2021年のCESで発表された「ASUS Chromebook CX9」は、インテル第11世代Tiger Lakeプロセッサを搭載したハイエンドかつ堅牢・軽量なモデルとして期待していた1台です。しかし半導体不足の影響などによって海外でも発売が遅れに遅れ、時折入荷してもすぐ売り切れてしまう、ある意味でレアなモデルとなっていました。
昨年末頃から海外では少しずつ在庫が復活してきた中で、ASUS JAPANが2022年2月についに「ASUS Chromebook CX9(CX9400CEA-HU0175)」の国内投入を発表しました。
現在、国内ではCore i5-1135G7搭載モデルがAmazonにて税込価格は109,308円(記事執筆時点)で販売されています。今回は実機をお借りすることができましたので、「ASUS Chromebook CX9(CX9400CEA-HU0175)」のCore i5モデルの実機レビューをしていきます。
実機レビュー
まずは「ASUS Chromebook CX9(CX9400CEA-HU0175)」のスペックからご紹介。
スペック
ディスプレイ | 14インチ 広視野角 1,920 × 1,080 sRGB 100% タッチスクリーン |
CPU | Core i5-1135G7 |
RAM | 8GB |
内部ストレージ | 256GB SSD |
外部ストレージ | microSD |
Webカメラ | 720pHD プライバシーシャッター |
ネットワーク | Bluetooth 5.1 Wi-Fi 6 |
ポート | USB-C(Thunderbolt 4) ×2 USB-A ×1 HDMI ×1 |
バッテリー | 12.7時間 |
その他 | 日本語配列 バックライトキーボード 指紋センサ NumberPad MIL-STD 810H USIスタイラスサポート(別売) |
サイズ | 322.2mm×204.9mm×18.4mm |
重さ(実測) | 約1.18kg(1,184g) |
自動更新ポリシー | 2029年6月 |
ヒンジが360度回転するフリップタイプではなく、最大180度まで開くクラムシェルタイプのChromebookとなっています。
やや横長デザインの14インチディスプレイで解像度は1920×1080(フルHD)、性能はインテル第11世代Core i5-1135G7と8GBRAM、256GB SSDを採用したハイスペックモデルです。
機能面ではタッチスクリーンにUSIペンサポート、指紋センサ、MIL-STD 810Hに準拠した堅牢性、そしてトラックパッド部分にテンキーを表示できるNumberPadも搭載されています。
この他にはポート類がUSB-C(Thunderbolt 4)が2つ、AとHDMIが1つずつ、microSDカードスロットとイヤホンジャックと充実しているため、普段使いやビジネスでも使いやすくなっています。
ディスプレイ
まずディスプレイですが、14インチのクラムシェルタイプでフルHD(1920×1080)解像度となっていて、タッチスクリーンとUSIペンに対応しています。
上左右のベゼルは細めで画面占有率は約92%、グレア液晶で色味などもはっきりとしているため、日常使いやビジネス、学校でも不満は出ないと思います。
またディスプレイの上部フレームにあるWebカメラには、プライバシーシャッターが付属していますので、意図せず映ってしまうことも未然に防ぐことができます。
使っていて不満というほどではありませんが、個人的にはこのサイズ感とスペックであれば、16:10や3:2のディスプレイを採用しても良かったように感じました。
キーボード&トラックパッド
まずはキーボードですが、打鍵感は少し固めで反発力を感じますが、しっかりと入力することができるためハードタイプをする人でも安心できる感じです。
日本語配列ではありますが、キー配置は英語配列を無理やり日本語に変えたようなもので、エンター周りがかなり窮屈になっている点はいただけません。
また英数・かなの独立キーもスペースど左altキーを削って追加されているせいか、位置がズレているような感じがして、慣れるまで時間がかかります。せっかくのハイエンドモデルですので、このあたりはちゃんと作って欲しかったですね。
トラックパッドは十分なサイズですが、一般的なモデルと比べて横長となっているのが特長です。触った感じはガラスのように滑らかでスムーズですが、トラックパッドに触れたときに位置がズレるというか反応が遅れたように感じることがあります。とくに押し込んでクリックしたときに位置がズレることがあるため、押し込みでクリックを使う人には地味にストレスだと思います。
そして「ASUS Chromebook CX9」の最大のウリといえば、トラックパッドにテンキーを表示することができるNumberpadが搭載されています。
例えば、機会は少ないけどテンキーが必要になることがある人や、持ち運び時に外部テンキーを持ち運びたくない人などには便利な機能だと思います。
ただ、Numberpadとトラックパッドの機能が共存する感じになるため、タップで数字を入力できますが軽く触れてカーソルの位置がずれたり、テンキーを表示したままトラックパッドとして操作すると、次に触れたときにはすぐ数字入力ができないなど、使い勝手が微妙に悪いです。
軽く使う程度なら問題ありませんが、実務でガッツリと使う場合には素直に外付けのテンキー(USB-Aポートもあるので)などを使うことをおすすめします。
外観
「ASUS Chromebook CX9」のボディはアルミニウム合金を採用、MIL-STD-810Hに準拠した堅牢性と120cmの高さからの落下テストなどをクリアしていおり、かなりしっかりとした作りです。
