Google Pixel 10 シリーズに搭載されているプロセッサ「Tensor G5」は、Imagination Technologies 社が開発した新しい PowerVR GPU を採用しています。
この GPU に関して、一部のユーザーなどからピーク時の GPU クロック周波数が 1.1GHz であるにもかかわらず、実際には 400MHz 程度に制限されている(性能が意図的に低く設定/アンダークロックされている)のではないかという噂が広まっています。
しかし、Android Authority の実機検証により、これは事実ではなく、スマートフォンの「熱と電力管理」の動作制御による影響であることが明らかになりました。
検証で明らかになった GPU の実際の動作
Android Authority の検証は、システムプロファイリングツールを使用し、人気ゲーム「COD Mobile」をプレイ中の GPU クロック周波数の変動を記録するという方法で行われました。
その結果、噂されていた動作とは異なる、より意図的な制御が行われていることが明らかになりました。

GPU は主に 2 つのモードで動作
検証データでは、キャラクターがフィールドを移動しているだけのような、比較的描画負荷が低い場面では、396MHz という低いクロック周波数で動作していることが確認されました。
一方で、建物が増えたり、アクションが多くなったりするなど、描画負荷が高まる場面では、GPU はピークである 1.1GHz に頻繁に達していました。
このことから、Tensor G5 の GPU は常に低いクロックに固定されているわけではなく、低負荷時はベースとなる周波数で動作し、必要な時だけブーストするという設計になっていることがわかります。
熱と電力管理のための効率的な設計
GPU が常に最高のパフォーマンスで動作しない理由として、「熱」と「電力消費」の管理にあります。
データによると、GPU が高クロック(1.1GHz)で動作している間、電力消費は低クロック(396MHz)時の約 275mW から 480mW へと、倍近くに増加しています。
GPU を常に 1.1GHz で動作させ続ければ、バッテリー消費が大幅に増加し、それに伴いデバイスの発熱も深刻になります。

実際に、検証で約 10 分間ゲームをプレイしただけで、端末は熱くなったと報告されています。このことからも、モバイルデバイスで常にピーク性能を維持し続けるのは現実的ではないことがわかります。
この発熱については、筆者が Pixel 10 Pro でゲームをプレイした際にも同様の傾向が見られ、短時間でも負荷がかかると本体がかなり熱くなることを確認しています。
アンダークロックではなく「race to idle」アプローチ
Pixel 10 シリーズの GPU が見せたこの動作は、アンダークロックではなく「race to idle(レース・トゥ・アイドル)」と呼ばれるアプローチです。
「race to idle」は、必要なタスクを瞬間的に最大性能で処理し、完了後すぐに低消費電力のアイドル状態に戻るというものです。これにより、中程度のクロックで長時間動作し続けるよりも、総合的な電力効率を高めることができます。
したがって、GPU が低いクロックで動作している時間が長いことは、性能が不足していることを意味するのではなく、電力を節約し、デバイスをより長く、より低温で動作させるために意図的な設計となっています。
まとめ
今回の検証結果から、Pixel 10 シリーズの GPU がアンダークロックされているという噂は事実ではないことがわかりました。
スマートフォンのパフォーマンス、熱管理、バッテリー寿命の最適なバランスを取るために「race to idle」という設計を採用していますが、長時間の高負荷状態を想定したものではなく、実際に発熱しやすい傾向も見られます。
そのため、高いレベルのグラフィック性能を長時間維持したいと考えるヘビーゲーマーにとっては、パフォーマンスが抑制される場面もあり、物足りなさを感じる可能性があります。