Google は 2025 年 6 月 26 日 (米国時間) 、Google Workspace ユーザー向けに新たなアドオンプラン「Google AI Ultra for Business」を発表しました。
このプランは、今年初めに Business プランと Enterprise プランに導入された Gemini の全機能に続くもので、より高度な AI 機能を必要とするクリエイター、開発者、研究者といった専門チームを対象としています。
Google は、「Google AI Ultra for Business は、組織内における生産性と創造性の新たな波を後押しし、専門チームがインパクトの大きい結果をこれまで以上に迅速に提供できるようになると信じています」と述べています。
Google AI Ultra for Business の概要
「Google AI Ultra for Business」は、既存の Workspace プランに追加する形で利用できる有料アドオンです。主な特長は、Google の最も高性能な AI モデルや、動画生成、高度なコーディング、詳細なリサーチといった AI ツールへのアクセス権が付与される点です。
このプランは、特に複雑な課題に取り組む専門性の高いユーザー向けに設計されており、IT 部門は使い慣れた Workspace 管理コンソールから一元的に管理することが可能です。
クリエイティブチーム向けの機能
このプランでは、特に AI による動画制作機能が大幅に強化されており、クリエイティブチームはコンセプトの立案から最終的なコンテンツ制作までの時間を大幅に短縮できます。提供される主なツールは以下の通りです。
Veo 3 in Gemini app
Gemini アプリ内で、テキストや画像、動画を入力するだけで、マーケティングキャンペーン、SNS コンテンツ、トレーニング教材などに利用できるプロ品質の 1080p HD 動画 (音声付き) を生成できます。ユーザーには毎月 12,500 クレジットが付与されます。
Flow
クリエイターと共同で、またクリエイターのために構築された AI 映像制作ツールです。Veo 3 へのアクセスに加え、参照した画像を基に一貫性のある複数のクリップを作成するなど、より映画的なシーンやストーリーを制作するためのプレミアム機能を利用できます。
Whisk / Whisk Animate
テキストと画像の両方のプロンプトを使用して、新しいアイデアを迅速に探求し、視覚化するためのツールです。「Whisk Animate」機能を使えば、AI モデル「Veo 2」を利用して画像を 8 秒間の動画に変換することも可能です。
開発者・研究者向けの機能
開発者や研究者向けには、より高い使用制限とともに、Google の最も高性能なモデルを活用して野心的なプロジェクトに取り組むための機能が提供されます。
Gemini アプリでの高度なコーディング
「Gemini 2.5 Pro」を含む最先端モデルを高い使用制限で利用でき、コードブロック全体の開発、単体テストの生成、反復的なコーディングタスクの自動化などが可能になります。また、近日中には、非常に複雑な数学やコーディングのための強化された推論モード「Deep Think」へのアクセスも提供される予定です。
Gemini アプリでの詳細なリサーチ
「Deep Research」機能の高い使用制限により、あらゆるトピックについて迅速に情報を得ることができます。プロンプトを基に AI がリサーチ計画を立案し、何百ものサイトを閲覧して最新情報を収集、洞察に富んだ包括的なレポートをわずか数分で作成します。
NotebookLM
近日公開予定の機能として、高い使用制限と強化されたモデル機能により、共有ノートブックを通じてリサーチ、分析、チームの知識共有をより効率的に拡張できるようになります。
Project Mariner (現在米国のみ)
自然言語プロンプトを使用して、人間と AI エージェント間のインタラクションを効率化する研究プロトタイプです。リサーチやデータ入力といった時間のかかるタスクを AI エージェントに割り当ててバックグラウンドで並行処理させることで、ユーザーは他の作業に集中できます。
提供プランと管理
「Google AI Ultra for Business」は、本日より Workspace 管理コンソールを通じて、以下のプランのアドオンとして購入できます。
- Business Starter, Standard, Plus
- Enterprise Starter, Standard, Plus
将来的には、G Suite Legacy Free Edition や Education の顧客にも提供される予定です。
Gemini アプリと NotebookLM での高度なアクセスには、他の Workspace サービスと同様のエンタープライズグレードのデータ保護が適用されます。
Flow、Whisk、Project Mariner といった次世代ツールへのアクセスは個別に管理できるため、IT 部門は各ツールの利用規約を評価し、チームのニーズに合わせて導入を検討できます。
現在、登録から 3ヶ月間 50% 割引で利用できるキャンペーンも実施されています。
日本の提供状況
日本においても Google AI Ultra for Business の提供はすでに開始されています。筆者の環境で確認したところ、1 ユーザーあたり月額 30,400 円(恒例の割引が入って 1 ユーザーあたり月額 22,618 円)となっていました。

まとめ
今回発表された「Google AI Ultra for Business」は、一般的な AI アシスタント機能にとどまらず、動画制作やコーディング、研究開発といった、より専門的で負荷の高い業務に特化した強力なツール群を提供するものです。
これまでの AI 機能が日常業務の効率化に主眼を置いていたのに対し、この新しいプランは、専門分野における創造性と生産性を飛躍的に向上させる可能性が期待できます。特に、これまで多大な時間とコストを要した高品質な動画コンテンツの制作が、クレジットベースで手軽に利用できるようになる点は、多くの企業にとって大きな魅力になります。