それでいて重さはわずか1.18kgと軽量なため、持ち運びを前提に考えている人にとっては有力な選択肢になると思います。特にビジネスユーザーであれば、ポート類も充実していているためおすすめです。
ただUSB-CポートとHDMIが左側に集中していますので、デスク上などで配置に悩まないようUSB-Cポートは左右にあったほうが嬉しいかなと思いましたが、好みによりますので気にしない人には問題ないでしょう。
また「ASUS Chromebook CX9」はエルゴリフトを採用していて、天板を開くとキーボード側に傾斜がつくため、文字入力はしやすいと思います。軽く持ち上がるというよりもしっかりと押し上げる感じになるため角度もちょうどよく、私としては好みでした。
また天板は180度のほぼフラットまで開くことができ、人に画面を見せたりするときにも便利です。しかし完全にフラットになるわけではなく、微妙に浮いてしまうのが気になりました。
この状態で画面をタッチしたりペンで筆記しようと思ってもパタパタとシーソー状態になってしまうのでちょっと残念。せっかくのハイエンド&ハイプライスモデルなので、このあたりはしっかりと考えてほしかった。
あと余談ですが、マグネットタイプのUSIペンだと本体手前の側面部分にくっつけることができたので、Chromebookとペンを持ち運ぶときには便利かもしれません。
気になる点もありますが、クラムシェルだけどフラットに近いところまで広げられてUSIペンが使えるハイエンドモデルというのは貴重なモデルです。
性能面
「ASUS Chromebook CX9」はインテル第11世代Core i5-1135G7と8GBRAMを搭載しているだけあって、電源接続時でもバッテリー駆動時でも十分快適です。私が普段から行っているクラウドベースの作業も重さを感じることなくこなせますし、CrostiniでVS Codeを利用したPythonの簡単なコーディングも不便なく動きます。
実機でいつものベンチマークを測定していますが、Geekbenchだけは途中で落ちてしまうため測定できていません。
- Octane: 54,017(53,933)
- Speedometer: 175(175)
- JetStream2: 176.415(137.309)
カッコ内はバッテリー駆動時の結果ですが、インテルCPUはAMDのRyzenシリーズとは違い大きな性能差は見られませんので、家でも外でも安定した性能を発揮します。
バッテリー駆動時間に関しても、私の普段の作業を行って1時間あたり10〜12%程度の消費でしたので、一般的なクラウドベースの作業であれば7時間以上持つことが期待できます。そのため、日常的に持ち運ぶことはもちろん、出張などで長時間充電できない可能性がある場合は強力なChromebookだと思います。
ファンも基本的に静かで、充電中やYouTubeなど動画閲覧中といった負荷がかかる作業でなければ煩く感じませんし、熱もそこまで気になりません。ただ、膝上で使っているときに給排気口を塞いでしまうと熱はそれなりに感じるので注意が必要です。
最後にスピーカーについてですが、Chromebook内蔵のスピーカーとしてはそこまで悪くなく、か細い音とか薄い音ではなくしっかりと聞こえます。とは言えスピーカーが上向きではないこともあって音の広がりはありません。作業中に音楽を流したり、動画を見たりする程度であれば特に困ることはないと思います。
総評
ここまで「ASUS Chromebook CX9(CX9400CEA-HU0175)」について諸々と書いてきましたが、決して悪いデバイスではなく、持ち運びをメインに考えるユーザーにはオススメのChromebookだと思います。14インチクラスでMIL-STD-810H準拠の堅牢性、長時間バッテリー、ポートも十分、USIペン対応、ハイスペックかつ1.18kgという軽量なChromebookは限られていますので、その時点でピンと来る人にも悪くはありません。
ただ、キーの配置やトラックパッドの何とも言えない感じ、NumberPadの使いにくさ、14インチの幅広で微妙なサイズ感、180度開いてもフラットにならない…といった細かいところの使い勝手が良くないことも事実で、これらの問題点を気にしないユーザーあればという補足が付きます。
また価格が10万円を超えている点も非常に悩ましく、例えば同じ14インチで同じCPUを採用した「HP Chromebook x360 14c」などはセールなどで7〜8万円台まで値下がりすることもありますし、近い価格帯ではLTEサポートした「HP Chromebook x360 13c」などもあるため、価格と性能だけで比べるとやや厳しい気がします(それぞれMILスペック準拠や重さなどの細かい違いはあります)。
さらに「ASUS Chromebook CX9」のウリとなるNumberPadも使い手(使うシーン)を選ぶうえに使いやすいとは言い切れないため、コレがあるからオススメ…とは正直なり得ません。個人的にはNumberPadを削って価格を抑えた方が良かったのでは?と感じる始末。
しかし、NumberPadは使いづらいだけであって使えないわけではありませんので、ビジネスなどで外でもテンキーを使う機会のあり、軽量なハイエンドChromebookを求めていたユーザーであれば検討する価値はあります。
使った印象では、どちらかと言うと一般向けモデルというより企業向け、主にビジネスで利用する人向けのモデルとして考えるほうが良いです。あとは他のメリットとデメリット、そして価格を天秤にかけてみて悪くないと思えば、ぜひ手にしてみてください。