Google は 2025 年 7 月 15 日(米国時間)、ChromeOS 138 の安定版 (Stable) に関する企業および教育機関向けのリリースノートを公開しました。
このリリースノートには、現行バージョンでの変更点や今後のアップデートで実装される新機能、ポリシー変更に関する情報が含まれています。管理者の方は、内容を確認し、今後の展開に備えることが推奨されます。
ChromeOS 138 の主な変更点
今回のアップデートでは、教育現場での活用を想定した新しい管理ツール「Class Tools」や、生成 AI を活用した壁紙作成機能、デバイス間で作業環境を同期する新機能などが追加されています。また、管理者が無効化できるシステムアプリの範囲が大幅に拡張されました。
Class Tools
Class Tools は、Chromebook 向けに開発されたプレミアムな教育・学習ツールです。 このツールは、教師がリアルタイムで生徒の学習状況を管理し、生徒の学習体験を向上させることを目的としています。
主な機能は以下の通りです。
- 生徒の Chromebook に Web サイトのコンテンツを送信し、画面をロックする
- 生徒の画面に字幕やリアルタイム翻訳を表示する
- 生徒の画面を表示・共有する

この機能を利用するには、組織が Google Workspace for Education Plus または Teaching and Learning アドオンライセンスを契約している必要があります。
ChromeOS フリーフォーム壁紙
ChromeOS 138 から、テキストプロンプトを入力することで独自の壁紙を生成できるフリーフォーム壁紙機能が導入されました。 ユーザーはテキストフィールドに好きな言葉を入力して壁紙を生成できるほか、「Inspire me (ひらめき)」 機能を使ってランダムなプロンプトから壁紙を作成することもできます。
ChromeOS 125 から導入されている従来の「AI を使用して作成」で作成できる壁紙は、決められたテーマに沿って、単語を 2 つ入れ替えてのみ使うことができました。今回は、自由にプロンプトを決められる点が大きな違いです。
ただし、この機能は Chromebook Plus デバイス限定で利用可能です。 管理者は GenAlWallpaperSettings
ポリシーを使用してこの機能を制御できます。

ChromeOS の「文書読解サポート」の「簡略化」
こちらも ChromeOS 138 から導入される AI を活用した新機能で、既存の「文書読解サポート」の「要約」に加えて、長く複雑な文章や専門用語を含むテキストを要約し、分かりやすくする「簡略化」機能です。
これは、テキストを選択して右クリックし、「簡略化」 を選ぶだけで、要約された内容が表示されます。なお、ChromeOS 137 の時点でも表示されていますが、機能を使うことはできません。
この機能も Chromebook Plus デバイス限定で、管理者は HelpMeReadSettings
ポリシーで制御できます。

ChromeOS デスク同期
デスク同期機能は、ユーザーがデバイスを切り替えた際に、以前の作業環境を素早く復元する機能です。 この機能により、前回のセッションで開いていたすべてのウィンドウ、タブ、さらには Cookie まで復元され、シームレスな作業の移行が可能になります。
既存の「おかえりなさい」機能は、同じデバイスである必要がありましたが、別のデバイスでも復元できるようになれば、複数のデバイスを使い分けるユーザーにとって非常に便利な機能となります。

Disabled system features ポリシーの拡張
管理者が特定のシステム機能を無効化できるDisabled system features
ポリシーが大幅に拡張されました。 ChromeOS 138 では、以下のアプリケーションが新たに追加され、管理者は組織のニーズやセキュリティ要件に応じて、より詳細なデバイス設定が可能になります。
- ウェブストア
- Canvas
- Explore
- ギャラリー
- ターミナル
- 印刷ジョブ
- キーショートカット
- YouTube
- Google マップ
- Gmail
- Google ドキュメント
- Google スライド
- Google スプレッドシート
- Google ドライブ
- Google キープ
- Google カレンダー
- Google チャット
ユーザー補助(アクセシビリティ)のアップデート
ChromeOS 138 では、ユーザー補助機能の利便性向上のため、いくつかの問題が修正されました。
- 見出しレベルの修正: 「壁紙とスタイル」 ページの見出しレベルが正しくなり、スクリーンリーダーでのナビゲーションが改善されました。
- ギャラリーアプリの改善: ChromeVox が Google フォトの画像リストの日付情報を正確に読み上げるようになりました。 また、画像のサイズ変更時に 「px」 単位を読み上げるようになり、より明確になりました。
- OOBE (初期設定画面) の改善: OOBE 中の冗長な読み上げや、フォーカスが意図せず移動する問題が修正されました。
今後の変更点
ChromeOS 138 以降、Chrome アプリのサポートに関して以下の変更が予定されています。
- ChromeOS 138 から: キオスクセッションで管理者がインストールした Chrome アプリがデフォルトで無効になります。 引き続き使用する場合は、
KioskChromeAppsForceAllowed
ポリシーで再有効化する必要があります - ChromeOS 139 (2025年8月19日リリース予定) から: ユーザーが自身でインストールした Chrome アプリが動作しなくなります。 管理者が強制インストールしたアプリは引き続きサポートされます
- Native Client (NaCl) の非推奨化: ChromeOS 138 が、管理環境で Native Client (NaCl) をサポートする最後のリリースとなります。 LTS (長期サポート) チャンネルのデバイスでは、2026年4月までサポートが継続されます
- EAP/TLS サーバー証明書の検証: 2025 年 10 月 1 日以降、EAP/TLS ネットワーク設定におけるサーバー証明書の検証方法が変更されます。 これにより、2022年1月以前に設定されたネットワーク環境の一部で接続に問題が発生する可能性があります。管理者は、認証サーバーの証明書を新しいものに更新するか、Google 管理コンソールでサーバー証明書機関の設定を 「システムのデフォルト」 に変更することで対応できます
まとめ
今回の ChromeOS 138 アップデートでは、特に教育現場での活用を想定した「Class Tools」が大きな目玉となります。また、Chromebook Plus 向けに生成 AI 機能の拡充も予定されています。
管理者にとっても、無効化できるシステム機能が拡張されるなど、より柔軟なデバイス管理が実現します。今後の Chrome アプリのサポート終了など、重要な変更も予定されているため、管理者の方は引き続き情報を確認することをお勧めします。
なお、Chrome 138 の管理者向けリリースノートはすでに公開されており、変更内容は こちらの記事 で紹介しています。