Google Cloud は、同社の AI 技術を活用して革新的なサービスを構築しているスタートアップやデジタルネイティブ企業 150 社の事例を公式ブログで公開しました。
これは同社が主催した「AI Builders Forum」で明らかにされたもので、開発支援からヘルスケア、クリエイティブ分野まで、幅広い領域で Google の AI が実際に活用されています。
多様な分野で進む AI の活用
今回公開された 150 社のリストは、AI による変革が特定の業界にとどまらず、あらゆる分野に広がっていることを示しています。ここではその中から注目度の高い事例を紹介します。
開発者ツールと生産性の向上
AI はソフトウェア開発の現場における効率化を加速させています。コード生成や自動修正などを AI が担うことで、開発者はより創造的な業務に集中できるようになっています。
- Cursor:AI 搭載コードエディタ。Vertex AI を通じて Gemini などのモデルを活用し、コード全体を理解して開発速度を向上。
- DeepSource:Gemini を搭載した AI エージェントにより、コード品質とセキュリティを自動分析。1 日に数千万行を処理。
- Resolve AI:Gemini on Vertex AI を用いて、システム運用を自動化する AI SRE を構築。障害対応の迅速化と信頼性向上を実現。
ヘルスケア・ライフサイエンス分野の革新
医療や創薬でも AI の活用が進み、診断精度や研究効率の向上に寄与しています。
- Cerebra AI:脳卒中やがんの早期発見を目的に、MedGemma と Gemini を活用して非造影 CT スキャンを解析。
- Infinitus:Gemini のマルチモーダル機能を使い、医療機関や保険会社とのコミュニケーションを自動化。
- Virgo Surgical:Google Cloud 上に構築した AI 基盤モデル「EndoDINO」で、1.75PB を超える映像データを処理し、医療画像の精度を向上。
- Ubie(日本):Vertex AI と Gemini を活用した医師支援ツールを展開。
AI エージェントによる業務自動化
自律的にタスクを実行する「AI エージェント」は、日常業務の自動化を一段と進めています。
- Skyvern:Gemini 1.5 Pro などを用い、Web フォーム入力や資料ダウンロードを自動化。
- Torq:セキュリティ運用を自動化する AI SOC「Socrates」を開発。GCP 上で動作し、インシデント対応の 90% を自動処理。
クリエイティブ・メディア制作の変革
生成 AI は、映像や音楽などの制作フローも大きく変えています。
- HeyGen:Gemini を活用して、動画制作から翻訳・最適化までをワンプロンプトで実行。
- Alson AI:Veo と Gemini により、絵本やアニメ制作を数か月から数分へ短縮。制作コストも大幅削減。
- Toonsutra:インド発の Web コミック企業。Gemini・Lyria・Veo を組み合わせ、音楽付き多言語コミックを制作。
スタートアップへの支援強化
Google Cloud は、AI 活用を支援する「Google for Startups Cloud Program」を提供しています。
最大 35 万ドル分のクラウドクレジットや、Google エキスパートによる技術支援が受けられるほか、AI エージェント構築に関する技術ガイド「Startup Technical Guide: AI Agents」も公開されています。
まとめ
今回の 150 社の事例は、Google Cloud の AI 技術が実際の事業に深く浸透し、開発から医療、クリエイティブまで幅広く応用されていることを示しています。
これらの事例に共通しているのは、単に AI モデルを利用するだけでなく、Google Kubernetes Engine (GKE) のようなスケーラブルなインフラと組み合わせ、実際の業務で安定して「運用」する視点が重視されている点です。AI を活用して新たな価値を生み出したい企業や開発者にとって、大きな指針となる内容です。
出典: Google Cloud