今回の記事では、日本HPがビジネス向けにリリースしている Copilot キーを搭載した Windows ノートパソコン「HP EliteBook 830 G11」の実機レビューをお届けします。なお、レビューにあたり実機の貸出を受けています。
「HP EliteBook 830 G11」はアスペクト比16:10を採用した13.3インチディスプレイと Intel Core Ultra Evo エディションプロセッサ(vPro対応)を搭載し、強力な AI 性能と Poly による音響技術を備えたハイパフォーマンスな Windows ノートPCです。本体は MIL-STD 810H に準拠した19項目のテスト以外に独自のテストをクリアした堅牢性を備え、独自のセキュリティ機能や会議向けのカメラやマイク機能なども搭載しており、持ち運ぶ機会の多いビジネスユーザーでも安心の仕様となっています。
まず、今回レビューしている「HP EliteBook 830 G11」の実機のスペックは次のとおりです。
スペック
OS | Windows 11 Pro |
---|---|
ディスプレイ | 13.3インチ 広視野角 1,920×1,200 ノングレア |
CPU | Intel Core Ultra 5 135U |
RAM | 16GB |
内部ストレージ | 256GB M.2 PCIe NVMe |
外部ストレージ | – |
ポート | USB-C (Thunderbolt 4) ×2 USB-A ×2 HDMI ×1 3.5mm Audio jack |
Webカメラ | 5MP (1080p) スライドカバー IR カメラ(Windows Hello) |
ネットワーク | Wi-Fi 6E Bluetooth 5.3 |
バッテリー | 最大16時間(56WHr) 急速充電対応(30分で最大50%) |
その他 | 指紋センサ MIL-STD 810H キーボードバックライト |
サイズ | 300.1×215.05×19.2mm |
重さ | 1.29kg |
今回のレビューでは vPro 対応ベースモデルとなる Core Ultra 5 135U と 8GBRAM、256GBストレージを搭載した機種を使用しています。最上位では Core Ultra 7 165U と 16GBRAM、512GB ストレージを選択することができます。
ベースモデルが16GBRAMからスタートするため、ビジネスにおける基本的な使い方であればほとんどの作業を行うことができ、選択肢が多すぎないこともメリットになります。
デザイン
「HP EliteBook 830 G11」の本体はマグネシウムを採用しており、軽さを犠牲にせずしっかりとしたボディで剛性も高く、例えば満員電車での通勤や移動が多いときにぶつけたり落としたりした場合でもリスクを抑えることができます。
見た目はビジネスらしいシンプルな見た目ですが、チープさはなく高級感があって落ち着いた雰囲気のためどんなシーンで使っても安心なモデルです。
本体の左側面には HDMI ポート、USB-A ポート、Thunderbolt 4 規格の USB-C ポートが2つあります。右側面には 3.5mm オーディオジャック、USB-A ポート、ケンジントンロックがあり、13.3インチモデルとしては充実したポートだと思います。
とくに USB-C ポートが Thunderbolt 4 規格を採用しているため高速かつ安定したデータ転送ができ、ドッキングステーションなどとの連携も強力です。HDMI ポートや USB-A も2つ備わっている点はプロジェクターや業務用ヘッドセットなどの周辺機器に接続することがあるビジネスユーザーには嬉しいポイントです。
ただ、いちユーザーとしては HDMI ポートと USB-C ポートが2つとも左側面に偏っていることで、デスクの配置や場所によっては置き方を工夫する必要になるため、できれば USB-C ポートは一つ右側にあるほうがより便利だったと思います。
キーボードとタッチパッド
キーボードは日本語配列(JIS配列)となっていて、バックライトキーボードが搭載されています。キーのレイアウトは比較的素直な日本語配列で、エンターキーの幅や各キーのサイズもしっかりと取られているため、扱いやすいと思います。カーソルキーも逆T字を採用しているためブラインドでも誤タイプしにくい点も嬉しいですね。
