Google Cloud は、Looker の「Conversational Analytics (会話型分析)」機能の一般提供 (GA) を開始したことを発表しました。
これにより、データ分析の専門家でなくても、経営者やマーケティング担当者、営業担当者などが、Gemini AI に対して「チャットで質問するだけ」で必要なデータを即座に入手できるようになります。
専門的なデータベース言語 (SQL) や、複雑なダッシュボードの操作方法を習得する必要がなくなり、組織全体のすばやい意思決定を支援します。
データ分析の壁は「専門家待ち」だった
多くの企業でデータ活用が進む一方、現場ではまだ課題が残されています。
例えば、データ分析には SQL など専門知識が必要で、見たい数字があってもデータアナリストに依頼せざるを得ない状況が続いていました。
また、BI ツールのダッシュボードは便利な反面、そこから一歩踏み込んだ分析を行おうとすると再び専門家への依頼が必要となり、すばやい意思決定を妨げていました。
Looker の「会話型分析」で実現すること
今回 GA となった「Conversational Analytics (会話型分析)」は、こうした課題を Gemini の AI を活用して解消します。

チャットするだけで必要なデータが表示される
「先月の靴カテゴリの Web トラフィックを教えて」など、日常の言葉で入力するだけで Looker が自動的にデータを集計し、グラフや数値で回答します。これまで必須だった SQL やフィルター操作は不要です。
深掘りやグラフの変更も会話で完結
一度表示されたデータをもとに、「総売上高は?」「支払い方法別に面グラフで表示して」といった追加指示も可能です。会話の流れで自然に分析を続けられます。
最大 5 つのデータ領域を横断して分析できる新機能
正式版では、最大 5 つの Looker Explore(事前結合済みのデータビュー)を統合し、複数のビジネス領域にまたがる質問も可能になりました。
これにより、「広告効果と販売データを組み合わせて見たい」といった複数部門をまたぐ分析も簡単に行えます。
AI が「計算根拠」を説明する透明性
「How was this calculated?」機能により、AI が利用した計算ロジックや参照データを自然言語で確認できます。結果の根拠が分かるため、ユーザーは安心して分析結果を利用できます。
なぜ「AI に聞くだけ」で信頼できるのか
信頼性の源泉となっているのが Looker の中核である「セマンティックレイヤー」です。これは簡単に言えば会社共通の「言葉の定義」を一元管理する仕組みです。
たとえば「売上」という指標の意味(税抜きの受注額なのか、送料込みの出荷額なのか)を Looker 上で統一しておくことで、AI は常に正確で一貫性のあるデータだけを使って回答します。
これにより、AI が誤ったデータを返すリスクを最小限に抑えています。
ビジネス現場とデータアナリストの双方にメリット
ビジネスユーザーは、これまで数日待っていたような数字を会議中でも即座に入手できるようになります。一方、データアナリストは「この数字を出してほしい」といった日々の定型的な依頼から解放され、より価値の高い業務に集中できます。
YouTube のビジネスチームでもこの機能がテストされており、パートナーマネージャーがクリエイター支援の最適化に必要なデータをすぐに得られるようになったとしています。
利用方法とまとめ
Looker の会話型分析は、すべての Looker プラットフォームユーザーが追加費用なしで利用可能です。
データ分析が「一部の専門家のもの」から「組織全体が活用するもの」へと変わる大きなアップデートと言えます。


