ASUS Chromebook Plus CM34 Flip (CM3401) を実機レビュー。Ryzen 7000C シリーズ搭載モデル

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今回の記事では、ASUSが昨年10月に海外市場で初の Chromebook Plus デバイスとして発表し、日本市場でも正式発表された「ASUS Chromebook Plus CM34 Flip (CM3401)」の実機レビューをお届けします。なお、レビューにあたり実機の貸出を受けています。

また、今回は兄弟機に当たるクラムシェルタイプの ASUS Chromebook Plus CX34 CX3402 の実機レビューも行っていますので、興味のある方はそちらの記事もご覧ください。

CX3402 と同じような説明になりますが、Chromebook Plus とはこれまで曖昧だった Chromebook の性能による差を明確にするため、Google が新たにハードウェア要件を定義し、一定のスペック以上を持つ Chromebook が名乗れる名称のことです。

今回レビューしている ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 もその要件を満たし、性能が通常の Chromebook よりも高いことから学校やビジネスでも快適に使うことができることが1つの特長となります。

目次

スペック

新しいハードウェア要件である Chromebook Plus と名乗るためには、以下のような要件を満たしている必要があります。

  • インテル 第12世代 Core i3 以降 または AMD Ryzen 5000 シリーズ以降
  • 8GBRAM以上 および 128GBストレージ以上
  • 1080p Webカメラ および ノイズ低減機能
  • IPS パネル以上 および フルHD 解像度以上のディスプレイ

ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 はこれらの要件をクリアしており、CPUは兄弟機 CX34 CX3402 と違って AMD Ryzen 3 または Ryzen 5 の7000シリーズを搭載しています。

ディスプレイ14インチ 広視野角
1920×1200
300nits
タッチスクリーン
コンバーチブル
CPURyzen 3 7320C
Ryzen 5 7520C
RAM8GB
内部ストレージ128GB SSD
外部ストレージmicroSD
カメラ1080p Webカメラ
プライバシーシャッター
ネットワークWi-Fi 6
Bluetooth
ポートUSB-C ×2
USB-A ×1
HDMI ×1
3.5mm Audio
バッテリー最大13時間
その他バックライトキーボード
Harman Kardon 認定
MIL−STD 810H
ASUS独自抗菌機能
サイズ319.6×235.3×20.7mm
重さ約1.85kg
自動更新ポリシー2033年6月

Chromebook Plus CM34 Flip CM3402 は16:10のアスペクト比を採用した14インチ 1920×1200 ディスプレイ、Ryzen 7000C シリーズ、8GBRAM、128GB SSDを搭載したハイスペックモデルです。コンバーチブル(フリップ)タイプで、本体収納式スタイラスペンを備えていることも特長の一つとなっています。

ちなみに今回のレビューでは、Ryzen 3 と Ryzen 5 の両方のモデルを試しています。

ベンチマーク

ここで実機で測定したベンチマークスコアを先に紹介します。まずは ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 の Ryzen 3 7320C および Ryzen 5 7520C のそれぞれで測定した各ベンチマークの結果です。比較として Ryzen 3 3500C モデルの結果も載せています。

Ryzen 3 7320C
8GBRAM
Ryzen 5 7520C
8GBRAM
Ryzen 3 3500C
8GBRAM
Geekbench Single1,1881,211999
Geekbench Multi3,6793,8842,718
Geekbench GPU5,4845,5449,843
PCMARK12,97713,29811,615
CrXPRT2170179143
Octane v254,86358,77643,147
Jetstream2185194143
Speedometer160173124
電源接続ありの状態
Ryzen 3 7320C
8GBRAM
Ryzen 5 7520C
8GBRAM
Ryzen 3 3500C
8GBRAM
Geekbench Single1,1451,137634
Geekbench Multi3,1883,3321,818
Geekbench GPU5,1075,1313,056
PCMARK11,92212,213
CrXPRT2147155105
Octane v253,16055,26127,796
Jetstream217918797
Speedometer16116778
バッテリー駆動時

