Google が Pixel 10 シリーズ向けに開発を進めている Tensor G5 は、これまでの Tensor チップとは大きく異なり、Google が自社で設計し、製造を TSMC に切り替えると報じられています。
今回、Android Authority は、Google 内部の情報源から得た情報として、以前よりも詳細な Tensor G5 の主要な仕様と、開発において Google が Samsung への依存を解消し、独自に Tensor G5 の開発を進めた方法について紹介しています。
主要な仕様については、例えば、CPU には Arm の最新 Cortex コアを採用し、GPU は Arm Mali から Imagination Technologies の IMG DXT に変更されています。これは以前にも Tensor G4 からの変更点として伝えられていました。また、AI 処理用の TPU は Google の独自設計を維持しつつ、DSP には Tensilica Xtensa ベースの GXP 次世代版を採用するなど、全体的にカスタマイズが強化されています。
ビデオコーデックについても、Google 独自の AV1 コーデック「BigWave」と Samsung の MFC (Multi-Format Codec)を廃止し、Chips&Media の WAVE677DV を採用するとしています。これにより、AV1、VP9、HEVC、H.264 などの形式で最大 4K120 のエンコードおよびデコードが可能になります。
また、ディスプレイコントローラーにも Samsung 製ではなく VeriSilicon の DC9000 を採用し、映像処理のパフォーマンスと電力効率の向上が期待されています。
さらに、Pixel シリーズの強みであるカメラ性能をさらに向上させるため、Tensor G5 では ISP (画像信号プロセッサ)が完全に Google のカスタム設計となります。これにより、画像処理の最適化が進み、AI を活用した写真機能がさらに強化されることになるはずです。
この他にも、MIPI DSI PHY、CSI PHY、DisplayPort PHY、I3C、I2C、SPI、LPDDR5x PHY、SPMI コントローラ、PWM コントローラ、UFS コントローラ、USB3 コアなど、主要コンポーネントが Samsung 製から別のベンダー製へと置き換えられています。Synopsys DesignWare IP、SmartDV、Faraday Technology などの技術が採用され、より最適化された設計が行われています。
なお、これまでの情報では、Tensor G5 の製造は Samsung ではなく TSMC に切り替わり、最新の 3nm (N3E) プロセスを採用する予定です。これにより、従来の Tensor チップに見られた発熱やバッテリー消費の問題が大幅に改善される可能性があります。
しかし、今回の報告では Tensor G5 が進化している一方で、依然として多くの機能やインターフェースはサードパーティの IP に依存しているのも事実です。TSMC のプロセスを採用することや、Google の設計範囲は拡大していることに違いはありますが、状況は以前の Tensor チップと大きく変わらないようです。
とはいえ、Google は Samsung との提携を通じて自社のチップを開発・テストする機会があり、Google はついに独自開発の準備を整え、本格的な自社設計への移行を本格化させました。
今後、Tensor チップがどこまで Google 独自の技術で構築されるのか、Pixel シリーズのパフォーマンスや使い勝手にどのような影響を与えるのかはわかりませんが、良い変化を期待したいところです。
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