今回の記事では、2025 年 3 月 26 日に発表された、EPOS のビジネス(プロフェッショナル)向け認定ワイヤレスイヤホン「EPOS ADAPT E1」の実機レビューをお届けします。このモデルはビジネスシーンで求められる機能を網羅しつつ、オンライン会議や普段使いにも適したバランスの良さが特長です。
なお、レビューにあたり実機の提供を受けていますが、内容についてメーカーからの関与はなく、実際に使用したうえでの率直な感想をまとめています。
もともと EPOS (イーポス) は、2003 年にドイツの音響機器メーカー大手のゼンハイザーと聴覚ヘルスケアグループのデマントの合弁事業として設立された、ゼンハイザー・コミュニケーションズとして知られていました。2020年の合弁会社解消に伴い、エンタープライズ向けの EPOS ブランドとして独立した組織です。
今回レビューしている EPOS ADAPT E1 は、これまでビジネス向けに展開されているヘッドセットの新しいラインナップとして、同ブランド初のビジネス向けワイヤレスイヤホンとなっています。
ADAPT E1 の特長
EPOS ADAPT E1 の特長を簡単にまとめると、次のようなものがあります。
- 10mm ドライバー
- アダプティブハイブリッド アクティブ・ノイズ・キャンセリング(ANC)
- 合計 6 個のマイクとAI ベース環境ノイズキャンセレーション(ENC)
- UC 認証(MS Teams、Zoom、Google Meet、Webex など)
- USB-C / Bluetooth 5.3 (LE) ワイヤレス接続
- マルチポイント接続対応( 2 台同時)
- AAC / SBC コーデック対応
- バッテリー駆動時間
- イヤホン (ANC オフ/音楽) : 最大 14 時間
- イヤホン (ANC オン/音楽) : 最大 10 時間
- イヤホン (通話) : 最大 6 時間
- ケースとの合計 : 最大 50 時間
- ワイヤレス充電、イヤホン急速充電( 5 分で最大 1 時間)対応
- 片耳モード、着脱検知、Android Fast Pair 対応
- IPX5 耐水性
- EPOS Connect アプリ、EPOS Manager (企業向け無償管理アプリ)対応
ビジネス向けのワイヤレスイヤホンとして必要なオンライン会議サービスに対応する UC 認証を取得しており、ANC、大きめのドライバー、USB-C レシーバー接続とマルチポイント接続、長時間バッテリーなど隙の少ない構成となっています。
これまでに、Jabra Evolve2 Buds や Poly Voyager Free 60+ UC といったビジネス向けのワイヤレスイヤホンをレビューし、実際の業務でも使っていますので、それらと比較しつつ EPOS ADAPT E1 のレビューまとめています。
ADAPT E1 のデザイン・操作性
ADAPT E1 の充電ケースはややプラスチック感はあるものの、表面は指紋や皮脂が目立ちにくい質感です。長方形のようなデザインですが、一般的なワイヤレスイヤホンのケースと同程度で大きすぎず厚すぎない見た目です。

横幅と高さは Jabra Evolve2 Buds のものより少し大きいですが、厚みはほぼ変わりません。コンパクトなサイズではあるため、バッグやポケットにも入れやすく、持ち運びしやすい点もメリットです。なお、ケースの重さ(イヤホン込み)は約 62g でした。

また、このケースはワイヤレス充電に対応しており、一般的な Qi ワイヤレス充電器でケーブルレスで充電できます。ケースには USB-C ケーブルもあるため、有線による充電も可能です。

イヤホン本体は自然な向きで収納されているため、装着・収納がしやすく、短めのステム(軸)があります。マイクのあるステムは Poly ほど長くはありませんが、全くない Jabra と違って、わずかに口元に近いことがメリットです。