キーの打鍵感はしっとり目の反発が少し強いタイプで、しっかりと押す感じになります。キーストロークは公称で1.5~1.7mmとなっています。長時間の文字入力でも負担には感ず、文章作成がメインのユーザーでも問題はありません。
なお、ファンクションキー部分のマイクミュートとスピーカーミュートボタンに通知LEDがあるため、オンオフの状態がわかりやすいです(会議中だけでなくオフなら常時オレンジ色で点灯する)。
また、この「HP EliteBook 830 G11」には Microsoft Copilot キーが搭載されており、これを押すことで Copilot を自由に呼び出すことができます。
現在、Copilot の仕様変更でプログレッシブウェブアプリ(PWA)として動作するようになったことで、Copilot から Windows の設定の変更やアプリの操作ができなくなってしまいましたが、仕事のなかで AI を使った質問、データやアイデアの整理などには引き続き利用できるため、AI をうまく取り入れているユーザーにはかなり便利なキーです。
キーボードに関しては特に不満はありませんでしたが、カスタマイズオプションで英語配列も選べるとさらに良かったかもしれません。
タッチパッドについては大きめのサイズで、反応も滑りも良いためスムーズに操作することができ、こちらも特に不満はありません。パームレストの右側には指紋センサが搭載されており、Windows Hello 対応の IR カメラとともにデバイスのセキュリティを高めてくれることも良いところです。
ディスプレイ
続いてディスプレイですが、「HP EliteBook 830 G11」にはアスペクト比16:10の1920×1200ディスプレイが搭載されており、一般的な16:9のタイプよりも縦の表示領域がわずかに広くなっています。
ドキュメントやスプレッドシートで見ればわずか数行のことですが、コンパクトなデバイスでもできる限り広く使いたいユーザーには16:10のディスプレイモデルはおすすめです。また、反射防止のためのノングレアタイプで長時間画面を見ていても目が疲れづらく、広視野角タイプで色も不自然ではありません。
厳密な色味を求めるようなデザインなどには向きませんが、資料作りなどで画像や写真をざっと確認して調整するといった作業であれば十分に使えます。
なお、ヒンジが180度まで開くタイプなのでディスプレイをほぼフラットな状態まで持っていくことができます。相手に画面を共有したい場合などに便利ですが、「HP EliteBook 830 G11」のディスプレイはどの構成もタッチ非対応となっています。
パフォーマンス
実際に「HP EliteBook 830 G11」を使ってみたパフォーマンスについてです。まずは実機で測定したベンチマークを紹介します。
ベンチマークソフト | スコア |
---|---|
Geekbench Single | 2,134 |
Geekbench Multi | 9,489 |
Geekbench OpenCL | 17,016 |
Geekbench Vulkan | 17,604 |
PCMARK | 5,146 |
Passmark | 4,156 |
FF14 (最高品質) | 2,693 (設定変更を推奨) |
FF14 (高品質 ノートPC 1920×1080) | 4,410 (普通) |
FF14 (標準品質 ノートPC 1920×1080) | 4,658 (普通) |
BlueProtocol (最高画質 1920×1200) | 2,511 (動作困難) |
BlueProtocol (高画質 1920×1200) | 3,639 (動作困難) |
BlueProtocol (中画質 1920×1200) | 4,011 (設定変更が必要) |
BlueProtocol (低画質 1920×1200) | 7,747 (やや快適) |
Octane v2 Plus Single | 76,834 |
Octane v2 Plus Multi | 617,175 |
JetStream2 | 278 |
Speedometer 3 | 19.8 |
今回レビューしている「HP EliteBook 830 G11」は、vPro 対応の Core Ultra 5 135U と 16GBRAM を搭載しています。グラフィックス性能を重視する作業でない限りはビジネスにおける性能としては十分なレベルです。
