今回の記事では、GEEKOM の最新モデルとなる Ryzen 8000 シリーズを搭載したミニPCのうち、最上位となる Ryzen 8945HS を搭載した「GEEKOM A8」の実機レビューをお届けします。なお、レビューにあたり実機の提供を受けています。
これまで GEEKOM のミニPCは何度かレビューしていますが、今回紹介する「GEEKOM A8」はインテル第13世代 Core i9-13900H 並みの性能を持ち、さらに NPU として「Ryzen AI」を内蔵するハイエンドな Ryzen 搭載モデルです。ハイスペックでありながら、筐体のサイズも112.4×112.4×37mmとこれまでのモデル同じようにコンパクトで場所を取らず、VESAマウントによってディスプレイなどの背面に取り付けることができる点も魅力のデスクトップミニPCです。
デザイン
今回の実機「GEEKOM A8」は、以前レビューしている「GEEKOM A7」のアップグレード版とも言え、同じサイズと同じ筐体を採用しているためアルミニウムボディにシルバーカラーのスッキリとしたデザインが特長です。両サイドパネルや背面部も給排気口がしっかりと備わってます。
ポートは前面に USB-A (3.2) が2ポートあり、うち1つは PD 対応となっています。3.5mmヘッドセットジャックもあります。背面には USB-A (3.2 Gen 2) が1つ、USB-A (2.0) が1つ、そして USB-C が2つあり、1つは USB4 Gen 3 規格、もう一つは USB 3.2 Gen 2 規格となっています。
どちらも PD 対応で映像出力にも対応し、さらに2つの HDMI 2.0 ポートを備えるため最大4画面への出力に対応します。この他には Ethernet も搭載しており、有線接続による安定したインターネットが利用可能です。さらに左側面には SD カードスロットが搭載されているため、写真や動画の取り込みなどもハブなどを用意せずに行うことができます。
なお、底面から内部にアクセスすることができ、RAMとストレージをユーザーが交換することが可能ですが、本機はすでに 32GBRAM と 2TB ストレージが搭載されているため、あえて変更を試さずそのまま使用しています。
ちなみに付属品には VESA マウントキットが含まれているため、そのまま対応するモニター等に取り付けることができます。
ACアダプタは一般的なサイズですが本体と比較すると割と大きめです。また、ケーブルは太めのセパレートタイプなのでコンセント周りが混雑するかもしれません。ちなみにミッキータイプだったので変換コネクタが必要になる可能性も考慮する必要がります。
パフォーマンス
実際の「GEEKOM A8」のパフォーマンスと使用感についてですが、まずは今回レビューしているモデルのスペックを紹介します。
OS | Windows 11 Pro |
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CPU | Ryzen 9 8945HS (Ryzen 7 8845HS) |
GPU | AMD Radeon 780M |
RAM | 32GB DDR5 5600MHz ※最大64GB |
内部ストレージ | 2TB M.2 2280 PCIe 4.0 (1TB M.2 2280 PCIe 4.0) |
外部ストレージ | SD カード |
前面ポート | USB-A (3.2 Gen 2, PD) ×1 USB-A (3.2 Gen 2) ×1 3.5mm ヘッドホンジャック |
背面ポート | USB-C (USB4 40Gbps) ×1 USB-C (3.2 Gen 2, 10Gbps, PD) ×1 USB-A (3.2 Gen 2, 10Gbps) ×1 USB-A (2.0) ×1 HDMI 2.0 (4K/60Hz) ×2 2.5G Ethernet ×1 |
ネットワーク | Wi-Fi 6E (MediaTek MT7922) Bluetooth 5.2 |
サイズ | 112.4×112.4×37mm |
重さ | 450g |
今回のモデルは上位の Ryzen 9 8945HS と 32GBRAM、2TB ストレージを搭載したモデルです。それ以外には下位モデルとなる Ryzen 7 8845HS と 32GBRAM、1TB ストレージを搭載するモデルもあります。両者の違いはプロセッサとストレージだけで、それ以外の点で違いはありません。
また、今回搭載している Ryzen 8045 の2つは AI に最適化された NPU (Ryzen AI) を搭載しているため、対応している AI を活用したアプリやサービスでは安定かつ高速に処理することができます。当然、CPU (APU)の性能そのものも高いため、ほとんどの作業を不満なくスムーズに行うことができます。
ここで実機で測定した各種ベンチマークソフトウェアの結果を紹介します。
ベンチマークソフト | スコア |
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Geekbench Single | 2,627 |
Geekbench Multi | 13,537 |
Geekbench OpenCL | 31,545 |
Geekbench Vulkan | 35,132 |
