今回の記事では、VAIO が昨年リリースした軽量かつハイスペックモバイルノート PC の「VAIO SX14-R (VJS4R18)」の実機レビューをお届けします。
なお、本レビューにあたっては実機の貸出を受けていますが、内容についてメーカーからの関与はなく、実際に使用したうえでの率直な感想をまとめています。また、今回はスケジュールの都合で数日間の超短期レビューとなっていますので、その点はご了承ください。
VAIO SX14-R は、2024 年 10 月 31 日に「VAIOのモバイルPCラインアップの最上位に位置づけられる新モデル」として発表されました。
新設計のカーボンファイバープレート採用により1kgを切る軽量(構成による)と堅牢ボディを実現し、CPU / RAM / ストレージの構成だけでなく、ディスプレイやバッテリー容量、モバイルネットワーク対応の有無などカスタマイズの自由度があることも特長です。
VAIO SX14-R の実機スペック
今回のレビューでは、次のような構成の実機を使用しています。
OS | Windows 11 Pro |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 2,560 × 1,600 グレア タッチスクリーン |
CPU | Core Ultra 7 155H |
RAM | 64GB |
内部ストレージ | 512GB NVMe PCIe Gen 4 |
外部ストレージ | – |
Web カメラ | 9.2MP プライバシーシャッター |
ポート | USB-C Thunderbolt 4 ×2 USB-A (3.0, 5Gbps) ×2 HDMI ×1 Ethernet (1Gbps) ×1 3.5mm jack ヘッドセット対応 |
ネットワーク | 5G / 4G-LTE サポート Wi-Fi 7 Bluetooth 5.4 eSIM 対応 |
バッテリー | 大容量バッテリー * 動画再生時 ː 最大16時間 * アイドル時 : 最大38時間 |
セキュリティ | 指紋センサ(電源ボタン) 顔認証 |
その他 | MIL-STD 810 準拠 AI 機能サポート Dolby Atmos スピーカー かな無刻印キーボード |
サイズ | 312.0 × 226.4 × 13.9〜18.9mm |
重さ(実測) | 約 1,237g |
この構成は SX14-R シリーズの中でも最上位にあたるもので、ビジネス用途はもちろん、複数のタスクを並行して行うようなヘビーユースにも十分対応できる仕様となっています。
なお、構成次第ですが、同シリーズの最軽量モデルは 約 999g からと軽量なことも大きな特長です。
そのほかに選べる構成としては、プロセッサに Core Ultra 5 125H、メモリは 16GB または 32GB、ストレージは 256GB / 1TB / 2TB の選択肢が用意されています。
ディスプレイも、今回のような高解像度タッチ対応モデルだけでなく、1,920×1,200 の非タッチ・アンチグレアパネルを選ぶことも可能です。
また、モバイルネットワークについても、非搭載・4G のみ対応・5G / 4G-LTE 対応モデルから選べるほか、バッテリー容量やキーボード配列(日本語 / 日本語 かな無刻印 / 英語)、専用ケースやのぞき見防止フィルターなどの周辺機器もカスタマイズ可能です。
デザイン
今回レビューしている実機は、VAIO設立10周年を記念した「勝色特別仕様」です。深く濃い藍色の筐体で、落ち着いた雰囲気と高級感を備えており、ビジネスシーンでも個性を主張しすぎない仕上がりです。

天板と底面には熱可塑性カーボンファイバープレートが採用されており、堅牢性と軽さを両立しています。指紋や皮脂が全く付かないというわけではありませんが、素材と色の特性か光の加減によって目立ちにくくなっており、実際の使用中に気になる場面は少ない印象です。
今回の実機は、大容量バッテリーやタッチ対応の高解像度ディスプレイを搭載している影響で、最軽量モデルよりもやや重く、実測では約 1,278g です。
ただし、ポートの多さや外観の重厚感から受ける印象に比べて、実際に持ったときは想像以上に軽く感じました。
天板側のエッジは斜めにカットされた特長的なデザインで、見た目にもアクセントがあります。ヒンジ側は底面パネルが少し内側に配置されていて、指をかけやすく、片手でも本体を持ち上げやすくなっています。


ヒンジ部分はエルゴリフト構造を採用しており、開くとディスプレイがわずかに持ち上がってキーボードに傾斜がつくことで、タイピング時の姿勢が自然になり、作業がしやすくなります。

