今回の記事では、Amazon.com から購入した ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus の実機レビューをお届けしていきます。すでに YouTube ではファーストインプレッションの動画を投稿していますので、興味のある方はそちらもご覧ください。
ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus は、昨年末に海外の ASUS 公式サイトで情報が掲載された後にコンシューマーや法人向けでリリースされ、日本国内でも今年2月に法人・教育向け Chromebook ラインナップの1つとして投入が発表されています。
ただ、国内外ともなかなか実製品が入荷していないようで、発表から購入可能になるまで半年近くの時間がかかっていました。私は Amazon.com で再び購入可能になった8月2日にポチリましたが、すぐに入荷待ちとなり最終的に到着したのが8月22日と通常よりもだいぶ待つことになりました。
ちなみに、この記事執筆をしている段階で日本もコンシューマー向けに9月頭に発表されると言われはじめました。今回も法則が発動したようで何よりです。
ということで、まずは今回購入している ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus のスペックです。
スペック
OS | ChromeOS (Chromebook Plus) |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 広視野角 2560×1600 DCI-P3 100% 500nits アンチグレア 120Hz リフレッシュレート |
CPU | Intel Core Ultra 5 115U |
RAM | 8GB LPDDR5-6400 |
内部ストレージ | 128GB M.2 2280 NVMe PCIe 4.0 |
外部ストレージ | MicroSD カード |
ポート | USB-C (TB4) ×2 USB-A (3.2) ×2 HDMI ×1 3.5mm オーディオジャック ケンジントンロック |
Webカメラ | 8MP 1080p プライバシーシャッター |
ネットワーク | Wi-Fi 6E Bluetooth |
バッテリー | 最大10時間 |
その他 | MIL-STD 810H バックライトキーボード 指紋センサ Harman/Kardon Audio |
サイズ | 313.7×222.8×16.9mm |
重さ | 1.3kg |
まず、今回の ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus は名前に「Chromebook Plus」があるように、Google が定める一定以上の性能を有するハイスペックな Chromebook です。また、このモデルは Chromebook では他に先駆けて Intel Core Ultra プロセッサを搭載した最初の機種でもあります。
もともと法人向けとして最初に発表されているためか、性能面や堅牢性、指紋センサやプライバシーシャッターなどセキュリティ面も機能が揃っていることも特長です。
さらに14インチ高解像度、高リフレッシュレート、広色域、明るさもChromebookとしては高めで、本体は MIL-STD 810H に準拠した堅牢性を備えつつ重さは1.3kg未満に抑えられているという点も特長になります。ただ、今回のモデルはタッチ非対応モデルなので重さは1.3kgですが、タッチ対応モデルになると1.4kgと増える点に注意が必要です。
デザイン
ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus の本体は再生アルミニウムを使用したオールメタル筐体となっていて、堅牢性を重視するだけでなく高級感があり、厚みも1.69mmで重さが1.3kgなのでスッキリとした見た目になっています。
ヒンジはエルゴリフト構造になっていて、天板を90度以上に開いていくとキーボード側が持ち上がって傾斜がつくようになります。最大180度フラットまで開くことができます。ちなみに片手で天板を開くこともできる点は Good です。
ポートも充実しており、左側面にはケンジントンロック、USB-C (TB4) ポートが1つ、MicroSDカードスロットがあります。右側面には USB-C (TB4) ポートが1つ、HDMI ポート、USB-A (3.2) ポートが2つ、3.5mm オーディオジャックがあります。
最近は USB-C が左側面に2つあるモデルが多くなりましたが、CX54 Chromebook Plus は左右に1つずつあるためケーブルの向きの自由度が高く、USB-Aポートも2つあることで周辺機器の接続もしやすい(例えば、レシーバー系とヘッドセットなど)ことは大きいメリットです。また、USB-C ポートはどちらも Thunderbolt 4 規格となっている点も見逃せません。あえてネガティブな要素を言えば、USB-A ポートが右に2つあることで、Aコネクタの有線マウスやヘッドセットなどを使うとき、右利きだと干渉しやすいということでしょうか。ポートの配置が左右逆でも良かったかもしれません。
キーボードについては、今回のモデルは米国から購入しているので US (英語) 配列キーボードとなっています。比較的素直な配列で特に問題はありません。
クラムシェルタイプなので Backspace キーの上が電源ボタンになっていますが、他のキーよりも重くなっているので、ミスタイプで押してしまう可能性も低く、長押ししなければ電源メニューが表示されないので問題は事故はほぼないと思います。
キーの打鍵感はしっとりとしていて、押し込んでから戻るときの反発はありますが、軽めのタッチで文字入力ができます。エルゴリフトで傾斜もついてるため、長文の文章作成などでも快適に入力ができます。感覚で言えば CX34 と大きな違いはないと思いますが、バックライトキーボードが搭載されている点はメリットになります。また、指紋センサも搭載されている点が大きなプラスです。
ただ、グレーの文字で白地のライトになるので、明るいところで中途半端にバックライトを点灯させると印字が見えづらくなるのが難点です。通常時にオフにしていたり暗所でライトを使えば問題はありません。
一方、タッチパッドに関してはサイズも大きく滑りもスムーズで、タッチへの反応も良く使いやすいのですが、「押し込んでクリック」したときのペコペコした感じが他の仕上がりに比べてチープな印象が目立ちます。実際には押し込んだときではなく、押し込んだあとに戻るときの音です。
