今回の記事では、ASUS が2024年1月にグローバルで発表、日本でも5月15日に発表された「ASUS ROG Phone 8」の実機レビューをお届けします。なお、レビューにあたり実機の貸出を受けています。
ASUS の ROG Phone シリーズと言えば、スマートフォンゲーマー向けに展開されているハイスペックゲーミングスマートフォンですが、新しい ROG Phone 8 はこれまでのシリーズよりも軽量かつスリムに、そしてデザインの見直しによって日常使いもしやすいモデルへと進化しています。
ゲーミングスマートフォンとして世界初の IP68 防水・防塵を備え、何より日本向けでは ROG シリーズとして初めておサイフケータイ(Felica)に対応しました。前世代からワイヤレス充電もサポートしており、ゲームだけでなく全体的な使いやすさが向上していることが大きな特長となります。
なお、ASUS ROG Phone 8 シリーズとして「ROG Phone 8」と「ROG Phone 8 Pro」という2つの機種がラインナップされています。両者の基本スペックは共通していますが、「ROG Phone 8」の背面には色やライティングをカスタマイズできる AURA ライトが搭載され、「ROG Phone 8 Pro」にはカスタマイズ可能なアニメーションを表示できる ANIME VISION が搭載されているという点が異なります。
さらに日本では「ROG Phone 8 Pro Edition」というバリエーションが用意されていますが、「ROG Phone 8」と「ROG Phone 8 Pro」との違いは RAM とストレージの容量だけとなっています。
スペック
まずは ASUS ROG Phone 8 シリーズのスペックをおさらい。
OS | Android |
---|---|
ディスプレイ | 6.78インチ Flexible AMOLED フルHD+ 最大165Hzリフレッシュレート LPTO可変 1~120Hz 最大2,500nits |
CPU | Snapdragon 8 Gen 3 |
RAM | 16GB 24GB (Pro Edition) ※8,533Mbps LPDDR5X |
内部ストレージ | 256GB 512GB(Pro) 1TB (Pro Edition) ※UFS4.0 |
外部ストレージ | – |
リアカメラ | 50MPメイン(1/1.56, f/1.9, 6軸Hbジンバルスタビ) 13MP超広角(f/2.2) 32MP望遠(f/2.4, 3倍光学ズーム,OIS) |
フロントカメラ | 32MP |
ポート | USB-C ×2 3.5mm audio jack |
ネットワーク | 5G Wi-Fi 7 Bluetooth 5.3 NFC |
バッテリー | 5,500mAh 65W急速充電 |
その他 | 画面下指紋センサ IP68 防水・防塵 AirTrigger 専用ゲーミングデバイス対応 |
サイズ | 163.8×76.8×8.9mm |
重さ | 225g |
カラー | Phantom Black & Rebel Grey (ROG Phone 8) Phantom Black (ROG Phone 8 Pro) |
背面のデザインは「ROG Phone 8」と「ROG Phone 8 Pro」で異なり、構成に関しては「ROG Phone 8」は16GBRAMと256GBストレージを搭載、「ROG Phone 8 Pro」が16GBRAMと512GBストレージを搭載しますが、「ROG Phone 8 Pro Edition」は24GBRAMと1TBストレージを搭載しています。なお、Pro Edition には専用外付けクーラーの AeroActive Cooler X が付属しています。
ちなみに今回レビューしている実機は「ROG Phone 8」です。
実機レビュー
「ROG Phone 8」の見た目はどんどんシンプルになっていきますが、今シリーズはゲーミングスマートフォンらしさを残しつつも派手すぎない良い感じのデザインに落とし込まれています。デバイスのカラーは黒系のファントムブラック、グレー系のレベルグレー(ROG Phone 8のみ)という2色展開で、日常生活でも扱いやすくなりました。
当然、背面の AURA ライトや ANIME VISION を活用すれば光らせて主張することもできるので、地味になりすぎず心配もありません。背面のロゴ周囲の素材はサラッとした触り心地になっていて、カメラ周りはガラスでコーティングされています。
