MediaTek は、台湾で開催中の Computex 2025 の基調講演において、初の 2nm プロセスを採用したチップを開発中であり、2025 年後半にテープアウト(設計完了)する予定であることを正式に発表しました。
現在、多くのフラッグシップスマートフォン向けチップが 3nm プロセスを採用しており、さらなる性能向上と電力効率の改善が期待される 2nm プロセスへと移ろうとしています。
従来、TSMC の最先端プロセスは Apple が最初に採用するケースが多く見られましたが、次期 iPhone 向けチップにおける 2nm プロセスの採用については不透明な状況です。
生産時期やコストの問題から、Apple が改良型の 3nm プロセスである N3P ノードを A20 チップに採用する場合、MediaTek が市場で初めて 2nm プロセスのスマートフォン向け SoC(System-on-a-Chip)を投入する可能性があります。
現時点でわかっていること
MediaTek は Computex 2025 で、2nm プロセスチップのテープアウトが 2025 年 9 月になることを明らかにしました。
半導体開発におけるテープアウトとは、最終設計が製造準備段階に送られることを意味します。
このスケジュールは、TSMC の計画とも一致しており、N2 プロセス(2nm プロセス)の量産を2026年後半に開始する見込みです。
予想されるチップ名と位置づけ
MediaTek はチップの具体的な名称を明らかにしていませんが、2026 年後半に量産されるとすれば、次世代フラッグシッププロセッサである「Dimensity 9600」となることが予想されています。この SoC の詳細については、量産開始まで1年以上あるため、まだしばらく情報が伏せられると考えられます。
これまで、MediaTek のチップは Qualcomm のフラッグシップ製品に対して少し手頃な代替品と見なされてきました。しかし、情報によれば Dimensity 9600 に採用される TSMC の N2 ウェハは非常に高価であり、10% の価格上昇も噂されています。
これにより製造コストがさらに上がり、Dimensity 9600 は MediaTek にとって、最もプレミアムで高価な製品の一つとなる可能性があります。
性能向上と消費電力削減、AI 機能の強化
MediaTek の CEO である Rick Tsai 氏は、TSMC が製造するこの 2nm チップについて、現行の 3nm プロセッサと比較して 15% の性能向上と 25% の消費電力削減を実現すると述べています。
現在、MediaTek の最上位プロセッサは TSMC の 3nm プロセスをベースとした Dimensity 9400+ であり、今回発表された 2nm チップがその後継製品である可能性が高いです。
さらに MediaTek は、今後のプロセッサにおいて高度な AI 機能を統合し、リアルタイム画像認識や生成 AI を活用した強力な画像処理ツールを導入する計画も明らかにしました。
現在、MediaTek のチップは 540 の AI モデルをサポートしており、そのうち 240 はモバイルプラットフォーム向けに最適化されています。6G ワイヤレス技術についても言及がありましたが、現時点では詳細は不明です。
Nvidia との新たな提携
なお、MediaTek は Nvidia との新たなパートナーシップを発表し、Nvidia の「NVLink Fusion Technology」を最初にサポートする企業の一つとなります。
この技術は、複数の GPU と CPU を効率的に連携させ、リソースを共有できるようにするものです。結果として、システム全体の処理能力を最大限に引き出し、AI や大規模なデータ処理におけるサーバーの効率と安定性を大幅に向上させることが期待されます。
さらに MediiaTek と Nvidia が共同開発した「Nvidia GB10 Grace Blackwell Superchip」を搭載する AI スーパーコンピュータ「DGX Spark AI Supercomputer」の開発でも協力しています。
まとめ
MediaTek による 2nm プロセスチップの開発発表は、Apple や Qualcomm とフラッグシップチップ市場において真っ向から立ち向かうことを示唆しています。
2nm プロセスチップが搭載されれば、ユーザーにとってはより高性能でバッテリー駆動時間も長く、AI の進化によりカメラ性能の向上など様々な面での改善が期待できます。
出典: MediaTek, Gizmochina, MySmartPrice