ブラウザベースの作業やローカルで Microsoft 365 (Word、Excel、PowerPoint)を使った作業、VS Code などを使ったプログラミング、Lightroom や Photoshop を使った簡単な RAW 写真・画像編集などであればほぼ問題なくこなすことができます。
実用上で性能面に関して気になる点は特になく、例えばオンライン会議で画面共有をしながら複数のファイルを開いていても動作はスムーズです。持ち運びがメインで出先でのオンライン会議参加が多いユーザーでも安心して使えるスペックです。また、NPU を搭載している Core Ultra 5 なので Windows スタジオエフェクトを使用することで会議中の背景をぼかしやオートフレーム、アイコンタクトなどを NPU に割り振ることができます
EliteBook 830 G11 には 5MP のWebカメラが搭載されており、周囲の状況に応じて最適な映像に調整する機能やオートフレーム機能が搭載されているため外付けカメラを用意する必要がほぼないというメリットもあります。また、複数のカメラを接続できるマルチカメラ機能やどのカメラがユーザーの顔を向いているかを認識してカメラを選択するオートカメラセレクトも搭載されているため、トレーニングやブレストで手元を写したい場合などにも便利です。
マイクにも AI によるノイズフィルターを搭載し、PCの3m以内であれば自動的にマイクの音を調整する機能も備わっています。さらに poly によるオーディオ調整により、13.3インチと小さな筐体で法人向けですが音は良く、会議でも相手の声をしっかりと聴くことができます。そのため、職場などの整った環境だけでなく、出先でもオンライン会議に参加しても高いクオリティで通話ができるため、外回りや出張の多いビジネスユーザーにはおすすめできるモデルです。
この他にも HP EliteBook 830 G11 では指紋センサと Windows Hello 顔認証という物理的なセキュリティ機能だけでなく、HP Endpoint Security Controller というHP独自のセキュリティ機能や HP WOLF SECURITY によるマルウェア対策が組み込まれているため、BIOS レベルやソフトウェアから高度な保護機能を提供してくれるメリットもあります。
最後にバッテリー駆動時間についてですが、私の標準的な使用(Chromeタブ30~40個程度、画面明るさ60%、バランスモード、時々ローカルで Notion や VS Code、Lightroomなどを動かす)で1時間あたり15~20%のバッテリー消費でした。ほどよく使えばバランスモードでも5時間は間違いなく持つため、Intel 搭載の Windows ノートパソコンとして見ればバッテリーは持つ方だと思います。
使い方次第ですが、最小限のブラウザ作業やコミュニケーション、文章作成などであればトップクラスの電源効率に切り替えることでもう少しバッテリー駆動時間を延ばすこともできます。作業次第ですが日中の業務をある程度こなせ、1日外に出る場合でも安心して持ち運ぶことができるため、外回りや出張で使うユーザーには良い選択肢になります。
まとめ
今回の記事ではビジネスユーザー向けの「HP EliteBook 830 G11」を試してみましたが、パフォーマンスも高くバッテリー駆動時間も大きな不満のない、全体的にバランスの取れた Windows ノートパソコンです。
なお、ビジネスユーザー向けですが個人ユーザーでも日本HP公式オンラインストアで購入することができます。構成と価格については次のとおりです。
- Ultra 5 125U / 16GBRAM / 256GB : 307,780円
- Ultra 5 135U vPro / 16GBRAM / 256GB : 329,780円
- Ultra 7 155U / 16GBRAM / 512GB : 340,780円
- Ultra 7 165U vPro / 16GBRAM /512GB : 362,780円
堅牢性やサイズ感、パフォーマンスのバランスは外に持ち運ぶユーザーには良い選択肢になるため、出先での作業が多いユーザーや出張で Windows ノートPC が必要なユーザーはぜひ HP EliteBook 830 G11 を検討してみてください。
なお、記事執筆時点では vPro ではない Ultra 5 と Ultra 7 のモデルが40%オフとなっており、それぞれ183,480円と205,480円で購入することができますので、とてもおすすめです。