Google Cloud は 2025 年 8 月 6 日、企業におけるデータの扱い方を AI によって根本から変革することを目指す、一連の新しいツールとプラットフォームを発表しました。
今回の発表では、データエンジニアやビジネスアナリストといった専門家一人ひとりに、パートナーとして機能する特化型の「AIデータエージェント」を提供し、これらのエージェントは、自然言語での指示に基づき、複雑なデータ処理の自動化、高度な分析、さらにはシステム移行の簡素化まで、これまで専門家が手作業で行っていた多くのタスクを自律的に実行します。
さらに、これらのエージェントが最大限の能力を発揮できるよう、リアルタイムデータと分析データをシームレスに統合し、AI の推論能力を組み込んだ新しい「AI ネイティブなデータ基盤」の強化も同時に発表されています。
役割別「AIデータエージェント」で専門業務を自動化
発表の目玉となるのが、様々な専門家を支援する「AI データエージェント」です。役割に応じた特化型のエージェントが、業務のパートナーとして機能します。
データエンジニア向け: パイプライン自動化と移行支援
- データ エンジニアリング エージェント (プレビュー版): BigQuery 上で動作し、「CSV を読み込んでクレンジングし、別テーブルと結合する」といった自然言語の指示だけで、複雑なデータパイプラインのワークフロー全体を自動生成します。
- Spanner 移行エージェント (プレビュー版): MySQL などのレガシーシステムからの移行を、AI を活用して大幅に簡素化します。

データサイエンティスト向け: 分析ワークフローの自律実行
- データ サイエンス エージェント (プレビュー版): Google Colab 上に搭載され、Gemini を活用して探索的データ分析、データクレンジング、機械学習による予測といった分析ワークフローを自律的に実行します。

ビジネスユーザー向け: 自然言語で高度な分析を実現
- コード インタープリタ (プレビュー版): 従来の対話型分析エージェントに搭載され、「顧客をコホートに分類して」といった複雑な分析要求にも対応します。自然言語の質問から Python コードを生成し、高度な分析を実行できます。

エージェントを支える「AIネイティブなデータ基盤」
インテリジェントなエージェントが効果的に機能するため、それを支えるデータ基盤も大幅に強化されました。
トランザクションと分析を統合し高速化
- Spanner カラム型エンジン (プレビュー版): ライブトランザクションデータに対する分析クエリを、従来の行ストア比で最大 200 倍高速化します。これにより、BigQuery から運用データを直接、より高速に分析することが可能になります。
ハルシネーションを防ぐための高度なメモリ機能
- AlloyDB AI の適応フィルタリング (プレビュー版): AI エージェントが正確な応答を生成するための RAG (Retrieval-Augmented Generation) 技術を支え、リアルタイムデータに対するベクター検索を自動で最適化します。
- BigQuery の自律的ベクター機能: 分析データから自動でベクターインデックスを作成し、エージェントのための長期的なセマンティックメモリを構築します。
SQLで AI の能力を直接活用
- AI Query Engine in BigQuery (プレビュー版): SQL 内で直接 AI (LLM) の能力を活用できるようにします。「顧客レビューで最も不満なものは?」といった非構造化データに対する主観的な質問への回答も可能になります。
独自のAIエコシステムを構築する開発者向けツール
Google Cloud は、開発者が独自の AI エージェントやアプリケーションを構築するためのオープンなプラットフォームも提供します。
- Gemini Data Agents API: 新しい「対話型分析 API (プレビュー版)」を公開し、開発者が自身のアプリケーションに Looker の自然言語処理やコード インタープリタ機能を直接統合できるようにします。
- Agent Development Kit (ADK): 企業の独自プロセスに特化したカスタムエージェントの構築を支援します。
まとめ
今回 Google Cloud が発表した一連の機能は、単なるツールのアップデートにとどまらず、企業のデータ活用を次のステージへと引き上げるものです。
これまで専門的な知識や多くの時間が必要だったデータパイプラインの構築や高度な分析が、AI エージェントとの対話を通じて、より迅速かつ簡単に行えるようになります。データエンジニアは反復的な作業から解放され、ビジネスユーザーは必要な時に自らデータに基づいた答えを得ることで、ビジネスの意思決定を加速させることが可能です。
最終的に、人間とAIエージェントがパートナーとして協働することで、企業はこれまで見過ごされてきたビジネスチャンスを発見し、競争力を高めることができます。Google Cloud は、この「エージェンティック時代」の基盤を提供することで、あらゆる組織がデータ主導のイノベーションを創出できるよう支援していくとしています。
出典: Google Cloud