Google は、AI 技術を活用して気象予測の精度向上に取り組んでおり、その最新の成果として、新しいウェブサイト「Weather Lab」を公開しました。このサイトでは、特に AI を駆使した実験的なサイクロン(ハリケーンや台風)の予測モデルが紹介されています。
ただし、このツールは現時点では研究者や専門家向けに提供されており、一般のユーザーが利用することを目的としたものではありません(現在、ページにアクセスすると 404 エラーになります)。
「Weather Lab」とAIサイクロン予測の概要
「Weather Lab」は、Google DeepMind と Google Research が共同で開発した、AI 気象モデルの成果を共有するためのインタラクティブなウェブサイトです。
このサイトで公開されている実験的な AI サイクロンモデルは、確率論的ニューラルネットワーク(stochastic neural networks)に基づいており、サイクロンの発生から進路、勢力、大きさ、形状までを予測し、最大 15 日先までの 50 通りの可能性のあるシナリオを生成することができます。
サイクロン、ハリケーン、台風はすべて熱帯低気圧であり、発生する場所によって呼び名が異なります。
Google によると、この AI モデルはサイクロンの進路と強度の予測において、従来の物理ベースのモデルよりも高い精度を示すことが多いとしています。
従来モデルを上回る予測精度
Google は、この AI モデルの有効性を科学的に検証するため、米国国立ハリケーンセンター(NHC)と協力しています。
2023 年と 2024 年の北大西洋および東太平洋で観測されたハリケーンデータを用いた初期評価では、この AI モデルの 5 日後の進路予測が、ヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)の主要な物理ベースのアンサンブルモデル「ENS」と比較して、平均で 140km も実際のサイクロンの位置に近かったと報告されています。これは、ENSの 3.5 日後の予測精度に匹敵し、通常であれば 10 年以上かかるとされる 1.5 日の予測精度向上を実現したことになります。
Google が公開したアニメーションでは、2025 年 3 月 2 日の予測で、マダガスカル南方のサイクロン「Honde」と「Garance」の進路を正確に予測し、さらに約 7 日先にインド洋で発生するサイクロン「Jude」と「Ivone」の進路も捉えている様子が示されています。
専門機関との連携と今後の展望
現在、NHC の専門予報官は、この実験的な AI モデルによるライブ予測を、既存の物理ベースのモデルや観測データと並行して活用しています。Google は、このデータが NHC の予報改善や、より早期かつ正確な警報の発令に繋がることを期待しています。
さらに、英国気象庁(UK Met Office)、東京大学、株式会社ウェザーニューズなど、国内外の専門機関とも連携し、モデルのさらなる改善を進めています。
あくまで専門家向けの研究ツール
「Weather Lab」は、その先進的な機能にもかかわらず、現段階では研究ツールとしての位置づけであり、一般ユーザー向けのサービスではありません。
サイトの下部には、「公式の天気予報や警報については、お住まいの地域の気象機関や国の気象サービスを参照してください」という注意書きが常に表示されています。
このツールの主な目的は、気象機関や緊急サービスに関わる専門家が、サイクロンの進路と勢力をより的確に予測できるよう支援することにあります。将来的には、このような AI 技術が私たちの安全を守る上で、さらに重要な役割を果たすことが期待されます。
出典: Google, Google DeepMind