長年、一部の Google Pixel ユーザーの間で報告されてきた、動画撮影中に映像がカクつく、あるいは「カクつき」が発生する問題について、新たな進展がありました。
ある Pixel 10 Pro ユーザーによる詳細な調査の結果、Google のサポートがこの問題の原因が電子式手ブレ補正 (EIS) と光学式手ブレ補正 (OIS) のソフトウェア的な競合にあることを認めています。
この不具合は Pixel 10 Pro に限らず、過去の複数モデルでも発生する可能性がある広範な問題であることが示唆されています。
望遠レンズでの撮影中に発見された不具合
この問題は、ある Pixel 10 Pro ユーザーが 5 倍の望遠レンズで動画を撮影している際に、カメラをパン (水平に振る) させると映像が不自然にカクつく現象に気づいたことから明らかになりました。
当初はハードウェアの欠陥も疑われましたが、詳細な検証の結果、EIS を有効にしているときのみ発生し、EIS をオフにすると OIS が正常に動作して映像が滑らかになることが確認されました。
つまり、EIS と OIS の両方が同時に動作する際に互いが干渉し、映像に不自然な「カクつき」が生じていたのです。
さらに、この現象は Pixel 10 Pro だけでなく、旧モデルの Pixel でも確認されており、特定の端末個体に限った問題ではないことが分かっています。
Google サポートがソフトウェアの競合を正式に認める
ユーザーが数週間にわたる検証結果と動画証拠をもとに Google に問い合わせたところ、Pixel サポートの担当者がこの問題を正式に認めました。

Reddit に投稿されたチャット画面のスクリーンショットによると、担当者は「EIS / OIS のソフトウェア競合によって発生している、Pixel 10 Pro の望遠ビデオにおける広範なカクつき問題」と説明し、この現象が Pixel 10 Pro に限定されたものではないと認めています。
サードパーティ製アプリがソフトウェア起因を証明
この不具合がハードウェアではなくソフトウェアに起因していることを裏付けたのが、サードパーティ製アプリ「Open Camera」を使った検証です。
他のユーザーの提案でこのアプリを使用したところ、Google 純正カメラでは発生していたカクつきが完全に解消したことが報告されました。
「Open Camera」は Google 独自のカメラ API を使用せず独自の安定化処理を行うため、ハードウェアが正常であること、そして原因が Google の EIS 実装にあることが明確になりました。
問題の技術的背景と Google の対応状況
技術的な観点からは、Google の EIS アルゴリズムが過度に積極的に動作している点が問題とされています。
手ブレを補正するために映像をデジタル的にクロップして動かす際、その動作が大きすぎるとクロップ境界に達した瞬間に映像が「スナップ」し、カクつきとして現れます。特に望遠レンズでは OIS の物理補正と競合し、症状が顕著になります。
Google はこの報告を受けて調査を開始しており、サポート上のケースファイルは「進行中 (In Progress)」として扱われています。

なお、IssueTracker でも報告されていますが、こちらは「修正不可」とされています。今回、問題を報告したユーザーは、IssueTracker だけでなく Pixel サポートを通じてバグレポート提出もしており、それが上記のように現在進行中(調査中)とされています。
一時的な回避策と今後の見通し
現時点での回避策として、以下の方法が推奨されています。
- 望遠レンズでの動画撮影時に EIS (ビデオブレ補正) をオフにする
- 「Open Camera」などのサードパーティ製カメラアプリを使用する
また、Google フォトの手ブレ補正や「Video Boost」機能を利用すれば、ある程度滑らかな映像に仕上げることも可能です。
Pixel シリーズは、高度なソフトウェア処理による「コンピュテーショナルフォトグラフィー」で評価されていますが、今回の件はその強みが裏目に出た一例といえます。
Google が今後のアップデートでこの不具合を修正すれば、Pixel カメラの長年の課題が解消される可能性があります。
出典: PiunikaWeb