Google は 2026 年 7 月 15 日付けで、Chrome 151 に関する企業および教育機関の管理者向けのリリースノートを公開しました。
今回のアップデートでは、PDF への直接のテキスト注釈機能の追加や、Gemini in Chrome の機能拡張と提供地域の拡大、個人用 Windows デバイスでのエンタープライズポリシー適用の改善などが行われます。
また、Chrome Enterprise Core や Premium においても、生成 AI サイトの利用レポートや、DLP における Microsoft Information Protection(MIP)ラベルの統合など、管理とセキュリティを強化する変更が含まれています。
この記事では、管理者向けにリリースノートの主な内容を解説します。
Chrome ブラウザの主な変更内容
Chrome 151 では、生産性やセキュリティに関する以下のアップデートが含まれています。
macOS 12 のサポート終了
Chrome 151 以降は macOS 12 をサポートしなくなります。macOS 12 を実行している Mac では、Chrome は引き続き動作しますが、今後のアップデートは提供されません。Chrome 151 以降の新規インストールには macOS 13 以上が必要になります。
ブックマークバーの自動非表示
新しいタブページの操作性を向上させるため、定期的に使用されていない場合にブックマークバーを自動的に非表示にする機能が導入されました。
管理者は BookmarkBarEnabled ポリシーを必須に設定することで、この自動非表示を防ぐことが可能です。対象は Windows、macOS、Linux、ChromeOS です。
Gemini 使用時の保護強化機能
Chrome 内で Gemini を使用する際、セーフブラウジングの保護が拡張されます。
アクティブなページに対してリアルタイムの判定をトリガーすることで、新しく作成された悪意のあるサイトから保護します。このアップデートによる新しいポリシーの追加はありません。
個人用 Windows デバイスでのエンタープライズログインの改善
これまで、個人用の Windows デバイスで職場や学校のアカウントでログインすると、誤ってエンタープライズ管理対象として分類される問題がありました。
Chrome 151 では、エンタープライズ管理対象デバイスを厳密に要求するポリシーにおいて追加のチェックが行われます。さらに Chrome 154 以降では、個人用デバイスがアカウントのログインのみに基づいて管理対象として扱われないようになります。
エンタープライズ管理対象デバイスを厳密に要求するポリシー(HomepageLocation など)がこれらの個人用マシンで機能しなくなるため、管理者は注意が必要です。
Gemini in Chrome の機能拡張
Gemini in Chrome が英国およびさらに 14 の国と地域で利用可能になりました。
また、ユーザーがファイルをアップロードして内容について質問できる機能や、Google ドキュメント、スプレッドシート、PDF などのファイルを直接生成できる機能が追加されています。
URL フィルタリングの更新
セキュリティとプライバシーを強化するため、URLBlocklist ポリシーがシークレットモードでも厳密に適用されるようになります。
また、URLAllowlist でワイルドカード(*)を使用した場合の処理が改善され、ステータスチェックやレポートツールでの正確性が向上します。
サードパーティ検索エンジン向けの AI チャットボタン
デフォルトの検索エンジンに関わらず AI を活用した回答を得られるよう、サポートされているサードパーティの検索エンジン向けに AI チャットボタンがアドレスバー(オムニボックス)に表示されるようになります。
管理者は ThirdPartyAiChatSettings ポリシーを使用してこの機能を管理できます。
PDF テキスト注釈
Windows、macOS、Linux、ChromeOS において、PDF ドキュメント内に直接テキスト注釈を追加および編集できるようになりました。ユーザーはテキストボックスを配置し、フォントサイズや色を変更して、注釈が埋め込まれた最終ドキュメントを保存できます。
プロファイル作成フローのデザイン更新
デスクトップ版の macOS および Linux において、プロファイル作成時のオンボーディング画面が視覚的に更新されました。
また、Windows では初回起動時のプロファイル作成フローにアニメーションや音声などのメディア効果が追加され、フローの最後に Google レンズやパスワードマネージャーなどの機能が紹介されます。
XSLT を使用しないシナリオでの Rust による XML 解析
ブラウザのセキュリティを向上させるため、DOMParser Web API や SVG 画像などの XSLT を必要としないシナリオにおいて、XML 解析エンジンがメモリセーフな Rust の実装に変更されます。
モバイルデバイスの新しい自動入力とパスワード画面
Android(Chrome 150 から)および iOS(Chrome 151)において、統合された「自動入力とパスワード」画面が導入されます。
データは「身分証明書」や「旅行」などのカテゴリに整理され、保存されているデータを包括的に把握できるようになります。
Chrome Enterprise Core の主な変更内容
以下は Chrome 151 における Chrome Enterprise Core の変更内容です。
生成 AI と SaaS アプリの利用状況レポート
Google 管理コンソールに新しいレポート機能が導入され、組織内での生成 AI ツールや SaaS サイトの利用状況を監視できるようになりました。訪問数、一意の管理対象プロファイル、機密コンテンツの転送イベントなどの指標が提供されます。
Chrome Enterprise Premium の主な変更内容
以下は Chrome 151 における Chrome Enterprise Premium の変更内容です。
Chrome ウェブストアのカテゴリを使用した拡張機能のブロック
管理者は、Chrome ウェブストアの特定のカテゴリ(「ゲーム」など)に基づいて、拡張機能を自動的にブロックできるようになります。この設定は管理コンソールの新しい「拡張機能の詳細ブロック」セクションで利用できます。
DLP 向けの MIP ラベル統合
Microsoft Information Protection(MIP)の機密ラベルに基づいて、データ損失防止(DLP)ポリシーを適用できるようになりました。管理コンソールから Azure テナントとの接続を承認することで、コピー&ペーストやダウンロードのブロックなどのルールをラベル単位で設定できます。
