Google の Tensor チップに関する内部文書がリークされたことで、「熱」の問題が Pixel の第一の返品理由であることが明らかにされたことを別の記事で紹介しました。一方、リークされた資料からは Google が Tensor G6 で熱の問題を解決するとともにバッテリー寿命の改善にも着手することに加え、Tensor チップセットのコストを削減することも考えているようです。
これは Android Authority が入手した内部文書によるもので、少なくとも以前から Google は Tensor の問題を認識しており、解決に取り組んでいることが明らかになっています。すでに紹介したように、Google は Pixel 返品の最大の理由が熱の問題であることや、バッテリー寿命を改善する必要があることを認識しています。特にバッテリーについては「ユーザーは36時間のバッテリー駆動時間を期待している」といったユーザーアンケートの結果も含まれています。さらにコストも問題視しており、チップの価格を約65ドルに抑えることを目標にしているようです。
Google はこれらの目標を達成するために、Tensor G6 では Tensor G5 と比べていくつかのダウングレードも含めた変更も検討していることが明らかになっています。資料では Tensor G6 に関する計画も明らかにされており、Tensor G5 から性能と機能を落とすことなくダイ領域を削減することを目指しています。
Tensor G5 は約121mm^2ですが、Apple A18 Pro は約105mm^2となっていて、どちらも同じ TSMC のノードプロセスを採用しています。Tensor G6 では TSMC の新しい N3P プロセスノードによる4%の面積削減を含め、105mm2 のダイ面積を達成することを目指しているとしています。
ダイ面積を小さくするため、Google はレイトレーシングや GPU 仮想化機能などを含め GPU の一部の機能を追加しないことを選択したようです。そのため Tensor G5 で採用される IMG DXT GPU ではなく、Tensor G6 ではもともと Tensor G4 に搭載される予定だった IMG CXT GPU が搭載されます。
これが具体的にどの程度の影響を与えるかは不明ですが、コア数が減ることで大きなパフォーマンス向上はそこまで見られないと予想されます。
また、Google は Tensor G6 の CPU コアの構成をいくつか試しており、暫定的に 1つの Cortex X930 コア と6つの Cortex-A730 コア(うち2つはわずかに高速化)を採用することを決めているとしています。つまり、Tensor G5 までに採用されていたリトルコアを使用しない方向で考えているようです。
とは言え、現時点ではこれらの変更が確定しているわけではなく、様々なテストをしているうちの1つでしかありません。しかし、Google は Tensor G6 での方向性を速度重視ではなく、引き続きバランスを重視したチップセットとして推し進めていくようです。
中途半端に高価でパフォーマンスがイマイチな上に発熱とバッテリー寿命に問題があるというのはとても困りますが、通常使用に不満のないミッドハイレンジのパフォーマンスで熱も気にならずバッテリー駆動時間が長く手頃な価格というのは魅力的だと思います。今後、Google がどのように Tensor G6 を仕上げてくるかが楽しみですね。