ここで注目したいのは、過去モデル(他メーカー)で Ryzen を搭載している機種は電源駆動時とバッテリー駆動時で明確な性能の差が発生するという問題がありました。しかし、今回のベンチマークスコアから新しい Ryzen モデルでは電源、バッテリーの間で大きな差は見られず、Ryzen モデルを選ぶときにネックだった問題が解消していることです。

この他の CPU と比較したベンチマークは次のとおりです。以下のスコアはすべて Chromebook の実機で測定したものとなっています(電源とバッテリーにほぼ差がないので、電源接続時のスコアを使用)。

Ryzen 3 7320C と Ryzen 5 7520C のどちらもインテル第10世代 Core i5-10210Uを超えるスコアとなっており、数年前の Ryzen 3 3000C シリーズから確実に進化していることがわかります。

一方、兄弟機 CX34 に搭載されるインテル第12世代 Core i3-1215U と比べてしまうと下回る結果になりますが、Chromebook の場合は第10世代 Core i5 の性能の時点でほとんどが快適に動作するため、それを超えている Ryzen 7000C シリーズは十分な性能に達しています。

使用感

続いて ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 の実際の使用感を、いくつかのポイントに分けてまとめていきます。ちなみに筆者はこれまでに多数の Chromebook をレビューしており、Google Workspace を含めて7年以上の個人・業務利用経験があります。

デザイン

Chromebook Plus CM34 Flip CM3402 の本体はユニークなジンクカラーを採用し、MIL-STD 810H に準拠した堅牢性を備えており、全体的にかなりしっかりとした作りになっています。兄弟機の Chromebook Plus CX34 CX3402 よりも高級感があります。

一方、堅牢性でしっかりとした作りである影響か、重さが約1.85kgと14インチモデルとしては重たいことがネックです。両手で持ってもずっしりとした重さを感じるため、せめて1.5kg以下に落とせていればといった印象を持ちました。

本体側面には、左側に USB-C ポートが1つ、HDMIポートが1つ、 microSD カードスロットがあり、本体収納式 USI スタイラスペンのスロットもあります。右側面にはUSB-Cポート、USB-Aポートがあり、電源ボタンと音量ボタンもここにあります。

兄弟機と違い USB-A ポートが1つ少なく、microSDカードスロットが搭載されています。どちらが良いかはユーザーによりますが、筆者は A ポートでも良かったと思います。

CM34 Flip CM3402 はコンバーチブルタイプとなっていますが、エルゴリフトを採用しているため天板を90度以上に開いていくとキーボード側がやや持ち上がっていきます。180度以降もそのまま開いてタブレットライクに使うこともできます。

スタイラスペンを使って筆記するときにはタブレットのようにしたり、動画やゲームプレイ時にはテントモードにするといった使い方ができます。ただ、14インチサイズで重さが1.86kgあるため、片手でタブレットとして使うには中々辛いです。

スタイラスペン

Chromebook Plus CM34 Flip CM3402 には本体収納式 USI スタイラスペンがあり、コンバーチブルタイプであることが兄弟機 CX34 CX3402 との違いの1つになります。

ペンは充電式となっていますが、CM14 Flip などに採用されていたプッシュ式ではなく最初から爪を引っ掛けるようにして引き抜くタイプのペンです。やや固めなので抜くときには注意してください。また、向きが決まっているため収納時にも注意が必要です。

USI ペンは4,096段階の筆圧検知に対応しており、これに対応する Web アプリや Android アプリであれば CM34 Flip CM3402 の性能を相まってペンを活用することができます。しかし、Web アプリだと通信環境や仕組みの問題でラグが発生したり、思い通りに使うことができないことが多いため、Android アプリをメインで使うことをおすすめします。

とはいえ、純粋なタブレットデバイスとは違うため、簡単なメモやノート、イラストなどで使うことがちょうどよく、あくまでも Android アプリのようにペンを使うことができるノートパソコンと考えておくほうが無難です。筆者の場合、最近は PDF への注釈書き込みやサインで使うことくらいですが、これらで特に問題を感じたことはありません。

ちなみに USI 規格は2.0と1.0の両方のペンに対応していました。

ディスプレイ

ディスプレイはスペックの部分でも少し触れたように、アスペクト比 16:10 を採用した14インチで、縦の表示領域が一般的なノートパソコンに採用される 16:9 のモデルより広いことがポイントになります。

