Google が次期スマートフォン「Pixel 10」シリーズに搭載するプロセッサ「Tensor G5」について、これまでの Samsung ではなく、半導体製造の世界最大手である TSMC に製造を委託したことが明らかにされていますが、この動きは、長年 Google と協力関係にあった Samsung 社内で大きな「衝撃」として受け止められていることが報じられました。
Samsung 社内では警鐘が出るレベル
韓国メディア「The Bell」によると、Google が Tensor チップの製造委託先を TSMC に切り替えた件は、Samsung 社内で「Google 事態」と呼ばれ、深刻に受け止められています。同社は現在、この問題を集中分析し、ファウンドリ事業の競争力回復に向けた対策を講じるための内部点検を進めているとのことです。
ある業界関係者が、「Google を失ったことは、Samsung ファウンドリの複雑な問題を一度に示すケースだ」と指摘しており、社内でも多くの議論と懸念が交わされている状況がうかがえます。
なぜ Google は TSMC を選んだのか?
Google が製造パートナーの変更に踏み切った背景には、いくつかの複合的な要因があると見られています。
歩留まり率の圧倒的な差
すでにリーク情報などでも指摘されていましたが、最も大きな理由の一つとして挙げられるのが、製造プロセスの「歩留まり率(良品率)」の差です。
報道によると、TSMC の 3nm プロセスの歩留まり率が 90% に達するのに対し、Samsung は約 50% にとどまっているとされています。歩留まり率はチップの安定供給、性能、コストに直結するため、この差が Google の決定に大きな影響を与えたと考えられます。
多様化する性能要求と設計資産(IP)の不足
Google が Tensor チップに求める性能や機能は年々多様化・高度化しています。報告では、Samsung が持つ半導体設計資産(IP)が、Google の要求を十分に満たせなかった可能性が指摘されています。Google はより高性能な完全カスタムチップの実現を目指しており、Apple や Qualcomm のハイエンドチップ製造で実績のある TSMC の技術力に魅力を感じたのは自然な流れだと思います。
Pixel 10 への影響と今後の展望
今回の製造先の変更によって、Tensor G5 が TSMC の 3nm プロセスで製造されることになりますが、これのおかげで Pixel 10 シリーズのパフォーマンスと電力効率の大幅な向上が期待されるため、Pixel ユーザーには歓迎すべき変更と言えます。
ただし、最新のリーク情報によれば、チップセット本体は TSMC が製造するものの、通信を担うモデムに関しては、引き続き Samsung 製が採用される見込みです。
モデムについては、以前 MediaTek 製のモデムが採用されるという情報とは異なるものです。ただ、その後のプロトタイプのリークから、Samsung 製(Pixel 9 シリーズと同じ Exynos 5400 モデム)を搭載していることが示唆されています。
一方で、今回の事態を「警鐘」と捉える Samsung も、次世代の 2nm プロセス開発に注力し、自社製 AP「Exynos」シリーズでの巻き返しを図っています。
まとめ
これまで Google Pixel に採用されてきた Tensor チップは、大きな転換点を迎えています。Pixel 10 での TSMC への製造委託先変更は、Samsung にとって大きな衝撃であると同時に、自社のファウンドリ事業を見つめ直す重要な機会となったようです。
Samsung 社内でこのような話が出ているとしたら、Samsung が自社製の Exynos 2600 チップを、自社製フラッグシップ Galaxy S26 シリーズに何としても搭載すべく開発に取り組んでいるという報道にも納得がいきます。この競争が、今後のスマートフォンの性能をさらに引き上げることに繋がることを期待したいですね。