Google は公式ブログで、パキスタンの大手商業銀行である JS 銀行が、Google のソリューションを導入して IT インフラを近代化し、業務効率を大幅に向上させた事例を紹介しました。
この取り組みにより、同行はデバイス管理時間を 40% 削減し、日々のサポート問い合わせを半減させるなどの成果を上げています。
従来の複雑な IT 環境がイノベーションを阻害
JS 銀行は、パキスタン国内に 293 以上の支店を持つ急成長中の銀行です。同行は技術革新を重視していましたが、従来の IT インフラがその足かせとなっていました。
導入以前、同行の IT 部門は以下のような課題を抱えていました。
- エンドポイントの不安定さ: 端末のクラッシュが頻繁に発生。
- 複雑なセキュリティ対策: ウイルス対策ソフトなどを多層的に導入し、運用が煩雑化。
- デバイスの非標準化: 古いデバイスや異なる OS (Ubuntu など) が混在し、効率的な管理とセキュリティ確保が困難。
こうした環境下で、IT チームは日々の保守・修正作業に追われ、銀行のデジタル化といった取り組みに注力できずにいました。
Google エコシステムへの移行で運用を効率化
JS 銀行はこれらの課題を解決するため、ChromeOS、Google Workspace、Google Cloud を統合した Google のエコシステムへの移行を決定しました。
具体的な施策として、全支店に 1,500 台の Chromebox を導入し、Google Workspace への完全移行を実施しました。これにより、エンドポイントの約 90% が Chromebook および Chromebox で標準化され、管理しやすく安全な IT アーキテクチャが実現しました。
ChromeOS と Google Workspace に組み込まれたセキュリティ機能により、複数のセキュリティツールは不要となり、セキュリティ体制が簡素化されながらも強化されました。
さらに、全社で Chrome ブラウザを標準とし、1,500 人のユーザーには Chrome Enterprise Premium を導入。これにより、ゼロトラストセキュリティやデータ損失防止 (DLP) 、コンテキストアウェアアクセスによる安全なアプリケーション利用などが可能になりました。
デバイス管理時間を 40% 削減、サポートチケットは半減
Google ソリューションの導入効果は顕著でした。主な成果は以下の通りです。
- IT 部門の負担軽減: デバイス管理に必要な時間が 40% 削減されました。
- サポート業務の効率化: 日々のサポートチケットが半減し、IT スタッフはハードウェアのトラブル対応から、より戦略的なアプリケーションサポートへと業務内容をシフトできました。
- 従業員満足度の向上: IT スタッフの週末の業務負担が軽減されるなど、労働環境も改善されました。
これにより、IT チームは本来注力すべき顧客サポートや価値創造といった戦略的な業務に集中できるようになりました。
AI 活用を見据えた「One Platform」構想
今回の導入は、JS 銀行が目指す「One Platform」というビジョンの一環です。同行は Google のエコシステムを基盤に、Google Cloud 上に構築したデータレイクと、Gemini などの LLM (大規模言語モデル) を連携させています。
今後は Vertex AI の活用も視野に入れており、2026 年までに地域で最も技術的に進んだ銀行になることを目標としています。
まとめ
今回の JS 銀行の事例は、金融機関のような高いセキュリティとコンプライアンスが求められる業界においても、Google のクラウドベースのソリューションがいかに有効であるかを示しています。
特に、IT 部門の負担を大幅に軽減し、より付加価値の高い戦略的な業務へとリソースを再配分できた点は、多くの企業にとって参考になるのではないでしょうか。
より詳しい内容については、Google Cloud Blog の「From legacy complexity to Google-powered innovation」をご覧ください。