天板は最大 180 度までフラットに開く仕様で、角度の調整がしやすく、打ち合わせなどで画面を共有する際にも便利です。
キーボード
「勝色特別仕様」の VAIO SX14-R のキーボードは日本語配列ながら、かな刻印がないデザインが採用されており、見た目にもすっきりとしています。オプションで通常のかな刻印ありや英語配列も選べるほか、SX14-R の他モデルでもオプションとしてかな無刻印が選択可能です。

キートップの刻印は控えめで、デザイン的には好印象ですが、光の加減によってはやや視認性が低く感じる場面もあります。一方、バックライトが搭載されており、暗い場所ではキートップを透かして光る仕様のため、夜間でも視認性はしっかり確保されています。
なお、バックライトのオン / オフや明るさ設定はキーボードショートカットでは操作できず、「VAIO の設定」アプリから行う必要があります。頻繁に切り替えるユーザーにとってはやや手間に感じるかもしれませんが、常時オンで使用する分には特に不便はありません(その分バッテリー消費への影響はあります)。
カーソルキーは逆 T 字型で、周囲にわずかなスペースが確保されているため、ブラインドでも押し間違いにくい設計です。キー自体はやや小さめではあるものの、個人的には許容範囲で、十分実用的な印象です。


電源ボタンはキーボードのレイアウトとは独立した位置に配置されており、よくある Backspace や Delete のすぐそばではないため、誤って押してしまう心配がありません。この電源ボタンには指紋センサが内蔵されており、Windows Hello の顔認証と併用することで、セキュリティ面でも安心して使える構成になっています。
キーのサイズやキーピッチもしっかりと確保されていて、打鍵時に窮屈さを感じることはありません。特にエンターキーと Backspace キーの幅とサイズが確保され、最下段のスペースキーまわりは左側のキーも削られることなくレイアウトされており、タイピング時のストレスが少ない印象です。

打鍵感はやや軽めで、ストロークには適度な深さがあり、長時間のタイピングでも疲れにくい仕上がりです。キートップにはわずかな湾曲があり、指に自然とフィットする感触も良い点です。
普段は英語配列を使うことが多いのですが、この日本語配列はかなり使いやすく、久々に「これならアリ」と感じました。ただし、日本語配列特有の最下段キーの詰まり具合にはやはり慣れづらく、そこだけは個人的に気になるポイントです。
タッチパッド
タッチパッドは押し込みや感圧式ではなく、タップでクリック操作するタイプですが、独立した左右クリックボタンも用意されています。

最近は一体型タッチパッドが主流なので久々に触りますが、ボタンの静音性が高く、クリックの反応も軽快なので、会議中や静かな場所でも気兼ねなく使えます。
タッチパッドの表面はほどよい滑り心地で、カーソル操作やジェスチャーもスムーズ。精度も高く、操作中にストレスを感じる場面はありませんでした。
一点気になったのは、タッチパッドの位置がわずかに左寄りになっている点です。慣れれば気にならない程度ではありますが、最初は何となく違和感がありました。
ポート
VAIO SX14-R は薄型・軽量なモバイルノートでありながら、ポート構成が非常に充実しています。
左側面には USB-C (Thunderbolt 4)、USB-A (USB 3.0 / 5Gbps)、右側面には USB-C (Thunderbolt 4)、USB-A (USB 3.0 / 5Gbps)、HDMI、有線 LAN (Ethernet) 、3.5mm オーディオジャックが搭載されています。


Thunderbolt 4 に対応していることで、充電や映像出力、高速なデータ転送が可能になっており、A ポートとあわせてさまざまな周辺機器に接続できます。また、HDMI ポートがあるため、モニターや会議室などでのプロジェクター接続もスムーズに行えます。さらに Ethernet ポートも用意されているため、社内ネットワークへの有線接続や、通信の安定性を重視するユーザーにも適しています。
ディスプレイ
今回の実機は、14インチ 2,560×1,600 解像度のグレア液晶を搭載しており、タッチ操作にも対応しています。解像度は高く、作業領域も広いため、複数ウィンドウを並べての作業やドキュメント編集、ブラウジングでも快適に使うことができます。

以下は実機で150%、125%、100%の倍率でスプレッドシートの表示領域を確認できるように撮影したスクリーンショットです。
14インチサイズで 100% 表示(2,560×1,600 ネイティブ)だと小さすぎるかもしれませんが、125% や 150% 表示は十分実用的です。
なお、画面は鮮明で発色も良好ですが、グレア(光沢)パネルのため、使用環境によっては映り込みが気になることもあります。

