Google は Chromebook Plus と ChromeOS の新機能に関する記者向けの発表会を日本でも開催し、日本でも展開される予定のいくつかの機能の紹介と予告をしました。
この発表会で ChromeOS プロダクトの VP である John Maletis 氏が登壇し、Chromebook Plus で利用可能な新機能や特長などについて紹介されたほか、実際に今後の ChromeOS アップデートで実装される機能などのデモも体験することができました。
ただし、内容としては2024年9月にリリースされている ChromeOS 128 や現在の ChromeOS 129 で利用可能になっている機能と、まもなく利用可能になる ChromeOS 130 の新機能が紹介されました。
そのため、当ブログで先行して情報を確認している場合には目新しさはないかもしれませんが、日本国内ユーザー向けとして発表されていることが今回の大きなポイントなので、改めてここで紹介しておきます。
Chromebook Plus について
まず、Chromebook Plus についてご存知ない人のために簡単におさらいします。
Chromebook Plus とは、2023年10月に Google が発表した新しいハードウェアの定義のことで、一定以上の性能を備えて Google AI 機能を組み込みで使うことのできる Chromebook を「Chromebook Plus」と呼ぶことになりました。Chromebook Plus と呼ばれるためには、次のようなスペック以上を備えている必要があります。
- CPU : Intel 第12世代 Core i3 以降 または AMD Ryzen 3 7000シリーズ以降
- RAM : 8GB以上
- ストレージ : 128GB以上
- Webカメラ : 1080p + ノイズ低減機能
- ディスプレイ : フルHD IPS以上
これにより今までよりも性能面の違いもわかりやすくなり、普段使いでも快適に使いたい場合や、仕事や多くのタブを開くような作業には Chromebook Plus を選べば安心です。なお、上記の仕様を満たしているデバイスであれば、すでに販売されているモデルも OS のアップデートで Chromebook Plus 扱いになります。対象となる既存機種についてはこちらを参照してください。
Chromebook Plus では、性能だけでなく機能も通常の Chromebook より少し増えており、例えば AI を活用した便利機能や Google フォトの「編集マジック」なども使うことができます。Chromebook Plus のメリットとしては通常の Chromebook よりも高性能で、今回紹介する AI 機能は 組み込まれていながらも手頃な価格設定であることです。なお、Chromebook Plus であれば Google One AI プレミアムプランに加入していなくても使えるため、かなりお得です。
ちなみに日本国内の Chromebook Plus は記事執筆時点で、ASUS、Acer、HP、Lenovo の4社からリリースされています。機種については以下の記事でまとめています。
- ASUS JAPAN が ExpertBook CX54 Chromebook Plus (CX5403) を一般販売開始
- ASUS が国内向けに Chromebook Plus CX34 と CM34 Flip を発表
- Core i3-1315U 搭載の Lenovo IdeaPad Flex 570i Chromebook Plus も日本発売
- HP Chromebook Plus 14 も日本で発売。公式ストア価格は99,000円
- Lenovo IdeaPad Slim 3i Chromebook Plus Gen 8 が販売開始
- 日本エイサーが「Acer Chromebook Plus 514」の Core i3-N305 モデルを発売
- 日本でも HP Chromebook Plus x360 14b と新しい Chromebook x360 14bがリリース
今回、日本向けに発表された Chromebook Plus と Chromebook (ChromeOS) の新機能は次のようなものがありました。
文書作成サポート (Help me write)
Chromebook Plus でのみ利用できる機能として、OS に組み込まれた「文書作成サポート (Help me write)」があります。この機能はテキストを入力するフィールドで右クリックまたはクイックインサート(ランチャー + f)から利用することができ、Gemini が文章を作成するときのサポートをしてくれます。
この機能は個人の Google アカウント向けに2024年9月から提供されており、日本語を含む複数の言語で利用することができます。
文書読解サポート (Help me read)
この機能も Chromebook Plus モデルでのみ使用できる新機能で、ChromeOS に組み込まれているため Chrome ブラウザだけでなく Chromebook にインストールしたアプリ内で右クリックすることで、ウェブサイトや PDF などからテキストの要約や内容についての質問を簡単できるようになります。
