Qualcomm Snapdragon 8 Elite Gen 5、Android 16 の「Linux ターミナル」に非対応

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Google Pixel 10 Pro で Android の Linux ターミナルアプリを起動したところ

Qualcomm の最新フラッグシップチップセット Snapdragon 8 Elite Gen 5 は、高いパフォーマンスを発揮することがベンチマークで示されていますが、Android 16 の新機能の一つである「Linux ターミナル」に対応していないことが明らかになりました。

目次

Linux ターミナル機能とは?

Linux ターミナルは、Android デバイス上で Linux アプリケーションを実行可能にする Android 16 の新機能です。Google Pixel 向けに Android 15 QPR2 で正式に導入され、現在はサポートされる Android デバイスに拡大されています。

これは Android Virtualization Framework(AVF)と呼ばれる技術を利用し、デバイス内に Debian ベースの仮想マシン(VM)を作成することで実現されます。

この機能により、GIMP(画像編集ソフト)や LibreOffice(オフィススイート)といった、通常 Android では利用できないデスクトップ向け Linux アプリケーションが Android デバイス上で動作するようになります。

開発者やパワーユーザーにとっては特に魅力的な機能であり、Google は Android デバイス単体での Android アプリ開発や、将来的にはゲームの実行なども視野に入れていることを示唆しています。

なぜ Snapdragon は対応していないのか?

Linux ターミナル機能を利用するには、デバイスが以下の 2 つの要件を満たす必要があります。

Android Virtualization Framework(AVF)のサポート

AVF は、仮想マシンを作成・管理するためのフレームワークです。

これは Android Open Source Project(AOSP)の一部であり、理論上はどのメーカーでも利用可能ですが、実際に動作させるには各チップセットベンダーのハイパーバイザー(仮想マシンを管理するソフトウェア)実装に対応させる必要があります。

Google は Qualcomm を含む主要なチップベンダーと協力し、多くの Android 16 搭載デバイス(またはアップデートされるデバイス)で AVF が利用可能になっています。Snapdragon 8 Elite Gen 5 も AVF 自体はサポートしています。

「非保護 VM(non-protected VM)」のサポート

Linux ターミナルは現在、「非保護 VM」をサポートするデバイスでのみ動作しますが、Snapdragon 8 Elite Gen 5 はこれをサポートしていないため、Linux ターミナルを使うことができません。

「保護 VM」と「非保護 VM」の違い

「保護 VM」と「非保護 VM」の違いを簡単に説明すると、次のようになります。

  • 保護 VM(protected VM):仮想マシンのメモリがホスト OS(Android)から広範囲にアクセスできないように保護されています。これによりセキュリティが向上し、Play Protect のリアルタイム脅威検出機能などに利用されています。
  • 非保護 VM(non-protected VM):仮想マシンのメモリにホスト OS からアクセスすることが可能です。Linux ターミナルはこのタイプの VM を必要とします。

Snapdragon 8 Elite Gen 5 を含む Qualcomm のチップセットは、セキュリティを重視した「保護 VM」のみをサポートしており、「非保護 VM」には対応していません。そのため、よりセキュアな AVF の用途には対応できても、Linux ターミナルのような用途には対応できないという状況になっています。

実際のデバイスの例

この違いは実際のデバイスにも現れています。

  • Samsung Galaxy Z Flip 7:Exynos 2500 チップを搭載し、非保護 VM をサポートしているため Linux ターミナルが動作します。
  • Samsung Galaxy Z Fold 7:Snapdragon 8 Elite チップを搭載し、非保護 VM をサポートしていないため Linux ターミナル は動作しません。
  • Xiaomi 17 Pro:Snapdragon 8 Elite Gen 5 を搭載していますが、同様に非保護 VM をサポートしていないため、Linux ターミナル を実行しようとすると「non-protected VMs are not supported on this device(このデバイスでは非保護 VM はサポートされていません)」というエラーが表示されることが確認されています。

一方で、MediaTek Dimensity チップを搭載した Xiaomi 15T Pro や Galaxy S11 シリーズでは Linux ターミナルが動作することから、原因が Qualcomm チップにあることは明らかです。

Qualcomm の見解と今後の展望

この件について、Android Authority が Qualcomm に問い合わせたところ、同社は次のようにコメントしたことを伝えています。

私たちの優先事項は、OEM パートナーとそのエンドユーザーの進化するニーズを満たす技術を提供することです。Android エコシステムが仮想化のユースケースを拡大し続ける中で、市場の需要が発生すれば、Linux ターミナルのような非セキュアなユースケースを含む新たな要件をサポートする準備はできています。

このコメントは、現時点では Qualcomm が Linux ターミナル機能を十分に重要な市場ニーズとは捉えておらず、積極的にサポートする段階にはないことを示唆しています。

なお、Linux ターミナルは今後 Android デベロッパー向けの標準ツールとして拡張される見込みであり、今後の Snapdragon チップがどのタイミングで対応するかも注目されます。

Linux ターミナルを利用できるチップセット

現時点で Linux ターミナル機能を利用できることが確認されているチップセットは以下の通りです。

  • Google Tensor G1 以降
  • MediaTek Dimensity 9400+ 以降
  • Samsung Exynos 2500

この機能を利用したい場合は、現状これらのチップセットを搭載したデバイスを選ぶ必要があります。

まとめ

Qualcomm の最新チップ Snapdragon 8 Elite Gen 5 は、高い処理性能を持ちながらも、Android 16 の新機能である Linux ターミナルには対応していません。

これは、同チップが機能に必要な「非保護 VM」をサポートせず、「保護 VM」のみに対応しているためです。現状、Linux ターミナルを利用するには Google Tensor、MediaTek Dimensity、または Samsung Exynos の特定のチップセットを搭載したデバイスが必要となります。

とはいえ、多くのユーザーにとっては大きな影響はなく、デスクトップ Linux アプリの利用や Android 上での開発環境構築など、この機能に魅力を感じるユーザーは、デバイス選びの際に注意が必要です。

出典: Android Authority

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著者情報

HelenTech の運営をしている 尾村 真英 です。これまでに 50台以上の Chromebook をレビュー しており、主に小規模事業者を対象に Chromebook や Google Workspace の導入・活用支援も行っています。
現在は、Chrome Enterprise 公式ユーザーコミュニティのモデレーターとしても活動中で、Professional ChromeOS Administrator 資格を保有しています。

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