特に明るいカフェや窓際では、角度の調整が必要になる場面があるかもしれません。
また、今回レビューしているモデルはタッチ対応で、スクロールや拡大・縮小といった操作を指で直感的に行えるため、外出先などで軽く操作したい場面では便利です。精度や反応も良く、使っていてストレスを感じることはありませんでした。
ただし、実際の作業中にタッチ操作を使う場面はあまり多くなく、ユーザーによっては非タッチモデルでも十分だと感じるかもしれません(コストも若干抑えられます)。
パフォーマンス
今回レビューしている VAIO SX14-R は、Intel Core Ultra 7 155H に 64GB RAM、512GB SSD を搭載したハイエンド構成です。一般的なビジネス用途はもちろん、タブを大量に開いたブラウザ作業やドキュメント編集、軽めの画像編集などでも一切のもたつきは感じられず、非常に快適に動作しました。
試しに Chrome でタブを 20〜30 枚開いた状態で作業しても動作は安定しており、アプリ間の切り替えやマルチタスク時の反応も快適です。メモリが 64GB あることで、かなり動作に余裕があるという印象でした。
ファンの音については、Web ブラウジングなどの軽い作業でもたまに回ることがありますが、耳障りに感じるほどではありません。バランスモードを使用していても、排熱はしっかりと行われており、本体が熱を持ちすぎることもなく安心して使えます。
なお、左側面に排気口があるため、左利きでマウスを使う方は排気の風がやや気になるかもしれませんが、右利きのユーザーであれば大きな問題にはならないと思います(筆者は左利きベースで右も使える)。また、膝の上に置いて使っても給排気口を塞ぐことはなく、底面が熱くなりすぎることもありません。
ベンチマーク
なお、バッテリー駆動・電源設定はバランスモードに設定した状態で、以下のベンチマークを測定しています。ノートパソコンとしては十分に高いスコアで、体感どおりの快適さを示していると思います。
ベンチマークソフト | スコア |
---|---|
Geekbench Single | 1,603 |
Geekbench Multi | 9,596 |
Geekbench OpenCL | 28,560 |
Geekbench Vulkan | 26,074 |
PCMARK | 4,472 |
Octane 2.0 Plus Single | 62,376 |
Octane 2.0 Plus Multi | 805,901 |
JetStream2 | 219 |
Speedometer 2 | 229 |
Speedometer 3 | 16 |
ただし、電源接続時には Geekbench のスコアがシングルコアで 2,245、マルチコアで 12,179 を獲得したため、バッテリー駆動時と電源接続時のパフォーマンスの差は残されています。
バッテリー
SX14-R のパフォーマンスについてはノートPCのなかでも高性能なクラスですが、バッテリー駆動時間についてもかなり優秀です。

今回の実機は大容量バッテリーを搭載しており、電源設定をバランスモード、画面の明るさを約 40% に設定した状態で、Chrome ブラウザ中心の作業(Google ドキュメントやスプレッドシート、Looker Studio、軽い画像編集など)を行ったところ、おおよそ 8〜10 時間程度の駆動が可能でした。
負荷の高い作業や、タブを多数開いた状態が続くと 7〜8 時間を下回る場面もありますが、それでもこのスペックのノートとしては十分優秀なバッテリー持ちです。
高解像度なディスプレイ、十分な性能、本体の軽さをあわせて考えると、モバイルノートとしての使い勝手は非常に高いと感じました。
なお、今回レビューしているモデルは 5G をサポートしており、nanoSIM または eSIM を活用してモバイルネットワークに接続することができます。フリー Wi-Fi を探したり、接続やセキュリティの懸念がなくなるため、移動や出張の多いユーザーは 4G または 5G 対応オプションを選ぶことをオススメします。
Web カメラと会議機能
VAIO SX14-R に搭載されている Web カメラの画質が良く、Windows 11 の標準機能である「スタジオエフェクト」にも対応しています。背景ぼかしや自動フレーミング、明るさ補正といった機能も使えるため、ビジネスシーンのオンライン会議でも十分に活用できます。
これらの処理は、Intel Core Ultra チップに搭載された NPU によって行われるため、CPU や GPU への負荷を抑えつつ、快適な会議環境を実現できる点も大きなメリットです。
さらに、VAIO 独自の「オンライン会議設定」アプリを使うことで、会議中の各種設定を一括管理することができます。

カメラやマイク、スピーカーの調整だけでなく、会議モードの選択(標準/プライベート/プライバシー/会議室)や、HDR 補正・逆光補正・プライバシーモードといった画質調整機能もワンクリックで操作可能です。
また、このアプリへのショートカットがファンクションキー(F13 の位置)に割り当てられているため、すぐにアクセスできて Windows スタジオエフェクトよりも便利です。
もう1つの機能では、「オンライン会議設定」の項目でも表示されていますが、SX14-R には、ユーザーの動きを検知して動作を制御する「AI ビジョンセンサー」機能も搭載されています。