ケースにはイヤホンだけでなく、USB-C レシーバーも収納できるようになっており、持ち運び時に失くしたり忘れてしまう心配はありません。出先で PC を使って会議に参加することがあるユーザーには便利です。
なお、イヤホンの側面のフラットな部分はボタンになっており、1 回、2 回、3 回、2 秒長押しの操作に対応しています。タッチではなくボタンなので確実に操作できることが特長です。以下はデフォルトの操作方法。
左側 | 右側 | |
---|---|---|
1回押し | MS Teams を起動 Teams 通知を確認 | 音楽の再生 / 一時停止 マイクのミュート / ミュート解除 |
2回押し | Teams での挙手 | 着信の応答 / 終了 次のトラック |
3回押し | – | 前のトラック |
2秒長押し | モード霧家 | 着信の拒否 モード切り替え |
基本的な操作はできますが、音量の増減や音声アシスタントの読み出しなどは利用できません。なお、アプリなどを使ってもこれらの操作を変更できないことに注意が必要です。法人に限らずコンシューマーでもボタン操作のカスタマイズができるデバイスは多いので、これに対応していないことは残念でした。

公式によれば 50 万を超える耳のスキャンデータに基づいて最適な形状を算出し、音響性能と快適性を両立した EPOS IntelligentFit というだけあり、移動中に音楽のために2時間半程度の長い時間着用していても、耳が痛くなったり不快になることはありませんでした。落ちたりずれるということもほぼなかったため、歩きながら通話をする場合にも安心です。

また、イヤホンには着脱検知機能があり、耳から外すと一時停止、装着すると再生されます。片耳での通話に対応しているため、通話中に着脱しても会話は続けられます。
ADAPT E1 の音質と ANC
EPOS ADAPT E1 の音質についてですが、10mm ドライバーを搭載していることで低音と響きがよく、6mm の Jabra Evolve2 Buds や Poly Voyager Free 60+ よりも音楽を聴くことに向いていると思います。

しかし、Jabra も Poly もイコライザーを使って調整することができますが、EPOS Adapt E1 はイコライザーにプリセットの 5 種類しかなく、ユーザーがカスタマイズすることはできません。音が良いだけに、ここの調整ができない点がもったいないです。今後のファームウェアまたはアプリのアップデートで対応してくれると良いのですが。
ノイズキャンセリングについては、これもかなり優秀で Jabra や Poly に比べて「効果が出ている」と感じました。いずれのイヤホンも ANC の効果は実感できますが、EPOS Adapt E1 はその中でも特に実感が出来るという印象です。電車での移動中やアナウンスも音楽を流していればそこまで気になりません。
アンビエントモード (ヒアスルー) も自然な聞こえ方で、外音取り込み時に違和感はありません。Poly のように強さを調整することはできませんが、実用性に問題はありません。
ただ、Jabra と Poly とは異なり、ANC とアンビエントモードだけを切り替える設定がなく、必ず ANC オフ(いわゆるノーマル)が間に挟まってしまいます。長押し操作なので、ANC からアンビエントに切り替えるときに2ステップ(最低 4 秒は)かかるのでこれもアップデートなどで対応してくれると、さらに便利になると思います。
ADAPT E1 のマイク
EPOS ADAPT E1 のマイク性能は、静かな場所では非常にクリアで、ビデオ会議や通話でも問題なく使えます。これは他の 2 つ と比べても優秀だと思います。
また、カフェなどの騒がしい場所では Jabra と Poly の中間といった印象で、Poly より少しノイズを抑える力は劣るものの Jabra よりは上と感じました。

