段」として紹介
- ChromeOS Flex: 古いPCを安全に再利用できる OS として、ゼロタッチ登録やリモート展開に対応し、普及が進んでいる
データ活用とAIリテラシーの向上
「AI 時代の LMS 基盤」として、Classroom analytics が強化されました。
生徒の学習進捗の可視化や、学習基準に基づいたタグ付け機能が試験導入され、データに基づく指導改善が進んでいます。また、リテラシー支援ツール「Read Along」も、生徒のレベルに合わせたストーリー生成機能などが追加されました。
2025 年は、AI を安全に使うための教育も前進しました。
- 100 万人以上の教育者・学生が AI トレーニングを受講
- 10 万人以上が Gemini Certification を取得
- 中学生向けに「AI Quests」(Google Research と Stanford の共同開発)などのゲームベース教材が登場
まとめ
Google の Year in Review を振り返ると、Chromebook と ChromeOS は「AI を活用した授業基盤」としての役割を強め、Classroom はデータと AI 支援の中枢へと進化しています。
特に NotebookLM のようなツールが学習の中心になりつつある現状は、AI が単なる補助機能から「学習体験の核」へと移行していることを示唆しています。
日本ではすでに Chromebook が教育市場の 6 割を占め、Google Workspace を活用する学校も多く、AI を前提とした学習環境が広がる素地は十分にあります。学校内の ICT 活用が高度化していくなかで、AI と Chromebook の組み合わせが今後さらに定着していくことが期待されます。
また、2025 年に見られた Google の取り組みは、教育だけにとどまらず、企業や行政機関における業務効率化とも通じる部分があります。
NotebookLM や Gemini、ChromeOS の AI 機能は、文書整理や情報要約、ナレッジ共有といったビジネスの基本作業にも適用可能です。
Google Workspace と Gemini を使いこなす学生が社会に出ることで、ビジネスの現場でもこれらのツールを前提とした環境づくりが求められる場面が増えていく可能性があります。
出典: Google Blog


