Google が Pixel スマートフォン向けに、Android 16 の 2 回目の四半期アップデートとなる「Android 16 QPR2」を、2025 年 12 月のセキュリティアップデートとともに配信開始しました。
対象は Pixel 6 / 6 Pro / 6a から Pixel 10 シリーズまでのほぼすべての現行 Pixel で、タブレットや Fold も含まれます。
今回のアップデートでは、ホーム画面の見た目をそろえるカスタマイズ機能や、ロック画面ウィジェット、通知を自動で整理する新機能、PC に近い操作性を目指したマウス・タッチパッドまわりの改善、セキュリティとファミリー向け機能の強化など、多数の変更が含まれています。
ホーム画面と表示まわりのカスタマイズ強化
テーマアイコンの自動生成とアイコン形状のカスタマイズ
Android 13 以降に導入されていた「テーマアイコン」は、開発者が単色版アイコンを用意していないアプリでは反映されないため、ホーム画面上で「色がそろっているアイコン」と「通常のアイコン」が混在してしまう問題がありました。
Android 16 QPR2 では、この課題を解消するために、対応していないアプリでも OS 側でモノクロ調のテーマアイコンを自動生成できるようになりました。これにより、多くのアプリでホーム画面の見た目を揃えやすくなります。
さらに、ホーム画面上のアイコン形状を、丸だけでなく四角や多角形など複数の形から選べるようになりました。設定は [壁紙とスタイル] > から行い、ホーム画面のアイコンにのみ適用されます(アプリドロワーや設定画面内のアイコンには影響しません)。

この変更は、筆者のアップデート済み Pixel 10 Pro でも確認できました。
拡張ダークモードと HDR 明るさ制御
アプリ側でダークモードを用意していない場合でも画面がまぶしくならないよう、「拡張」モードが追加されました。
対応アプリでは、ビューや WebView など標準コンポーネントの背景色を OS が自動的に暗くし、画像の反転など不自然な変化を避けながら、全体をダークテーマ風に表示します。

設定は [設定] > [ディスプレイとタップ] > [ダークモード] で、[標準] と [拡張] を切り替え可能です。
また、新たに「HDR 輝度補正」のスライダーが追加され、HDR コンテンツ再生時のハイライトの明るさを細かく調整できるようになりました。

完全にオフにして SDR と同じ見た目にすることも、少しだけ抑えることもできます。暗所でスクロール中に急にまぶしくなる、といった状況を避けたい人にはうれしい変更です。
スクリーンセーバーの「ローライト モード」とぼかしの無効化
スクリーンセーバーには、周囲が暗くなると自動的にシンプルな時計に切り替える「ローライト モード」が追加されました。

これにより、日中はホームコントロールなど好みのスクリーンセーバーを表示しつつ、夜間は暗い時計表示に自動で切り替える、といった使い分けが可能になります。
また、Material 3 Expressive デザインの導入に伴って増えた背景のぼかし効果を好まないユーザー向けに、[設定] > [ユーザー補助] > [色と動き] に「ぼかし効果を減らす」オプションが追加されました。

オンにすると、クイック設定パネルや通知シェード、ロック画面、アプリドロワー、履歴画面など、システム全体の背景ぼかしが無効化されます。
ロック画面ウィジェットやマルチタスク機能の強化
スマホにもロック画面ウィジェットが対応
Android 16 QPR1 で Pixel Tablet に先行していた「ロック画面ウィジェット」が、ついに Pixel スマートフォンでも利用可能になりました。
[設定] > [ディスプレイとタップ] > [ロック画面] > [ロック画面のウィジェット] > [ロック画面のウィジェット] からベータ機能として有効化でき、ロック画面から左にスワイプすると、ウィジェット専用ページが表示されます。

