Qualcomm が 2023 年にリリースしたフラッグシップチップセット「Snapdragon 8 Gen 3」に、2 つの新しいバージョンを準備している可能性が報告されました。これらは、オリジナルのチップから CPU コアを 2 つ減らした 6 コア構成の「ビニングチップ」と見られています。
この新しいチップの登場は、より手頃な価格帯のデバイスや、熱設計に制約のある製品にも準フラッグシップ級の性能を提供することを目的としている可能性があります。
Snapdragon 8 Gen 3 の新しい派生版について
今回、存在が明らかになったのは「SM8650-Q-AB」と「SM8650-Q-AA」という 2 つのバージョンです。これらは、通常 8 コア構成である Snapdragon 8 Gen 3 を 6 コア構成に変更し、動作クロックを調整したバージョンと考えられています。
このような、本来の目標性能に達しなかったチップを選別(ビンニング)し、仕様を変更して製品化する手法は「ビニングチップ」と呼ばれます。これにより、メーカーはコストを抑えつつ、高性能なチップを様々な製品に搭載できる可能性があります。
確認されている CPU 構成と性能
近々登場が噂される Lenovo 製タブレット(TB710FU)の Geekbench のベンチマーク結果から、新しいチップの一つである「SM8650-Q-AB」の構成が判明しています。

判明した CPU 構成は以下の通りです。
バリーエーション | CPU 構成 (判明分) | GPU | プロセス |
---|---|---|---|
SM8650-Q-AB | 3.30GHz ×1 (Cortex-X4) 2.96GHz ×4 (Cortex-A720) 2.27GHz ×1 (Cortex-A520) | Adreno 750 | 4nm |
SM8650-Q-AA | 3.00GHz ×1 (Cortex-X4) 2.96GHz ×4 (Cortex-A720) 2.27GHz ×1 (Cortex-A520) | Adreno 750 | 4nm |
SM8650-Q-AB は、プライムコアである Cortex-X4 のクロック周波数を通常の Snapdragon 8 Gen 3 と同じ 3.3GHz に維持しつつ、コア数を 6 つに減らしているようです。 GPU に関しては、オリジナルの Adreno 750 がそのまま搭載されており、グラフィックス性能は高いレベルを維持していると考えられます。
もう一方の SM8650-Q-AA は、プライムコアのクロック周波数が 3.0GHz に抑えられた、より低消費電力志向のモデルになると予想されています。
なぜ今、新しいバージョンが登場するのか?
これらの新しいチップが登場する主な目的は、準フラッグシップ級の性能を、より幅広いデバイスに、より手頃な価格で提供することにあると考えられます。
本来の目標性能に達しなかったチップを選別・再利用する「ビニングチップ」であるため、メーカーはコストや熱設計の課題をクリアしやすくなります。これにより、以下のような「フラッグシップ・ライト」と呼ばれるカテゴリの製品開発が活発になる可能性があります。
- タブレット
- 準プレミアム・スマートフォン
- 携帯型ゲーミングデバイス
まとめ
今回は Qualcomm から Snapdragon 8 Gen 3 の 6 コアモデルが登場する可能性が示唆され、すでにベンチマークでも明らかにされているように、実際の製品に組み込まれてテストされているようです。
現時点では Qualcomm からの正式な発表はありませんが、すでにベンチマークが登場していることから、近々発表と実際のデバイスの登場が期待されます。