ChromeOS 上の仮想ファイルに対する DLP サポート
Microsoft OneDrive などの拡張機能ベースのファイルシステムプロバイダーを介した仮想フォルダ内のファイルに対しても、ユーザー主導のアップロードやドラッグ&ドロップ時の DLP スキャンがサポートされるようになります。
今後の変更点
リリースノートでは、今後の Chrome バージョンで予定されている以下のアップデートについても言及されています。これらは計画中のものであり、変更される可能性があります。
- XSLT の非推奨化と削除: 脆弱性リスク軽減のため、クライアントサイドの XSLT のサポートを段階的に廃止します(Chrome 158 で通常の動作を停止、Chrome 176 で完全に無効化)。
- Manifest V2 拡張機能の削除計画: 2026 年 8 月 31 日に、Chrome ウェブストアから残りの Manifest V2 拡張機能をすべて削除し、更新や再インストールができなくなります。
- デフォルトで安全な接続を使用: パブリックサイトへのアクセス時に HTTPS 接続をデフォルトで要求する機能が Chrome 154 で全ユーザー向けに有効化されます。
- 2 週間ごとのリリースサイクル: 開発速度向上のため、2026 年 9 月(Chrome 153)より安定版のリリースサイクルが現在の 4 週間から 2 週間に短縮されます。
- CPU Performance API: Web アプリケーションがデバイスの CPU パフォーマンスを判断できる API が Chrome 152 で導入されます。
- file:// 以外の URL ホストでのスペース禁止: 仕様準拠のため、URL ホスト名からのスペース文字の許容を Chrome 157 で排除します。
- Isolated Web Apps(IWA)の追加対応: 企業管理下の Windows において IWA のサポートが Chrome 161 で追加されます。
- ローカルネットワークアクセス制限: 公開 Web サイトからユーザーのローカルネットワークへのリクエスト制限のポリシーの移行と、関連する一時的オプトアウトポリシーの削除が Chrome 156 で行われます。
- PWA のナビゲーションキャプチャ: ChromeOS でインストール済みの PWA が関連リンクをデフォルトでキャプチャするようになります(Chrome 152)。
- macOS での PWA の通知帰属: PWA の通知が Chrome ではなく、その PWA 自体にネイティブに帰属するようになります(Chrome 152)。
- Service Worker の最適化ポリシー削除: Chrome 154 で ServiceWorkerAutoPreloadEnabled ポリシーが削除されます。
- PDF ビューアのアウトオブプロセス iframe のポリシー削除: 以前のアーキテクチャに戻すためのポリシーが Chrome 155 で完全に削除されます。
- Chrome ブラウザ CUP のポスト量子暗号: コンポーネントと拡張機能の更新において、ポスト量子暗号(PQC)へ移行します(Chrome 155)。
- WebRTC での DTLS 向けポスト量子暗号のポリシー削除: Chrome 159 で一時的なオプトアウトポリシーが削除されます。
- Windows でのプロセス隔離: アクセスコントロールリスト(ACL)を適用し、メモリ空間への不正アクセスを防ぎます(Chrome 152)。
- Digital Credential API のプロトコルフィルタリング: 未指定のプロトコルのサポートを非推奨化し、Chrome 160 で最終削除します。
- Service Worker のバックグラウンドフェッチ制限のポリシー非推奨化: Chrome 152 で RestrictBackgroundFetchFromServiceWorkerEnabled ポリシーが非推奨になります。
- Sub apps API: 単一の IWA インストール下に複数のアプリを作成できる機能に関連する新しいエンタープライズポリシーが追加されます(Chrome 153)。
- IWA の Unframed 表示モード: ChromeOS の IWA 向けに、ウィンドウの境界線をなくす表示モードが展開されます(Chrome 152)。
- Window Shape API: ChromeOS の IWA 向けに、カスタマイズされたウィンドウ形状を適用できる API が展開されます(Chrome 152)。
- プライバシーサンドボックス関連 API の非推奨化と削除: サードパーティ Cookie の維持方針に伴い、Topics などの関連 API とポリシーが Chrome 152 で削除されます。
- SafeBrowsing API v4 から v5 への移行: SafeBrowsing の通信が v5 API へ移行されます(Chrome 152)。
- スマートな自動入力の提案への名称変更: 「強化された自動入力」機能が「スマートな自動入力の提案(Smarter autofill suggestions)」に名称変更され、デフォルトで利用可能になります(Chrome 152)。
- ローミングプロファイルポリシーの非推奨化: 関連ポリシーが Chrome 161 で完全に削除されます。
- Chrome ブラウザルールの UX リファクタリング(Chrome Enterprise Premium): 管理コンソールでの DLP ルール作成プロセスが再設計され、単一のルール内で複数のアクションを設定できるようになります(Chrome 155)。
- カスタム HTTP ヘッダー(Chrome Enterprise Premium): 構成された URL パターンに一致するネットワークリクエストに対して、カスタムの HTTP ヘッダーを挿入できる機能がデスクトッププラットフォームで追加されます(Chrome 152)。
まとめ
Chrome 151 のアップデートでは、PDF 内でのテキスト注釈機能の追加や、モバイルデバイスでのパスワード画面の刷新など、ユーザーの利便性を高める機能が多数導入されます。
また、個人用デバイスと管理対象デバイスの境界を明確にする改善や、Chrome Enterprise Premium での DLP 連携の改善なども導入されます。
今後のアップデートで予定されている 2 週間ごとのリリースサイクルへの移行や Manifest V2 の完全削除といった大きな変更に向けて、管理者は組織のテスト計画やポリシー設定を早めに見直すことをお勧めします。
なお、Chrome 151 安定版のリリースは 2026 年 7 月 28 日、Chromebook 向けの ChromeOS 151 安定版は 8 月 11 日が予定されています。