1 ページあたり最大 3 つまでウィジェットを配置でき、ページを追加すればさらに多くのウィジェットを並べることも可能です。
ただし、ロック解除なしで誰でも閲覧できるため、銀行系アプリやカレンダーの詳細予定など、機密性の高い情報を表示するウィジェットは避けたほうが安全です。また、現時点では「ベータ版」として表示されます。
90:10 の分割画面レイアウト
マルチタスク機能として、新たに「90:10」の分割画面レイアウトが追加されました。
従来よりも片方のアプリを大きく、もう一方を細長く表示できるため、メインアプリの作業に集中しながら、サブアプリを常に表示しておくといった使い方に向いています。タップでメイン・サブを入れ替える操作もサポートされました。
Linux ターミナルが GUI アプリに対応
開発者や上級ユーザー向けには、Pixel の「Linux Terminal」アプリが、これまでの CUI アプリに加えて GUI アプリをサポートしました。
Chromium ブラウザや GIMP、LibreOffice といった Linux デスクトップアプリも表示できるようになり、トップバーの「Display」ボタンから GUI セッションを開始できます。
現時点では GPU アクセラレーションが未対応のため、描画が重くなる場面もあるとされていますが、Android 上での開発環境・学習用途としては選択肢が広がります。
PC ライクな操作を意識したマウス・タッチパッドのアップデート
Android 16 QPR2 では、PC としての利用も視野に入れた入力まわりのアップデートが多数行われています。これは、Google が「Aluminium OS」として展開している Android ベースの PC 向けの取り組みとも関連する動きと考えられます。
主な変更点は次のとおりです。
タッチパッドの 3 本指タップのカスタマイズ
3 本指タップで起動する機能を、ホーム・戻る・最近のアプリ・Google 起動・ミドルクリックに加え、任意のアプリ起動にも割り当てられるようになりました。
アクションコーナー
画面の四隅にカーソルを移動することで、ホームに戻る、通知シェードを開く、クイック設定を展開する、画面ロックなどのアクションを呼び出せる機能です。それぞれに異なる役割を割り当てられます。
オートクリック機能の改善
一定時間カーソルを止めると自動クリックする「オートクリック」に、予告インジケータや一時停止ボタン、クリック種別の切り替えオーバーレイが追加され、ユーザー補助機能として使いやすくなっています。
マウス / タッチパッドの加速度やユニバーサルカーソル
カーソル移動の加速度を有効化するトグルや、外部ディスプレイとの間でカーソル移動を連携する「ユニバーサルカーソル」のオン/オフが追加され、広い画面でも操作しやすくなりました。
マウス専用の「コントロールされたスクロール」
スクロールホイールの物理的な動きと画面スクロール量の関係をより細かく制御するオプションが追加され、長いページでも狙った位置に調整しやすくなっています。
ファミリー向け機能とセキュリティの強化
OS 標準のペアレンタルコントロール
これまで「デジタル ウェルビーイング」の一部に含まれていた子ども向け管理機能は、Android 16 QPR2 で独立した「保護者による使用制限(ペアレンタルコントロール)」メニューとしてまとめられました。

ここから、端末ごとの画面時間の制限、就寝時間のスケジュールロック、アプリ単位の使用時間タイマーやブロック、上限到達後の「ボーナスタイム」付与などを設定できます。

設定には PIN をかけることができ、Google ファミリーリンクへのショートカットも用意されているため、家族内での端末ルールを一括管理しやすくなりました。
「ID チェック」の拡張と OTP 盗み見対策
盗難・紛失時の悪用を防ぐための「ID チェック」は、信頼済みの場所から離れた場合に生体認証を厳格化する機能として Android 16 で導入されました。
Android 16 QPR2 では、これがサードパーティアプリにも拡張され、銀行アプリやメッセージアプリなどが生体認証を求める場合、PIN やパターンによる代替認証を許可しないようにできます。

