先日、MediaTek のハイエンド ARM チップ「Kompanio Ultra 910」を搭載した 2 台目のモデルとして、新しい Acer Chromebook Plus Spin 514 (CP514-5HN) が正式発表されました。
Kompanio Ultra 搭載機としては世界初のモデルであり、すでに日本でも販売されている Lenovo Chromebook Plus Gen 10 と比較して、どちらが自分に合っているか、気になる方も多いかもしれません。
本記事では、この 2 つの Chromebook をさまざまな視点から徹底的に比較し、それぞれの特徴と選び方のポイントを解説します。
ただし、記事執筆時点では「Acer Chromebook Plus Spin 514 (CP514-5HN)」は日本での正式発表はありません。
Kompanio Ultra 910 とは?
両モデルに共通して搭載されているプロセッサー「Kompanio Ultra 910」は、Chromebook 向けに開発された高性能な ARM ベースの SoC です。3nm プロセスで製造され、第 8 世代 NPU を搭載することで 50 TOPS の AI 処理能力を備えています。
CPU コアはハイエンドスマートフォン向けの Dimensity 9400 と同じく、オールビッグコアアーキテクチャを採用しています。これにより、Intel Core Ultra 5 プロセッサと比較して、ベンチマークではシングルコアが最大 18% 向上、マルチコアは 40% 向上し、さらに消費電力は半分になるとされています。
このチップは、OLED ディスプレイや Dolby Atmos 対応スピーカー、独自の AI 機能を Chromebook Plus として初めて搭載した Lenovo Chromebook Plus 14 に採用されました。
ベンチマークについて
日本においても、Kompanio Ultra 910 を搭載した Lenovo Chromebook Plus Gen 10 は販売されており、実際のデバイスでベンチマークを測定しています。
ここでは Kompanio Ultra 搭載機およびハイエンド Chromebook の実機で測定したベンチマークを紹介します。

2025 年時点では、Chromebook のなかでも最高峰の性能を備えており、Chromebox でも採用されている Core i5-1240P と近い性能となっています。
スペック比較
Acer Chromebook Plus Spin 514 と Lenovo Chromebook Plus 14 の主なスペックを比較します。
Lenovo Chromebook Plus Gen 10 | Acer Chromebook Plus Spin 514 (CP514-5HN) | |
---|---|---|
ディスプレイ | 14 インチ OLED 1,920 × 1,200 最大輝度 400nits 100% DCI-P3 タッチスクリーン グレア | 14 インチ LCD 2,880 × 1,800 または 1,920 × 1,200 最大輝度 300nits 120Hz リフレッシュレート 100% RGB タッチスクリーン Corning Gorilla Glass |
CPU | MediaTek Kompanio Ultra 910 | Kompanio Ultra 910 |
RAM | 12GB / 16GB LPDDR5X | 12GB / 16GB LPDDR5X |
内部ストレージ | 128GB UFS 3.1 256GB UFS 4.0 | 128 GB / 256GB UFS 4.0 |
外部ストレージ | なし | なし |
Web カメラ | 5MP プライバシーシャッター | 5MP (2,880 × 1,800) または 1080p プライバシーシャッター |
ポート | USB-C (5Gbps) ×2 USB-A (5Gbps) ×1 3.5mm コンボジャック | USB-C (5Gbps) ×2 USB-A (5Gbps) ×2 3.5mm コンボジャック |
バッテリー | 最大 17 時間 65W 急速充電 | 最大 17 時間 65W 急速充電 |
ネットワーク | Wi-Fi 7 Bluetooth 5.4 | Wi-Fi 7 Bluetooth 5.4 |
その他 | Dolby Atmos 対応スピーカー 指紋センサ キーボードバックライト 日本語配列 | DTS Audio スピーカー MIL-STD 810H [OP] キーボードバックライト [OP] 指紋センサ |
サイズ | 314.4 × 219.1 × 15.8mm | 313 × 232 × 15.5 mm |
重さ | 1.26kg | 1.36kg |
ディスプレイとタッチ
Lenovo モデルは 14 インチ WUXGA (1.920 x 1,200) の OLED (有機EL) ディスプレイを採用しています。タッチ対応は型番により異なりますが、日本国内ではタッチ対応モデルのみが販売されています。
一方、Acer モデルは 14 インチで 60Hz リフレッシュレートの WQXGA+ (2,880 x 1,800) または 120Hz リフレッシュレートの WUXGA (1,920 x 1,200) の解像度を選択できる IPS タッチスクリーンを搭載しています。
Lenovo の OLED は色鮮やかで視野角も広く、クリエイティブな作業にも対応できるレベルですが、屋外などでは反射が目立ちます。
Acer モデルも RGB 100% の色域をサポートし、同様にグレア液晶で反射は目立ちます。しかし、USI 2.0 規格のスタイラスペンをサポートしています。
RAM とストレージ
両モデルともに大容量のメモリとストレージを備えています。
Lenovo モデルは 12GB RAM / 128GB UFS 3.1 ストレージ、または 16GB RAM / 256GB UFS 4.0 ストレージが用意されています。
Acer モデルも 12GB または 16GB の LPDDR5X RAM を搭載し、ストレージは 128GB または 256GB の UFS 4.0 となっていますが、128GB も UFS 4.0 であるかは現時点で確認ができていません。
バッテリー駆動時間
両モデルともに、最大 17 時間のバッテリー駆動時間を公称しています。
Lenovo モデルは筆者の使い方で 10 時間前後 (一般的なモデルの倍近い駆動時間) が期待できました。出張やカフェでの使用でも、タブを 15 個前後開いた状態で 4 時間使用した段階でバッテリー残量が 70% 前後を維持しました。
Acer のモデルもほぼ同等になると予想されますが、ファン搭載であることや高解像度モデルを選択した場合には、もしかしたら Lenovo に比べて少し短い可能性があります。
とはいえ、Chromebook の中でも比較的長時間駆動になることは間違いないため、どちらを選んでも一般的なモデルよりも長持ちすることは間違いないと思います。
デザインとその他
Lenovo Chromebook Plus Gen 10 は、クラムシェルタイプのファンレス設計で静音性に優れている点が特長です。高負荷時の発熱はありますが、通常の利用では問題になることはほとんどありません。しかし、長時間のオンライン会議などに利用する場合には不安が残ります。