グレア液晶なのでやや反射が気になるものの、直接明かりが当たる環境でなければ問題はありません。本体のサイズと重さなどを含めて考えると、持ち運ぶよりも屋内で据え置きをメインに使い、Chromebook の本体ディスプレイのみを使う時間の長いユーザーに向いた機種だと思います。

キーボード & タッチパッド

キーボードはお馴染み ASUS の ChromeOS 日本語配列となっていて、バックスペースが詰まっていますが他のキーはほぼフルサイズとなっています。

打鍵感はもう一つの CX34 CX3402 と同じくしっとりとした感じで、反発も強すぎず長時間の文字入力でもしやすいです。エルゴリフトで若干の傾斜がついている点も良いですね。タッチパッドもスムーズで反応も悪くありません。CX3402 と比べると縦幅がやや狭くなっていますが、実用上そこまで気にはなりませんでした(130×65mm)。なお、このモデルにはバックライトキーボードが搭載されています。

性能・パフォーマンス

ASUS Chromebook CM34 Flip CM3401 の全体的な使用感としては、第一に電源接続時とバッテリー駆動時における性能の大きな差が発生しなくなったので、どちらの場合でもストレスなく使うことができるようになっています。筆者の通常業務とブログ関連で使用していましたが、Looker Studio やスプレッドシートでのグラフ描画、Web会議とスライド操作、Pixlr や Web版 Adobe Photoshop、Android 版 Lightroom などでも安定していました。

ベンチマークでは CX34 CX3402 に搭載されている インテル Core i3-1215U には負けていますが、実用上では違いはとくに感じず、ブラウザベースの作業はもちろん Photoshop Web 版の AI 機能、Google Meet の背景ぼかし/仮想背景を利用した状態で様々な作業をしても快適に使うことができます。

Web 版 Photoshop の 生成 AI

なお、ASUS Chromebook Plus CM34 CM3401 も Chromebook Plus デバイスなので、Google フォトのぼかし機能や消しゴムマジックを利用したり、一部の専用機能(Meetのショートカット設定など)、将来的には ChromeOS に組み込まれる AI 機能などを利用することができます。

Ryzen 3 と Ryzen 5 の両方を使った印象では、わずかに Ryzen 5 のほうがスムーズ(前述のタブを大量に開いたときなど)な動作感でしたが、使い込んでいって気づくレベルなのでそこまで顕著な違いはないと思います。一方、バッテリー駆動時間は Ryzen 5 は Ryzen 3 よりも短くなっていました。

筆者の使い方では、Ryzen 3 モデルは1時間あたり約10〜15%のバッテリー消費でしたが、Ryzen 5 は約15〜20%とやや多くなりました。どちらも基本的にはアプリや拡張機能を含めて同じ設定(同期機能を利用)にしています。

このことから Ryzen 3 モデルは6〜7時間、Ryzen 5 は5〜6時間ほどのバッテリー駆動時間が期待できるため、バッテリー駆動時間をより長くしたい場合には Ryzen 3 モデル、バッテリーよりも性能を重視したい場合には Ryzen 5 モデルを検討することをお勧めします。ちなみに兄弟機の CX34 CX3402 は筆者の使い方で5時間持つか持たないかといったところでした。

もちろん開くタブの数や使うアプリ・サービスによっても異なりますが、少なくとも Ryzen モデルは5時間以上のバッテリー駆動を期待しても良いと思います。

惜しい点

性能とバッテリー駆動の点では Ryzen モデルはなかなか良いと思いますが、以下のような点がやはり気になりました。

  • 指紋センサが欲しい
  • キーの配置
  • 本体が重い

指紋センサに関しては兄弟機 CX34 CX3402 もなく、過去に国内でリリースされたハイスペックモデルも指紋センサがあるものないもの入り乱れているので、あれば便利だったという程度です。キーボードについても前述のとおりです。

そして3つ目は、14インチで1.86kgは普段から持ち歩くには重いという点です。バッテリー駆動時間の長さやコンバーチブルタイプで本体収納式USIペンつきなことが魅力の1台ですが、電車や徒歩通勤で1.86kgを毎回持っていくのはなかなか大変ですし、取り回しづらいのでもう少し軽ければ尚良かったと感じます。

