Amazon は、古いバージョンの Kindle Android アプリにおける Kindle コンテンツのダウンロードサポートを終了すると発表しました。この変更は、2025 年 5 月 26 日から有効になります。
この報告は MobileReadフォーラムのユーザー trishau 氏が Amazon から受け取ったメールの内容から明らかになりました。
変更の概要
Amazon からユーザーに送信された通知によると、2022 年 3 月以前にリリースされた Kindle for Android アプリ(バージョン 8.51 以前)では、2025 年 5 月 26 日以降、Kindle コンテンツのダウンロードができなくなるとしています。そのため、Amazon はユーザーに最新バージョンのアプリ(Android OS v9.0 以降が必要)へアップデートするよう呼びかけています。
(以下、送信されているメール本文の抜粋・翻訳)
Android デバイスの Kindle アプリを最新バージョン (Android OS v9.0+) に更新していただくようお願いいたします。 2025 年 5 月 26 日以降、2022 年 3 月より前にリリースされたバージョンの Kindle for Android アプリ (v8.51 以前) では、Kindle コンテンツのダウンロードがサポートされなくなります。アプリをアップデートできない場合は、以前にダウンロードしたコンテンツを引き続き読むことができます。
この措置は、DRM(デジタル著作権管理)解除の脆弱性がある古いファイル形式を取得するために、古いバージョンの Android アプリが悪用されていた問題への対策とみられます。
背景にある DRM 問題
購入した電子書籍の DRM を解除することで、自由に共有・閲覧できるようにする Kindle ユーザーもいます。この DRM を解除するためには、まず書籍ファイル自体にアクセスする必要があります。
Amazon は以前にも、DRM 解除に利用される可能性のあった「USB 経由でのダウンロードと転送」機能を2月に廃止しています。今回の古い Android アプリのダウンロードサポート終了も、この流れを汲むものと考えられます。
Amazon の対応とユーザーへの影響
Amazon は、Kindle の電子書籍はファイルそのものではなくライセンスを購入するものであるという立場を明確にしています。これはカリフォルニア州法に基づくもので、DRM 解除を阻止しようとする Amazon の姿勢を裏付けています。
今回の措置は、DRM 解除を目的として古いバージョンのアプリを利用していたユーザーにとっては影響が大きいと言えますが、Amazon は数週間の猶予期間を設けており、影響を受けるユーザーにアップデートを促しています。
Amazon は、今回の変更が「Kindle の体験を最大限に活用し、アプリが意図したとおりに動作することを保証するため」であると説明しています。長年アップデートされていない非常に古いバージョンのアプリのサポートを終了することは、セキュリティや機能維持の観点からも自然な流れと言えるかもしれません。
ちなみに日本国内においても、過去に Amazon が Kindle の「USB 経由でのダウンロードと転送」機能を終了した際には、同様にユーザーへの通知が行われており、今回の措置も日本国内のユーザーに影響が及ぶと考えられます。
DRM と電子書籍の今後
米国では、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)により、電子書籍の DRM を解除することは技術的に違法とされています。Amazon が DRM 解除を阻止する権利を持つ一方で、このような消費者にとって不利益とも取れる動きは議論を呼んでいます。
日本においても、著作権法で技術的保護手段の回避は原則として私的使用目的であっても違法とされていますが、DRM をめぐる議論は存在します。
なお、楽天 Kobo や Google Books など、一部の競合他社は比較的 DRM 解除が容易な ePub 形式で電子書籍を販売しています。Amazon がプラットフォームの囲い込みを強化する中で、ユーザーが自身の購入したデジタルコンテンツの所有権についてどのように考えるかが、今後の電子書籍市場の動向に影響を与える可能性があります。
特に、過去に Amazon が Comixology のライブラリを Kindle プラットフォームに移行した際に、一部の購入済みコンテンツが削除されたり、低解像度のものに置き換えられたりした事例もあり、デジタルコンテンツの所有権や管理方法に対するユーザーの懸念は根強いものがあります。
まとめ
Amazon Kindle の古い Android アプリからの書籍ダウンロードサポート終了は、DRM 解除という長年の課題に対する Amazon の新たな一手と見ることができます。日本を含む各国のユーザーにとっては、利便性とコンテンツの所有権という点で、プラットフォームの選択がより重要になってくるかもしれません。
出典: Android Police