Google は 2025 年 12 月 3 日(現地時間)、Google Workspace 内のさまざまな作業を自動化できる「AI エージェント」をコーディング不要で作成・管理できる新しいプラットフォーム「Google Workspace Studio」の一般提供を開始しました。
同サービスは当初 Workspace Flow としてリリースされ、数か月前から段階的に展開されていましたが、今回のリリースにより誰でも利用できるようになり、業務効率化の取り組みをさらに進められるようになります。
筆者の管理する Google Workspace アカウントでも早い段階で利用できるようになっていましたが、現時点ではインターフェースが英語のみである点に注意してください。
Google Workspace Studio とは何か
Google Workspace Studio は、ドキュメント整理やメール対応だけでなく、優先順位付け、承認フロー、サポート課題のトリアージなど、これまで人が判断していたワークフローまで自動化できる AI エージェントを作成できるプラットフォームです。
Gemini 3 を基盤モデルとして採用しているため、推論性能とマルチモーダル理解に優れ、複雑な業務にも応じたアクションを生成できます。
たとえば「毎週金曜日にプロジェクトのトラッカーを更新するようリマインドしてほしい」といった自然言語による指示だけで、エージェントを自動生成できます。
Gmail やドライブ、Google カレンダーなどの Workspace アプリと深く連携しているため、必要な情報を自動で抽出し、状況に応じたアクションを実行できる点が特長です。
なお、インターフェースは英語ですが、エージェント作成の指示(プロンプト)は日本語でも利用できます。
テンプレートで即日利用が可能に
Workspace Studio には、最初から利用できるテンプレートライブラリが用意されています。
「未読メールの要約」、「アクションアイテムのラベル付け」、「会議前のブリーフィング作成」など、よくある業務の自動化をすぐに試せるようになっており、AI と業務自動化を初めて導入する組織でも利用しやすい構成になっています。

作成したエージェントは Google ドキュメントなどと同じようにチーム内で共有・複製できるため、部署間で統一したワークフローを展開することも簡単です。
Webhook・Apps Script による拡張性
Workspace Studio は Google Workspace 内に閉じた自動化だけでなく、外部サービスとの連携にも対応します。
Asana、Jira、Mailchimp、Salesforce などの主要な SaaS に接続できるほか、Webhook を利用すれば Slack や Teams、Discord への通知など、社内外のさまざまなサービスと統合が可能です。

さらに Apps Script を利用したカスタムステップにも対応しており、社内独自ツールや Vertex AI、あるいは他の ADK エージェントと組み合わせた高度なワークフローも構築できます。
実際の導入事例:Kärcher(ケルヒャー)
清掃機器メーカーとして知られる Kärcher は、Google Cloud パートナーの Zoi とともに Workspace Studio を早期導入し、新機能のアイデア評価プロセスでその効果を検証しています。
従来数時間かかっていたドラフト作成・統合作業をわずか 2 分に短縮し、作成時間を 90% 削減した としています。
AI を業務に取り入れるメリットが具体的に示された事例であり、特に SMB や教育機関でも有用性が高いと考えられます。
展開スケジュールと対象プラン
Workspace Studio は以下のスケジュールで展開されます。
- 即時リリースドメイン: 2025 年 12 月 3 日から展開開始(管理者設定とユーザーアクセスが同時に適用)
- 計画的リリースドメイン: 管理者設定は 2025 年 12 月 3 日から順次、 エンドユーザーの利用開始は 2026 年 1 月 5 日 から。
Workspace Studio は以下の Google Workspace エディションで利用できます。
- Business: Starter, Standard, Plus
- Enterprise: Starter, Standard, Plus
- Education: Fundamentals, Standard, Plus
- アドオン: Google AI Pro for Education、Google AI Ultra for Business
利用可能になれば、 https://studio.workspace.google.com/ にアクセスして利用できます。
Business Starter や Education Fundamentals などのエントリープランでも利用できる点は、特に個人事業主や中小企業、教育機関にとって大きなメリットです。
一方で、18 歳未満のユーザーは、Gemini AI を利用したエージェント作成や AI ステップを利用できない制限があります。
また、利用制限は 2026 年 1 月に新しい基準が発表される予定で、現在はプロモーションとして高めの上限が適用されています。
管理者向けの設定と今後の拡張
Workspace Studio はコアサービスとして提供されるため、管理者は OU(組織部門)単位やグループ単位で利用可否を制御できます。新製品リリースの設定によりデフォルトのオン / オフが変わる点も従来の Workspace の仕様に準じています。
今後数週間のうちに、外部共有の強化、組織外へのメール送信、Webhook のさらなる拡張などが順次追加される予定で、これらは管理者がデータフローを監査・制御できるよう設計されています。
まとめ
Google Workspace Studio の一般提供開始により、Google Workspace 内の業務自動化がさらに便利になります。
自然言語だけで AI エージェントを作成できる点や、テンプレートや外部連携による拡張性など、多様な組織で幅広く活用できる仕組みが整っており、GAS やコードに頼らなくても手軽にやりたいことを実現できるようになることが期待できます。
2026 年 1 月には利用制限の更新も予定されているため、管理者やヘビーユーザーは注意が必要です。
筆者の場合、例えば従来 GAS を使う必要のあった 「Google フォームへのお問い合わせ内容を Google チャットに通知する」や、「チャットで特定のワードを含む内容を別のチャットで通知」といったフローを Workspace Studio に置き換えています。


