Google Cloud の公式ブログでは、大手 eコマース企業 Wayfair が、コンタクトセンターのオペレーションを ChromeOS および ChromeOS Flex へと移行した成功事例を紹介しています。
この取り組みにより、同社は今後半年間で 120 万ドル以上のコスト削減を見込むとともに、従業員の生産性を大幅に改善したとのことです。
導入前の課題 – 高コストで複雑な従来の環境
ブログによると、Wayfair は ChromeOS 導入前に、以下のような課題を抱えていました。
同社は Google Workspace や Gemini を全社的に活用していましたが、従業員が使用するデバイスは別のプラットフォームで運用されており、非効率な状況にありました。特に、仮想デスクトップ環境 (VDI) の高価なライセンス料や、その維持にかかる複雑なエンジニアリングのオーバーヘッドが大きな負担となっていたと報告されています。
ユーザー側も、ログインに 10 分以上かかる、業務時間中のアップデートで生産性が低下するなど、日常的なパフォーマンスの問題に直面。IT 部門はシステムの維持に多くのリソースを割かれ、イノベーションよりもメンテナンスに時間を費やさざるを得ない状況でした。
ChromeOS への移行 – シンプルで安全な未来への選択
これらの課題を解決するため、Wayfair はすでに社内のデジタルサイネージなどで実績のあった ChromeOS をコンタクトセンターにも拡大することを決定したと述べられています。Google Workspace との親和性、直感的なユーザー体験、IT チームにとっての管理の容易さが決め手となったとしています。
まずジョージア州のコールセンターで試験導入を開始し、既存のデバイスに ChromeOS Flex を展開することで、新規デバイス購入のコストを抑えつつスムーズな移行を実現。このパイロットプログラムでは、127 人の従業員が使用する 150 台以上のデバイスの移行に成功したと紹介されています。
導入がもたらした 3 つの大きな成果
ChromeOS への移行がコスト、ユーザー体験、セキュリティの各面で大きな成果をもたらしたと報告されています。
半年で 120 万ドル以上のコスト削減
Wayfair は、ChromeOS への移行により、今後 6 ヶ月で 120 万ドル以上のコスト削減を見込んでいるとのことです。これは当初の予測を上回る成果です。
VDI ライセンスの廃止によって固定費が削減され、高価で長期的な契約からも解放されました。IT チームの負担も大幅に軽減され、以前は年間 7,500 件以上発生していたパフォーマンス関連のサポートチケットはゼロになりました。
ユーザー体験の劇的な向上
従業員からのフィードバックは非常にポジティブで、「もう元の環境には戻りたくない」という声が上がるほど好評だったと紹介されています。最大の課題であったログイン時間は、以前の 10 分以上から数秒にまで劇的に短縮されました。
VDI 環境で頻発していた画面の切り替えやアプリケーションの遅延もなくなり、エージェントは顧客対応に集中できる環境が整いました。
セキュリティ強化と管理の簡素化
ChromeOS の階層的なセキュリティモデル、自動更新、サンドボックス機能により、企業の攻撃対象領域が大幅に削減されたとしています。セキュリティチームは、手動での介入が少なくてもデバイスが本質的に安全である点を高く評価しています。
また、業務委託先のパートナー (BPO) や、BYOD (私物端末の業務利用) を含むリモートワーカーに対しても、安全なアクセスを提供できる体制が整いました。
今後の展望
Wayfair はこの成功を受け、残りのコンタクトセンターにも展開を拡大し、年末までにすべてのレガシーなラップトップとデスクトップを ChromeOS 搭載デバイスに置き換えることを目指していると、ブログは締めくくられています。
同社は、ChromeOS の導入が単なる IT の簡素化に留まらず、従業員の生産性を高め、より安全で強固な事業基盤を築くための重要な決断であったと考えているようです。