Google Pixel 10 の新 GPU、ゲームエミュレーター性能テストで前モデルに劣る結果が報告

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Google Pixel 9 Pro と Google Pixel 10 Pro のリアパネルを並べた写真

Google の最新フラッグシップモデル「Google Pixel 10」シリーズに搭載されている Tensor G5 のグラフィックスチップには、長年のパートナーであった Arm の Mali GPU ではなく、Imagination Technologies の DXT-48-1536 グラフィックスユニットが採用されました。

この新 GPU の採用により、Pixel 10 シリーズのグラフィックス性能に関する懸念が報じられており、例えば古い GPU ドライバが原因といったことや、熱と電力管理による制限が加えられているといった内容です。

こうした背景を踏まえ、Android Authority が Tensor G5 の GPU 性能を詳細に検証した結果を公開しました。

この結果によれば、一般的な Android ゲームでは問題が見られなかったものの、特にゲームエミュレーターのパフォーマンスにおいて、前モデルである Pixel 9 Pro XL を下回ることが明らかになりました。

目次

Pixel 10 Pro XL と Pixel 9 Pro XL の性能比較テスト

今回のテストでは、新しい Pixel 10 Pro XL と、エミュレーター性能で定評のあった昨年の Pixel 9 Pro XL が比較されました。テストには、Wii / GameCube エミュレーターの「Dolphin」と、PlayStation 2 エミュレーターの「NetherSX2」が使用されています。

レンダリング API は、多くのエミュレーターやモバイルゲームで標準的に利用される OpenGL を中心に検証が行われました。

Dolphin エミュレーター: 早期の性能低下が明らかに

まず、Dolphin エミュレーターで『マリオカート Wii』をプレイしたテストでは、Pixel 10 Pro XL のパフォーマンスに課題が見られました。

テスト開始直後は 60fps を維持していましたが、レースが進むにつれてフレームレートが 50fps、さらには 40fps を下回るほどに低下しました。エミュレーターではフレームレートがゲームの速度に直結するため、これは明確な動作遅延を意味します。

一方で、Pixel 9 Pro XL はレース序盤に多少の不安定さがあるものの、ほぼ一貫して 60fps を維持し、4 レース目でも 40〜50fps を保ちました。

この性能差の主な要因は、サーマルスロットリング(熱による性能制御)の挙動にあります。

Pixel 10 Pro XL は内部温度が約 35℃ に達した時点で GPU クロックが 1.1GHz から 630MHz へ急低下したのに対し、対照的に Pixel 9 Pro XL は 38℃ に達するまで高クロックを維持し、低下幅も 900MHz から 750MHz と小さく抑えられていました。

また、比較的負荷の低い GameCube タイトル『F-ZERO GX』でも同様の傾向が見られ、Pixel 10 Pro XL は 40 〜 60fps の間で変動したものの、Pixel 9 Pro XL はほぼ安定して 60fps を維持しました。

NetherSX2(PS2)エミュレーター: CPU 負荷の高い場面でも苦戦

PlayStation 2 のエミュレーションは CPU 負荷が高く、Tensor G5 の改良された CPU 構成により有利に働くと予想されました。しかし、NetherSX2 で『Need for Speed: Most Wanted』を実行したテストでは、逆の結果となっています。

Pixel 10 Pro XL はプレイ開始からわずか 3 分以内にフレームレートが 30fps を下回り、スローモーションのような動作になったとしています。ここでも内部温度が 35℃ に達した時点で CPU クロックが低下し、描画性能も同時に落ち込む結果となりました。

一方の Pixel 9 Pro XL は、より長時間にわたって安定したパフォーマンスを維持し、体感的にも滑らかな動作を実現しています。

Vulkan API でも性能は改善せず

最新のグラフィックス API「Vulkan」を使用すれば、CPU 負荷が軽減されて性能が向上することが期待されたものの、Android Authority のテスト結果では、Pixel 10 Pro XL において Vulkan への切り替えは逆効果となるケースも確認されています。

『マリオカート Wii』や『Need for Speed: Most Wanted』では OpenGL よりも低いフレームレートとなり、場合によっては 25fps 程度まで低下しました。『F-ZERO GX』では若干の改善が見られたものの、Pixel 9 Pro XL の安定性には遠く及びませんでした。

一方で、Pixel 9 Pro XL ではすべてのタイトルで Vulkan による改善が確認されており、GPU ドライバや API 最適化の成熟度に大きな差があることが示されました。

Tensor G5 の GPU 変更はリスクを伴う決断か

Android Authority の検証結果によると、Pixel 10 シリーズに搭載された Imagination Technologies 製 GPU は、特に高度なゲームエミュレーション環境で前モデルの Arm Mali GPU よりも劣るパフォーマンスを示しています。

Tensor G5 の CPU 性能は確かに向上していますが、GPU のボトルネックと早期のスロットリングにより、総合的な処理能力が制限されている状況です。

これについては、前回の検証でも報じられたように熱と電力管理による制限がパフォーマンスに影響している可能性があります。

さらに Vulkan API での動作不安定さから、ドライバの最適化にも課題が残ることが示唆されます。

コスト削減が背景にあるとみられる GPU ベンダー変更は、少なくとも現段階では性能が低下する傾向を示しており、Tensor プロジェクトが依然として試行錯誤の段階にあることを示す結果と言えます。

今後のアップデートで改善される可能性もありますが、いずれにしても、高性能なエミュレーターを目的とするユーザーにとっては、Pixel 10 シリーズの購入は慎重な判断が求められます。

ただし、日常的なゲームや一般的な用途では、Pixel 10 シリーズは引き続き高い完成度を持つデバイスであることに変わりはありません。

出典:Android Authority

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著者情報

HelenTech の運営をしている 尾村 真英 です。これまでに 50台以上の Chromebook をレビュー しており、主に小規模事業者を対象に Chromebook や Google Workspace の導入・活用支援も行っています。
現在は、Chrome Enterprise 公式ユーザーコミュニティのモデレーターとしても活動中で、Professional ChromeOS Administrator 資格を保有しています。

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