この機能は2024年10月30日から展開される ChromeOS 130 で利用可能になりますが、リリース時点では日本語では利用できず、英語のみがサポートされます。発表会では日本語の提供は2025年1月頃を予定としていました。
ビデオ通話の画質と音質の向上
Chromebook Plus のみの機能として、ノイズキャンセリング機能とスタジオ品質のマイク機能、照明や明るさが自動調整される外観エフェクト機能が利用可能になります。この機能は Chromebook (ChromeOS) 側でオンデバイスで処理をするため、性能が一定以上ある Chromebook Plus 向けの機能となるようです。
ちなみにChromeOS 130 からこれらの機能が提供され、マイクのノイズキャンセリングを有効にすると、スタジオ品質のマイク機能がデフォルトで有効になります(リリースノート参照)。
リアルタイム翻訳
Chromebook Plus の新機能の最後はリアルタイム翻訳で、ChromeOS 側の「自動字幕起こし」機能を有効にすることで、Google Meet や YouTube 以外でも、Zoom やその他のアプリ、あるいはライブ配信などでも翻訳字幕を表示することができます。
Chromebook Plus のリアルタイム翻訳は2024年10月2日にリリースされた ChromeOS 129 から提供されており、英語や日本語を含む100以上の言語の翻訳に対応しています。
設定は ChromeOS の設定の [ユーザー補助] > [音声、字幕] から行うことができ、ここでは優先して表示する字幕の言語の管理や、表示する字幕のサイズやフォントなどを調整することができます。有効・無効を切り替えるだけなら、クイック設定のスピーカーの右側にあるアイコンをクリックするだけでOKです。
Chromebook Plus の新機能として紹介されたのは以上の4つとなります。
一方、Chromebook Plus に限らず Chromebook (ChromeOS) デバイスに広く展開される機能として、次のような機能も紹介されました。
ドライブの統合(トート機能の強化)
Google ドライブに保存されているファイルをシェルフにあるトートに固定したり、ファイルアプリの検索から「すべてのプラットフォーム」で Google ドライブ上のファイルを探すことや、ランチャーに「候補のファイル」を表示させることができるようになります。
この機能のうち、 ドライブのファイルをシェルフ(トート)に固定する機能や検索機能は以前から利用できますが、ランチャーで候補のファイルを表示させる機能はまだ利用できず、おそらく ChromeOS 130 から利用可能になります。
ログイン時の画面復帰(おかえりなさい機能)
海外では Welcome Recap と呼ばれている「おかえりなさい」機能は、ログイン時に前回のセッションで中断していたアプリやファイル、ブラウザのタブなどを復元することができる機能です。これは同じデバイスだけでなく別のデバイスでログインしていた場合にも使うことができ、シームレスに作業内容を継続することができます。
この機能は ChromeOS 129 からすでに追加されています。設定は ChromeOS の [設定] を開いて、[システム環境設定] > [起動] > [おかえりなさい] から、「毎回起動」、「都度確認」、「オフ」という3つのオプションから選択することができます。
フォーカスモードの導入
すでに以前紹介記事を書いていますが、フォーカスモードではポモドーロテクニックを利用するためにタスクを設定して指定した時間内は通知をオフにしたり、音楽を流すことができます。ChromeOS 129 からすでに利用できますが、この時点ではフォーカスモード用のサウンドは組み込まれている4種類しか選択できませんが、ChromeOS 130 からは YouTube Music (ただし YouTube Premium ユーザーのみ)から音楽を流すことができるようになります。
なお、Google Workspace アカウントだとサウンドが選択できません(上の画像の通り)。
Gemini がデフォルトでシェルフに固定
最後に、ウェブアプリの Google Gemini がデフォルトでシェルフに固定されるようになりました。ただし、これはウェブアプリへのショートカットとして機能しているだけなので、不要な場合には固定から外す(削除)することができます。
とは言え、Gemini へのアクセスがしやすくなるという点では地味なメリットではあるので、気軽に AI を使いたいユーザーには便利な変更点になります。
今回の発表会で日本国内向けにアナウンスされている機能は以上となりますが、海外や Google Workspace for Enterprise / Education でさらにいくつかの機能が導入予定となっています。詳細についてはこちらをご覧ください。
Chromebook Plus は手頃な価格ながら AI 機能が組み込まれるようになり、一定以上の性能を備えていることで、通常の Chromebook よりもさらに使い方の幅が広がり、使いやすいデバイスになります。ブラウザやコミュニケーション、動画視聴、クラウドベースのソフトウェアで様々な作業だけでなく、気軽に AI を使うことのできる端末ですので、これからの1台やサブデバイスとしてぜひ検討してみてください。