また、デバイスの厚みは前世代から15.2%(10.49mmから8.9mmに)も薄く、重さも前世代から15gほど軽くなっており、手にしたときのフィット感は良くなっていると思います。一方、カメラのバンプ部分はそれなりにあること(おそらくジンバルスタビライザーの影響)、素材的に少し滑りやすいと感じるため、擦り傷や落下などに不安なユーザーはケースを付けたほうがいいかもしれません。
ちなみに背面の AURA ライトは ASUS ROG 専用アプリの「Armoury Crate」を使ってカスタマイズすることができます。アプリ内の[システムライト (ROG ロゴ)]の項目でライティングのパターンや光らせるタイミングなどを変更・設定することができます。
アプリではデバイスの状態を確認したり、ゲーム画面の表示エリアの変更、Game Genie によるゲームの管理、AirTriggers のカスタマイズ、デバイスのパフォーマンスモードの変更などができます。
側面にはUSB-Cポートが2つあり、ゲームプレイ時に操作を割り当てることのできる AirTrigger も搭載されています。充電ポートの1つは横持ちしながら充電しても干渉しづらく、AirTrigger は押したときに1つの動作、2つの動作、押すと離すで別々の動作などを割り当てることもできます。また、マクロや繰り返し操作の割当などもでき、うまく活用することでゲームを快適にプレイできるようになります。
どちらかと言えば AirTrigger は特にスマホゲーで活躍し、例えば GeForce NOW などを使って PC やコンソールゲームをプレイしようとするとボタンがどうしても足りなくなります。実際には画面上に表示される仮想コントローラーを使うことになるので問題はありませんが、ゲーム機のようにしてプレイしたければ別でコントローラーを用意するほうが良いでしょう。
「ROG Phone 8」のディスプレイはゲームプレイ中の最大165Hzリフレッシュレートに対応しており、普段でも1〜120Hzの可変リフレッシュレートをサポートしています。サイズも6.78インチと大きめなのでゲームでも動画視聴でも、普段使いでも滑らかで高精細な画像や映像で見ることができます。タッチサンプリングレートも高く、特に不満に感じるところはありません。
横持ちしたときに持ちやすいサイズだと思うので、ゲームプレイ時も含めて横向きで持つ機会が多いユーザー向きです。ただ、Android のホーム画面は自動回転をオンにしていても横向き表示にならないので、すべての操作を横向きのまま行えないことが残念ですね(これはASUSのせいではありませんが)。
性能について触れておきますと、「ROG Phone 8」シリーズは最新のハイエンドチップ Qualcomm Snapdragon 8 Gen 3 を搭載しており、前世代から CPU は30%、GPU は 25%高速化されています。普段使いではもちろんですが、原神などの3Dゲームをプレイしても安定して動作しており、おそらくほとんどのシーンで性能に不満を持つことはないと思います。
なお、長時間のゲームプレイ時には発熱もそれなりにありますが、最も発熱する部分が本体中央になるため、横持ちしているときでも持ち手部分はそこまで熱くなりません。必要に応じて別売り(Pro Editionは同梱)の外付けクーラーユニット AeroActive Cooler X を使うこともできるため、ここはゲーマー向けに考えられています。
実際にいくつかの Android ゲームをプレイするだけでなく、クラウドゲームサービスの GeForce NOW もアプリ経由で試してみましたが、プレイすることに全く問題はありませんでした。ただし、GeForce NOW に関してはコントローラーまたはキーボードとマウスがなければプレイできないゲームもあり、仮想コントローラーでプレイ自体はできるものの操作性はそれなりです。
そのため、GeForce NOW のようにクラウドゲームサービスに接続してゲームプレイをするのであれば、別にコントローラーを用意するなどが必要になります。それであればかなり快適になりますが、これには安定したネットワークが必要になること、モバイルネットワークで従量制だと回線料金がトンデモナイことになるので注意してください。
