英国 Nothing の CEO である Carl Pei 氏は、将来のスマートフォンに関する大胆なビジョンを明らかにしました。同氏は、WIREDとのインタビューで、今後 10 年以内に現在私たちが利用しているような多数の「アプリ」は時代遅れとなり、代わりにコンテキストを理解しユーザーのために自律的に動作する「エージェントオペレーティングシステム(OS)」が主流になると予測しています。
アプリの終焉とエージェントOSの到来
Pei 氏は、現在のアプリ中心のスマートフォン体験が大きく変わると考えており、同氏の描く未来では、スマートフォンに搭載されるアプリは実質的に OS ただ一つになるとしています。
この OS は、ユーザーの状況、時間、場所、スケジュールなどを深く理解し、ユーザーが何をしたいかを予測し、提案、さらには自動的にタスクを実行する「エージェント」として機能するといいます。
「現在、私たちは何かをしたい場合、スマートフォンをアンロックし、ステップバイステップで操作する必要があります。将来的には、あなたのスマートフォンが何をしたいかを提案し、そしてそれを自動的に実行してくれるでしょう。つまり、それは主体的で、自動化され、積極的なものになるのです」と Pei 氏は語っています。
この変化の背景には、AI 技術の進化があります。Pei 氏は、AI を単なる機能追加として捉えるのではなく、ユーザーの問題を解決し、より良い体験を提供するための基盤技術と位置付けています。
なぜスマートフォンが中心であり続けるのか
スマートグラスや AI ピンのような新しいデバイス形態が登場していますが、Pei 氏は短期的にはこれらのデバイスがスマートフォンに取って代わることはないと考えています。その主な理由は、AI の学習と進化に不可欠な「データ」の量と多様性において、スマートフォンが圧倒的に優位であるからとしています。
実現への道のりとプライバシーの重要性
一方、Pei 氏によれば、このようなエージェント OS が完全に実現するには、7 年から 10 年ほどの時間が必要になると考えているようです。「多くの人はもっと早く実現してほしいと思っているかもしれませんが、現実には人々はアプリを使うのが大好きなので、それほど速くは実現しないと思います」と述べています。
また、この未来を実現する上で、ユーザープライバシーの保護が極めて重要であると強調しています。データの取り扱いに関する透明性、データがクラウドとデバイスのどちらに保存されるかの明確化、そしてユーザー自身がデータへのアクセスを制御し、削除できる権利を持つことが不可欠だと指摘しています。
最終的に、この進化によってユーザーは退屈な作業から解放され、より自分が関心のあることに時間を使えるようになる、というのが Pei 氏の描く未来像です。
まとめ
Carl Pei 氏が提唱する「OSが唯一のアプリとなるスマートフォン」という考えは、多数のアプリを行き来する現在の使い方から、よりシンプルに日々の利便性を大きく向上させる可能性はあると思います。
ただ、そうなるとスマートフォンに限らず、PC やその他のデバイスとのシームレスな連携も必要になるため、個々のデバイスが賢くなるだけでなく、それぞれのデバイスが連携動作するようになれば、さらに便利になるかもしれません。
出典: Wired