たとえば、PC の前から離れると自動でロック・スリープに移行する「離席オートロック」や、着席を検知してスリープから復帰・顔認証によるログオンまでを自動で行う「着席オートログオン」といった、日常的に便利な機能を備えています。
また、在席中のロックを防ぐ「在席ノーロック」や、画面を見ていないことを検知して輝度を下げる「ノールック節電」、さらに、のぞき見を検知して画面を暗くしたりアラートを表示したりする「のぞき見アラート」など、プライバシーや省電力を意識した細かな機能も用意されています。
これらは「VAIO オンライン会議設定」アプリや「VAIO の設定」アプリから個別にオン・オフが可能で、必要に応じて簡単に設定することができます。
モバイルディスプレイ VAIO Vision+ 14 との組み合わせ
今回、VAIO SX14-R だけでなくモバイルディスプレイの VAIO Vision+ 14 も少し触ってみました。これは 14 インチ 1,920×1,200 解像度のポータブルモニターで、2つの USB-C ポートがあり、デバイスには USB-C 1本で接続することができます。


本体サイズは 312.0 × 211.1 × 3.9〜12.4mm、重さは約 325g と軽量です。背面にキックスタンドがついているため、手軽にノートPCの左右にモニターを置くことができますが、付属のカバースタンドを利用することでモニターをノートPCと上下の配置にすることができる点がユニークです。ただ、カバーを使って PC の上に VAIO Vision+ 14 を置くことができますが、最初はカバーの使い方がわかりづらいので、公式ヘルプを見ておくことをおすすめします。
カバーとセットにすると約 740g になりますが、SX14-R とと合わせても 2kg 未満で済むため、出張や出先でマルチディスプレイをしたいユーザーは合わせて購入するのもアリだと思います。
個人向けの価格は54,800円ですが、SX14 と同時購入で53,000円と少し割引されます。法人向けはオープン価格です。
価格と構成のバリエーション
VAIO SX14-R は、スペックやオプションを細かくカスタマイズできるモデルとなっており、構成によって価格は大きく変わります。
たとえば、エントリー構成では Core Ultra 5 125H / 16GB RAM / 256GB SSD / フルHD アンチグレアディスプレイといった内容で、256,800円から購入可能です。一方、今回レビューしたような Core Ultra 7 155H / 64GB RAM / 高解像度タッチディスプレイ / 大容量バッテリー / 5G 対応といった最上位構成では、438,800円となります。
カスタマイズできる項目としては、プロセッサ(Ultra 5 / Ultra 7)、メモリ(16GB / 32GB / 64GB)、ストレージ(256GB〜2TB)、ディスプレイ(WUXGA / WQXGA / タッチ対応有無)、バッテリー容量(標準/大容量)、モバイルネットワーク(なし / 4G / 5G 対応)などがあり、キーボード配列やカラー、周辺機器の同時注文も可能です。
また、直販ストアでは法人向けモデルも用意されており、業務用途に応じてより細かなカスタマイズやサポートを受けられる点も VAIO の特長です。
個人的には、デフォルトで「英語配列」を選べることが魅力的で、専用サイズのプライバシーフィルターも用意されているのも良いですね。余談ですが、実は 10 年ほど前に発売された VAIO Z (2015年モデル)でも英語配列を選べたこととマルチフリップが購入の決め手となり、当時使っていたことがあります。
まとめ
今回は超短期間のレビューでしたが、VAIO SX14-R を実際に使ってみて、軽量で堅牢なボディ、豊富なポート構成、使いやすいキーボード、そして高いパフォーマンスとバッテリー持ちなど、どれをとっても、ビジネスやモバイル用途で求められる要素がしっかり揃っており、完成度の高いモバイルノートだと感じました。
ただし、パフォーマンスを上げたり機能を追加したりすれば、価格も当然上がっていきます。詰め込むと上位構成では価格がかなり高価になる点は気になるところですが、それらを差し引いても全体としての完成度は非常に高く感じました。
価格は決して安くはありませんが、構成の自由度が高く、自分に合った1台をしっかり選べるのが SX14-R の魅力です。とくに VAIO のデザインが好きな方や、高性能な軽量モバイルノートを探している方には、十分に検討する価値のあるモデルだと思います。
VAIO SX14-R および VAIO Vision+ 14 の詳細については、公式サイトをご覧ください。