とは言え、持ち運びの頻度が低い、移動は車などを使う、据え置きで使うといった場合であれば重さはそこまで気にする必要はありません。部屋の移動や少し外に出るときなど短い時間の持ち運びであればそこまで負担ではないですし、バッテリー駆動時間も長く、MILスペックだから多少の衝撃があっても安心して使うことができる点はメリットです。

これはユーザーの使い方に依りますが、画面解像度が16:10ということも踏まえて据え置きで Chromebook のディスプレイで作業する時間が長く、たまにペンを使った作業が発生し、たまに部屋の移動などでバッテリー駆動時間が長いほうが安心で、性能はできる限り良いものが欲しいといった場合には ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 はおすすめです。

価格

最後に価格について、ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 は Ryzen 3 と Ryzen 5 モデルがありますが、両者の違いは搭載するCPU(APU)だけで、その他の点は共通しています。

価格(税込)
Ryzen 3 7320C モデル79,800円
Ryzen 5 7520C モデル104,800円

Ryzen 3 7320C 搭載モデルは79,800円、Ryzen 5 7520C 搭載モデルは104,800円となっていて、どちらも昨年までの同等性能の Chromebook と比べて手の届きやすい価格設定になっています。とくに Ryzen 3 7320C はインテル第10世代 Core i5-10210U を超える性能を持ち、当時の Core i5 クラスのモデルは8万円を超えるケースが多かったため、昨今の為替レートを考えればコストパフォーマンスは悪くありません。

一方、Ryzen 5 モデルも手頃な価格設定ですが、ベンチマークスコアや実際に触った印象ではブラウザベースの作業がメインだとそこまで大きな差は感じなかったため、2.5万円を追加して出すかどうかは非常に悩ましく思います。正直に言えば、筆者としては Ryzen 3 モデルで十分だと思うのでこちらをおすすめします。

ちなみに Ryzen 3 7320C モデルの79,800円は Core i3-1215U を搭載する兄弟機 ASUS Chromebook Plus CX34 CX3402 と同じ価格設定です。両者の違いを簡単にまとめると次のようになります。

CM34 Flip CM3401CX34 CX3402
コンバーチブルクラムシェル
ペン付きペン非対応
16:10 ディスプレイ
グレア
16:9 ディスプレイ
ノングレア
バッテリー駆動時間が長いより高性能
1.85kg1.45kg

そのためコンバーチブルでペンが必要かどうか、16:10のディスプレイが必要かどうか、バッテリー駆動時間が長いほうが良いかが CM34 Flip CM3402 の選択の基準になります。

なお、ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 も個人向けと法人向けの展開があり、個人向けは Ryzen 3 または Ryzen 5 を、法人向けは Ryzen 3 モデルを選択することができます。個人は ASUS Store 等で購入することができますが、法人向けは ASUS 公式サイトの専用相談窓口からお問い合わせください。

まとめ

Ryzen 7000C シリーズを搭載する ASUS Chromebook Plus CM34 Flip CM3401 は元々の性能の高さに加えてこれまでの Ryzen モデルとは異なり性能の減衰がなくなっていること、バッテリー駆動時間がインテル Core i3-1215U を搭載する CX34 CX3402 に比べて長めなこと、ディスプレイに16:10のアスペクト比を採用し、本体収納式スタイラスペンを備えていることがメリットとなります。

やや重たいことはネックですが、据え置きで使うことが多い場合には性能と価格のバランスも良く、これまでのハイスペックモデルに比べても手頃なため、 ASUS Chromebook CM34 Flip CM3401 はおすすめできる1台です。

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なお、YouTubeでもレビュー動画をアップしました。

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著者情報

Masahide Omuraのアバター Masahide Omura Product Marketing Manager

Professional ChromeOS Administrator 取得者。これまでに40台以上の Chromebook を試し、業務でも Chromebook や Google Workspace の導入・活用支援も行う。本業はアクセス解析や広告運用、ときにPMM。プロフィールはこちら

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