なお、Lenovo モデルは天板が金属製で底面は樹脂素材ですが、タッチ対応モデルでも約 1.25kg と軽量です。
一方、Acer Chromebook Plus Spin 514 はコンバーチブルタイプで、冷却ファンも搭載しています。これにより、クラウドゲームサービスなどでの長時間駆動やオンライン会議、Linux アプリの利用など持続的に高い負荷がかかる作業においてもパフォーマンスが安定しやすいというメリットがあります。


Acer Chromebook Plus Spin 514 の重量は わずかに重い 1.36kg です。また、Acer モデルはコンバーチブルデザインにもかかわらず電源ボタンがキーボード側にあるため、タブレットモードでの使い勝手は不便に感じる点です。
なお、細かい違いで言えば、USB-C ポートの位置が Lenovo は左右に一つずつ、Acer は左側に 2 つとなっています。


取り回しのしやすさで言えば USB-C が左右に一つずつある Lenovo だと思いますが、USB-A ポートは 1 つしかないため、周辺機器の数によってはハブが必須になるかもしれません。
結論:あなたに最適な Kompanio Ultra 搭載機はどっち?
これまでの比較を踏まえ、それぞれのモデルがどのようなユーザーにおすすめかをまとめます。
Lenovo Chromebook Plus Gen 10 はこんな人におすすめ
- 画質を最優先する人: 色鮮やかな OLED ディスプレイは、動画視聴や写真編集で大きな満足感が得られます。
- 軽さと静音性を重視する人: ファンレス設計と 1.25kg の軽量ボディは、静かな場所での作業や頻繁な持ち運びに最適です。
- シンプルなクラムシェルノート PC を求める人: スタイリッシュなデザインと優れた基本性能で、純粋なノート PC としての完成度を重視する場合におすすめです。
おそらく、ほとんどのユーザーにとっておすすめな選択肢は Lenovo Chromebook Plus Gen 10 になると思います。
Acer Chromebook Plus Spin 514 はこんな人におすすめ
- 多様な使い方をしたい人: タブレットやテントモードに対応するコンバーチブル(2-in-1)機構は、プレゼンや動画鑑賞など、1 台で様々なシーンに対応したい場合に活躍します。
- 持続的な高負荷作業を行う人: クラウドゲームやオンライン会議など長時間にわたり高いパフォーマンスを必要とする作業では、ファンによる冷却機構が安定した動作を支えます。とくにビジネス用途では安心です。
- アクティブに持ち運ぶ人: MIL-STD-810H 準拠の耐久性は、通学や屋外への持ち出しなど、タフな環境での使用が想定される場合に安心感があります。
- カスタマイズの選択肢が多め: Lenovo のモデルに比べて、カスタマイズできる項目が少し多くなっています。おそらく法人ユーザー向けに意図的なオプションとなっていますが、価格を微調整できる点はメリットです。
どちらかといえば、ビジネス用途で使うユーザー向けのモデルという印象です。もしくは、コンバーチブルタイプである必要、USI ペンを使いたいユーザーにはおすすめできる 1 台です。
まとめ
MediaTek Kompanio Ultra を搭載した Acer と Lenovo の Chromebook Plus は、どちらも高いパフォーマンスと優れたバッテリー駆動時間を実現した魅力的なモデルです。
全体的な使い勝手という点では、Lenovo Chromebook Plus Gen 10 が有力な選択肢になります。一方、タブレットとしても使える柔軟性や、高負荷時でも安定したパフォーマンスを求めるなら Acer Chromebook Plus Spin 514 が最適です。
どちらのモデルも検討する価値がありますので、ご自身の使い方や最も重視するポイントを明確にすることで、あなたにぴったりの 1 台が見つかるはずです。
とはいえ、記事執筆時点では Acer Chromebook Plus Spin 514 は日本での発売が未定のため、Lenovo 一択になってしまいます。しかし、実際の使用感で言えば、ほとんどのユーザーにとって Lenovo Chromebook Plus Gen 10 はベストなモデルだと思います。