とは言え、実用上はまったく問題がないですし、ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus 自体は最高級モデルではないので、これが妥協点かもしれません。
ディスプレイに関しては想像以上に良い出来で、120Hzリフレッシュレートに対応した14インチ 2560×1600の高解像度ディスプレイを搭載しています。また、ノングレアタイプですが広視野角かつ DCI-P3 100% の広色域、最大 500nits の明るさと十分な性能を備えています。
今回のモデルはタッチ操作に非対応のモデルなので人によっては惜しいと思うかもしれませんが、クラムシェルタイプなのでタッチの出番が少ないことと100g軽くなっていることを考えれれば、これも1つの選択肢です。むしろ私はこれが良かったです。
パフォーマンス
性能面について、ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus には NPU を搭載している Intel Core Ultra プロセッサが採用され、今回のモデルは Core Ultra 5 115U と 8GBRAM が搭載されています。実機で測定した各種ベンチマークの結果は次のとおりです。
ベンチマークソフト | スコア |
---|---|
Geekbench Single | 1,573 |
Geekbench Multi | 5,771 |
Geekbench GPU Vulkan | 5,213 |
PCMARK | 12,308 |
CrXPRT2 | 170 |
Octane 2.0 Plus Single | 73,942 |
Octane 2.0 Plus Multi | 398,209 |
JetStream2 | 232 |
Speedometer 3 | 15 |
参考までに Octane 2.0 Plus における Core Ultra 5 115U の他の CPU と比較したときの立ち位置です。
おおよそ同じインテルの第12世代や第13世代 Core i5 〜 i7 の U シリーズと同程度のスコアになっています。見方を変えれば、NPU という追加武器を手に入れてれたものの性能面では1〜2年前のプロセッサから大きなパフォーマンスの向上はありません。とは言え、どちらも Chromebook ではハイスペックに分類されます。
そのため、新たに追加された NPU 次第で Core Ultra の評価が変わるわけですが、現時点では ChromeOS で NPU が正常に動作しているかどうかを簡単に見ることができないのが最大のネックです。例えば、デバイスの状態を簡単に確認できる「診断」アプリを使っても NPU の動作を確認することはできません。というより、表示されないので対応しているかどうかもわかりません。
つまり、Chromebook だと Core Ultra でも単純なパフォーマンスで判断するしかなく、そうすると第12世代や13世代と同程度であり、わざわざ Core Ultra である必要が今のところないと言わざるを得ないのが現時点での判断です。しかし、今後組み込みの AI 機能などが ChromeOS に追加されたり、各ウェブアプリ NPU を使って処理するようになれば変わる可能性はあります。
一方、Chromebook のなかではハイスペックなインテル第12世代 Core i5 や i7 と同程度の性能があることは事実なので、性能面で決して不満のあるものではありません。複数のタブを開いたときや Google Meet など CPU 負荷のかかる作業と画面共有など他の作業を並行しても安定しているため、普段使い、ビジネス、学校などで快適に使うことができます。
ただ、私の場合はタブを同時に50個近く開いてオンライン会議やブラウザベースで画像編集などを仕掛けることがありますが、この場合だと Core Ultra というより 8GBRAM である点がネックになります。だいたいタブを15〜20個開いた状態から重たいタブ(画像編集やスプレッドシート、Looker Studio、ウェブサイトなど)を開くとカクついたり、カーソルの移動が鈍くなることがあります。
診断アプリで確認すると、CPU 使用率にはかなり余裕があるものの RAM 使用量が常にいっぱいいっぱいになるため、タブを大量に開いたり、負荷のかかる作業が並行するような使い方であれば 16GBRAM 以上をおすすめします(Chromebook に限りませんが)。とは言え、タブのRAM使用量を開放する拡張機能やメモリセーバーを活用したり、常に稼働させるタブが10〜15個程度に抑えれば快適に使えます。
使い方次第ですが 8GBRAM モデルでも十分に高性能で、プライベート、学校、仕事のおそらくほとんどのケースではこのモデルで十分な性能だと思います。しかし、仕事でヘビーに使うのであれば全体的に余裕のある 16GBRAM モデルを選ぶほうがより良いかもしれません。
最後にバッテリー駆動時間についてですが、外出先ではあまりヘビーなタスクを行わず、常時タブを5枚、追加で10枚ほど開いた状態で Nord VPN を起動、画面の明るさは60%ほどで作業をしたところ、1時間でだいたい15%〜20%のバッテリー消費となりました。だいたい5〜6時間は持つことになるため、外出時のデバイスとしても安心です。
まとめ
今回は Amazon.com で購入した ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus の実機レビューをしてきましたが、筐体と性能に関して不満はなく完成度の高い1台でした。また、指紋センサやバックライトキーボード、Thunderbolt 4 なども備えているため、これまでにリリースされてきた Chromebook Plus モデルのなかでも一つ上の機能を備えている点も魅力です。
記事執筆時点では Amazon.com から直送で購入すると12万円前後で購入することができるため、輸入というリスクはありますがおすすめできる1台です。
とは言え、英語配列モデルが必要でない限りはわざわざ購入するよりも国内で ASUS Chromebook Plus CX34 や Acer Chromebook Plus 514 を購入するほうがコストパフォーマンスは良いと思います。
ちなみに、記事執筆時点では Amazon.com では 8GBRAM のみが販売されており、日本直送対応の 16GBRAM モデル(Chrome Enterprise バンドル)は ebay のリセラー経由でのみ購入できるためハードルが少し高いことがネックです。より高い性能を求めているユーザーはこちらもオススメです。
2024/09/04 更新 : ASUS ExpertBook CX54 Chromebook Plus が国内でも一般販売を開始しました。詳細はこちら。