さらに、Pixel Watch 3 以降のスマートウォッチと連携し、端末が手元にあると判断できる場合は ID チェックを緩和する仕組みも追加されています。Bluetooth 接続が切れたタイミングで、自動的に保護を強化するイメージです。
SMS 経由のワンタイムパスワード(OTP)についても、メッセージ内に特定のハッシュが含まれる場合は、一定時間(約 3 時間)他アプリから見えないようにし、ブロードキャストも抑制する仕組みが追加されました。これにより、不正なアプリが OTP を勝手に読み取るリスクを下げることができます。
認証失敗時ロックの設定と Secure Lock Device
Android 15 で導入された「認証失敗時ロック」は、PIN や生体認証の連続失敗時に端末全体をロックする機能ですが、QPR2 ではこれをユーザーがオフにできるトグルが追加されました。

この機能は [設定] > [セキュリティとプライバシー] > [デバイスのロック解除] > [盗難保護] から変更できます。
加えて、Find Hub 経由で遠隔的に端末をより強固なロック状態にする「Secure Lock Device」という新しいセキュリティ状態も OS に追加されています(機能自体は現時点では Find Hub 側の対応待ちとされています)。
この状態では通知やクイック設定、ロック画面ウィジェット、Gemini などが一時的に無効化されます。
その他の細かな変更点
Android 16 QPR2 には、このほかにも多数の小さな改善が含まれています。すべてを網羅するのは難しいため、主なものをいくつかピックアップします。
- 通知オーガナイザー: Pixel 9 以降(9a を除く)で、AI を使って通知を「ニュース」「プロモーション」「ソーシャル」などのカテゴリにまとめる機能が追加されました。通知の要約機能と同様、現時点では英語の通知が対象です。
- ヘルスコネクトの歩数記録: 端末のセンサーから記録した歩数を Health Connect が直接保存し、対応アプリ間で共有できるようになりました。
- フォトピッカーの強化: 日付スクラバーやボイス検索ボタンが追加され、大量の写真の中から目的の画像を探しやすくなっています。
- ライブ字幕のボタン位置の見直し: 音量スライダー直下にライブキャプションのトグルボタンが戻り、即座にオン/オフしやすくなりました。
- ウィジェットリストの「おすすめ」タブ: Pixel Launcher のウィジェット選択画面に「おすすめ」と「すべて」のタブが追加され、よく使いそうなウィジェットを先頭に表示してくれます。
- プライベートスペースへのファイル移動が簡単に: 「インストール」ボタンが「追加」に変わり、Play ストアからのアプリインストールだけでなく、Files by Google を使ったファイルの追加も行えるようになりました。
開発者向けには、PDF 編集 API の拡張やヘルスコネクトの運動データ強化、クイック設定タイルのカテゴリ指定、クロスプラットフォームのデータ移行 API など、多数の新しい API も追加されており、これに伴い SDK バージョンは「36」から「36.1」に引き上げられています。
Android 16 QPR2 と 2025 年 12 月アップデートの位置づけ
Android 16 QPR2 は、Android 16 の「四半期ごとの機能アップデート(Quarterly Platform Release)」の第 2 弾です。
QPR1 に続く今回の QPR2 から、Android は 1 年に 1 回の大型アップデートに加えて、年 2 回の SDK アップデートを含むより頻繁なリリースサイクルに移行しました。
これにより、アプリ開発者や OEM が新機能をより早く利用できるようにすることが狙いとされています。
Pixel 向けには、2025 年 12 月のセキュリティパッチと合わせて配信されており、バッテリーや UI など 30 件以上の不具合修正も同梱されています。
まとめ
Android 16 QPR2 は、見た目の調整からロック画面ウィジェット、マルチタスク、入力デバイスの改善といった使い勝手を向上させる変更が幅広く追加されています。
一方で、通知オーガナイザーなど一部は対応言語や機種が限られているため、実際の挙動は環境によって異なる場合があります。
Pixel 6 以降を使っている人はアップデートを適用し、普段の操作がどう変わるか一度確認してみてください。


