Google は今年初め、開発プロセスを簡素化するために Android OS の開発をより非公開な形に移行すると発表しましたが、その際はソースコードの公開は継続されると約束されたため、影響は限定的でした。
しかし今回、新たに公開された Android 16 のソースコードにおいて、これまで提供されてきた Pixel デバイス向けのハードウェア関連ファイル(デバイスツリーなど)の公開が停止されたことで、再び懸念の声が上がっています。
これにより、コミュニティでは「AOSP (Android Open Source Project) が終了するのではないか」との憶測も飛び交いましたが、Google はこれを否定しています。とはいえ、この変更は意図的なものであり、Pixel を中心としたカスタム ROM 開発に大きな影響を与えることは避けられないようです。
何が起こったのか?
2025 年 6 月 10 日(米国時間)、Google は Android 16 安定版を Pixel デバイスにリリースするとともに、そのソースコードも AOSP にリリースしました。しかし、今回のリリースには、従来含まれていた Pixel デバイス向けの「デバイスツリー」や「ドライババイナリ」といった、AOSP を特定のハードウェア(Pixel)で動作させるために不可欠なファイルが含まれていませんでした。
これらのファイルは、カスタム ROM 開発者が OS のアップデートを開発したり、独自の機能を追加したりする上で重要な役割を果たしてきました。この突然の変更は、開発コミュニティに大きな衝撃を与え、AOSP の将来に対する懸念の声が上がりました。
Google の公式見解「AOSP は終わらない」
こうしたコミュニティの反応を受け、Android プラットフォーム担当副社長兼 GM の Seang Chau 氏は、X の投稿で「AOSP がなくなることはない (AOSP is NOT going away)」と明確に否定しました。

Google によると、この変更は AOSP のリファレンス(基準)となるターゲットを、特定のハードウェアから独立させるための意図的な決定です。今後は、Google の Pixel を含む特定のコンシューマー向けハードウェアではなく、仮想デバイスである「Cuttlefish」をリファレンスターゲットとしてサポートしていく方針です。
Google は、AOSP が特定のデバイスメーカーやプロセッサに依存しない、オープンなプラットフォームであり続けることを目指しており、Cuttlefish はその理念に適した、より中立的なリファレンスターゲットであると説明しています。
カスタム ROM 開発はどうなる?
今回の変更で、Pixel 向けのカスタム ROM を作ることが、これまでよりずっと難しくなります。簡単に言うと、これまで Google が提供してくれていた「設計図」の一部が非公開になったため、開発者の方々は、より多くの時間と手間をかけて開発をしなければならなくなりました。
著名なカスタム ROM の開発者も、今後の開発プロセスが「苦痛なものになる」と述べており、コミュニティへの影響は避けられません。
まとめ
今回の Google の方針転換は、ほとんどの Pixel ユーザーの日常的な使い方には直接関係ありません。しかし、スマートフォンを自分好みにカスタマイズしたい一部のユーザーにとっては、少し残念なニュースとなりました。
開発が難しくなることで、今後、Pixel 向けの新しいカスタム ROM が登場しにくくなったり、種類が減ってしまったりする可能性があります。今回の変更により、Pixel が持つ魅力の一つであった「自由なカスタマイズ」という選択肢が、少し狭まってしまうかもしれません。