とくに USB-C レシーバーがあることで、PC との接続時は Bluetooth と比べて安定しており、オンライン会議に参加機会の多いユーザーには良い選択肢となります。
以下は、実際に自宅とカフェで録音した EPOS Adapt E1 のマイクのサンプルです。
アームマイク付きヘッドセットには及びませんが、マイクのノイズキャンセレーションがちゃんと働いており、ほとんどの場合はワイヤレスイヤホンとしては十分実用的です。
少し気になるとすれば、サイドトーン(側音)の影響か、通話待機中にマイクがオン(ミュート解除)になっていると「サーッ」という小さなノイズが聴こえることがあります。他 2 つのイヤホンでは特に気にならないので、ADAPT E1 に特有なものだと思います。とは言え、ミュートにしていると聞こえなくなるため、自分が話しているときだとほぼ気になりません。
ADAPT E1 のアプリ
Adapt E1 は、いくつかの機能を専用の EPOS Connect アプリ経由で設定することができますが、このアプリで設定できる項目が非常に少ないことがネックです。このアプリで出来ることは、以下のとおりです。
- モード切り替え
- ANC、アンビエント、オフ
- サウンドプリセットとイコライザー
- デフォルト、音声強化、ベースブースト、トレブルブースト、低音と高音のブースト
- 側音(サイドトーン)調整
- オーディオリミッター(国ごとの音量制限)
- オフ、EU/US、AU
- 音声ガイド
- 英語、ドイツ語、フランス語
- ペアリングリストの削除
- 着脱検知による自動音楽再生・停止 (Smart Pause)
- ファームウェアアップデート
- デバイスリセット
基本的な設定はできますが、前述のようにボタン操作をカスタマイズしたり、イコライザーをカスタマイズしたり、自動スリープの時間調整など細かい設定を行うことができません。ユーザーによっては、とくにボタン操作を変更できない点は自由度が低いと感じるかもしれません。
競合の 2 つはできるので、EPOS もこれらの設定や ANC とアンビエントの切り替え設定については、今後のアップデートなどで対応してもらえるととてもありがたいですね。
実際のアプリのスクリーンショットは次のようなものです。
ちなみに EPOS Connect アプリは Web 版 ( eposconnect.enterprise.eposaudio.com )も存在しており、Chromebook などでブラウザからイヤホンとレシーバーのファームウェアアップデートを行える点はメリットです(Poly もある)。
ADAPT E1 の価格
最後に価格についてですが、EPOS 公式サイトでは ADAPT E1 は、32,630 円で掲載されています。この価格は Jabra Evolve2 Buds の 37,950 円、Poly Voyager Free 60 + の 51,150 円よりも安価です。
アプリの設定項目の少なさを除けば、EPOS ADAPT E1 は音質、ANC、マイク、使いやすさで高いレベルでまとまっており、さらに案外手頃な価格設定になっている点は非常に魅力的です。
ただ、記事執筆時点では Amazon.co.jp などで購入はできず、入手経路が限られているのが残念です。
今後、購入のハードルが下がれば、個人でも通話やオンライン会議用で持ち運びのしやすいイヤホンタイプを探しているユーザーにはおすすめできます。
Jabra と Poly との比べての印象
過去2週間ほど使った印象で言えば、Jabra よりも音質、ANC、マイクが上で、Poly よりも音質、ANC、装着感、持ち運びやすさが上でした。アプリだけは両者に負けますが、それ以外の点ではバランス良くまとまっています。

そのため、通話や会議用に振り切るなら Poly、装着感や持ち運びのしやすさなら Jabra になりますが、できるだけ犠牲にする箇所を減らし、価格も抑えて扱いやすいビジネス用ワイヤレスイヤホンを選ぶなら EPOS Adapt E1 が間違いなくおすすめです。
唯一の妥協点はアプリですが、これはアップデートで機能の追加が行われることに期待です。
まとめ
EPOS Adapt E1 は、Jabra Evolve2 Buds や Poly Voyager Free 60+ UC といった競合モデルと比較しても、音質・ANC・マイク性能・接続性・装着感のバランスが非常に優れたビジネス向けワイヤレスイヤホンです。
一方で、アプリからのカスタマイズ性(ボタン操作やイコライザーの自由度)には制限があるため、細かく調整したいユーザーにはやや不便に感じられるかもしれません。
それでも、3 万円台前半という価格帯でこれだけの完成度を備えていることを考えれば、通話やオンライン会議などのビジネス用途だけに限らず、音質や快適性も重視するユーザーにおすすめできるモデルです。
詳細については以下の EPOS ADAPT E1 の製品詳細をご覧ください。