PCMARK | 7,452 |
Passmark | 8,474 |
FF14 (高品質 デスクトップ 1920×1080) | 3,284 (設定変更を推奨) |
FF14 (高品質 ノートPC 1920×1080) | 3,358 (設定変更を推奨) |
FF14 (標準品質 デスクトップ 1920×1080) | 3,844 (設定変更を推奨) |
FF14 (標準品質 ノートPC 1920×1080) | 4,021 (普通) |
BlueProtocol (最高画質 1920×1080) | 4,735 (設定変更が必要) |
BlueProtocol (高画質 2560×1440) | 3,781 (動作困難) |
BlueProtocol (中画質 2560×1440) | 4,470 (設定変更が必要) |
BlueProtocol (低画質 2560×1440) | 7,996 (やや快適) |
BlueProtocol (高画質 1920×1080) | 6,080 (普通) |
BlueProtocol (中画質 1920×1080) | 7,009 (やや快適) |
BlueProtocol (低画質 1920×1080) | 12,097 (極めて快適) |
Octane v2 Plus Single | 92,190 |
Octane v2 Plus Multi | 787,187 |
JetStream2 | 340 |
Speedometer 3 | 24 |
CPU ベースとなる Geekbench や Octane、PCMARK、Passmark などは非常に高いスコアを残しています。このコンパクトさでこのスコアが出せれば、例えば Chrome などブラウザベースの作業やオフィスソフトや会計ソフトを利用した事務作業、コーディングといった内容であればほとんどの場合は不満なく快適に使うことができます。
一方、グラフィックスに関しても内蔵グラフィックスとしては高いスコアを残していますが、以前レビューしている別メーカーのデバイスで Ryzen 7 8845HS を搭載したミニPCに比べてわずかに低いスコアとなっています。どちらも同じ AMD Radeon 780M を搭載しているため、ほぼ同程度と思っていたものが少し予想外の結果となりました。
これに関しては、おそらく筐体のサイズが小さいことにより熱負荷がかかり、性能が十分に発揮できなかった可能性があります。Steam でレトロゲー(SO2R、FF4/5/6 PR)を1時間程度のゲームプレイではそこまで差があるようには感じず、実際にベンチマークの結果で数字としてみたときに差があることに気づいた程度です。ただ、 3D系のゲーム(SO6)のプレイでは場所によって少しカクつきが発生していたので、少し重たいゲームは影響が少なからずありそうです。
そのため、グラフィックス性能を重視するような作業をする場合には注意が必要となります。とは言え、あくまでミニPC&内蔵グラフィックスという範囲でできる作業であれば問題はなく、ブラウザや事務作業などはもちろん、Lightroom や Photoshop での写真・編集作業、フルHDクラスの動画編集であればほぼ影響はありませんでした。
負荷と排熱という点では、ベンチマークソフトやゲームのように常にグラフィックスに負荷がかかるようなことがない限りは非常に安定しています。ブラウザでタブを40個前後開いて作業をしていても50~60度で安定しており、ファンの音もほぼ聞こえずに静かです。
負荷がかかったときには大体70度くらいからしっかりと回るため、音はそれなりにありますが、大型のファンが搭載されているデスクトップほど煩いことはありません。コンパクトな筐体ですがしっかりと排熱をコントロールできているので、前述のグラフィックスへの継続的な負荷がない限りは安定かつ静かに動作します。
グラフィックスに長時間かつ大きな負荷をかけなければ、とても静かで性能も高くバランスの取れたミニPCです。特にブラウザベースやオフィスソフトの利用であれば不満なくスムーズに作業ができます。場所を取らずにどこでも設置することができ、移動や持ち運びも容易なので自宅やオフィスなどどこでも扱いやすい1台です。
ただ、ベンチマークの結果や実際に使った印象で言えば、ベースモデルで採用されている Ryzen 7 8845HS と大きな差があるわけではないため、ほとんどのユーザーはベースモデルでも十分かと思います。よりCPUに負荷をかける作業をする場合やできる限り性能が良いものを選んでおきたいのであれば、上位の Ryzen 9 8945HS モデルです。
まとめ
最後に価格についてですが、現在日本国内ではベースモデル(Ryzen 7 8845HS / 32GBRAM / 1TB)は99,800円、上位モデル(Ryzen 9 8945HS / 32GBRAM / 2TB) は129,800円で販売されています。
どちらもこの価格でこの性能であればコストパフォーマンス抜群で文句なしですが、ブラウザ作業や事務作業が中心であればベースモデルのほうがお得です。コーディングや写真・画像編集など負荷が高い作業を行い場合に、上位モデルを選ぶほうが安心だと思います。
いずれにしてもどちらもコストパフォーマンスに優れているので、できる限りコンパクトかつハイスペックなミニPCを求めているユーザーには「GEEKOM A8」はおすすめです。