なお、バッテリー駆動時間に関してはファイアーエムブレムヒーローズを1時間ほどプレイして10%程度の消費でした。原神などの重たいゲームだともう少し消費は早まりますが、空き時間に少しプレイする程度であれば1日の外出でも十分にバッテリーは持つと思います。モバイルバッテリーによる充電もできますし、65W有線急速充電に対応していることで最短39分でフル充電することもできるため、バッテリーに関してはそこまで困ることはないと思います。
一方、ゲーム以外の実用性という点でも、新しい ROG Phone 8 シリーズの国内モデルはおサイフケータイ(Felica)に対応したことや前世代からワイヤレス充電に対応したことなどもあり、使い勝手もかなり向上しています。
とくにおサイフケータイの追加によって、これ1台で公共交通機関の利用や電子マネーの支払いが完結するようになったのでとても便利です。これのおかげで前モデルまではゲームメインのユーザー向けといった印象が強かった ROG Phone も、高性能なスマートフォンが欲しいユーザーやライトゲーマーにもオススメしやすい1台となりました。
普段使いという点ではリアカメラも前世代から引き続き OIS/EIS 手ぶれ補正と6軸ジンバルモジュールを搭載した50MP (Sony IMX890) メインカメラ、13MP超広角カメラ、3倍光学ズーム(最大30倍)に対応した 32MP 望遠のトリプル構成で、写真撮影や動画撮影でも ROG Phone 8 を活用することができます。
天気はイマイチでしたが、写真と被写体はかなりキレイに撮影できています。最大30倍にするとさすがに粗さが目立っていますが、実用的な範囲だと思うので悪くありません。
Android アプリから GeForce NOW などのクラウドゲームサービスまで幅広くプレイは可能、写真撮影や動画撮影でも活用でき、性能面でも特に不満はありませんでした。
価格
最後に価格についてですが、国内で販売される ROG Phone 8 シリーズには3つのバリエーションが用意されています。それぞれの構成と価格は次のようになります。
- ROG Phone 8 (16GBRAM / 256GB) : 159,800円
- ROG Phone 8 Pro (16GBRAM / 512GB) : 179,800円
- ROG Phone 8 Pro Edition (24GBRAM / 1TB) : 219,800円
また、販売が確定しているオプション(ゲーミングアタッチメント)は次のようになります。
- AeroActive Cooler X : 12,480円
現行ハイエンドのゲーミングスマートフォンとなるため価格も相応になっていますが、他のハイエンドスマートフォンも15万円を超えることはザラにあるため、ROG Phone 8 シリーズだけが特別に高いというわけではありません。ちなみに ROG Phone 8 Pro Edition には AeroActive Cooler X が同梱されています。
なかなか悩ましい選択肢ですが、普段使いはもちろんのこと、ゲームだけでなく写真や動画撮影もする頻度が高ければ最上位の ROG Phone 8 Pro Edition は選択肢になると思います。一方、ゲームの頻度がそこまで多くないけどハイエンドなスマートフォンが欲しいというユーザーはベースの ROG Phone 8 はちょうど良いところです。
ROG Phone 8 Pro に関しては、ストレージ容量が512GBになって背面が AURAライトではなく Anime Vision に変更されたことに追加で2万円を出せるかどうかです。デザイン性を重視するのであれば悪くはないですが、正直一番悩むモデルですね。
まとめ
いずれにしても、新しい ROG Phone 8 シリーズはハイエンドなゲーミングスマートフォンとして申し分なく、さらに Felica やワイヤレス充電などをサポートしているおかげで日常使いのデバイスとしても使い勝手が大きく向上しています。これまでゲームと普段使いが8:2くらいのユーザー向きという印象でしたが、今回のモデルで6:4もしくは半々、たまにしかゲームしないユーザーでも十分におすすめできる1台となりました。
あとは金額次第というところですが、他のハイエンドスマートフォンと比べても決して高いわけではなく、ゲームプレイに最適化されている分をどう捉えるかになります。少しでもゲームで遊ぶの機会があれば ROG Phone 8 シリーズは他のハイエンドスマートフォンにはない魅力があります。もちろん、他のスマートフォンとは違った1台を求めているユーザーにもオススメですので、ぜひ検討してみてください。