Android スマートフォンの機種変更時、アプリごとに再ログインを求められる煩わしさは、多くのユーザーが抱えてきた問題です。
例えば、通知が届かない、EC アプリの購入履歴が反映されない、チャットアプリの受信が止まるなど、移行直後のストレスは少なくありません。
一方で iPhone(iOS)では、銀行系など一部を除き、ほとんどのアプリがログイン状態のまま移行されるため、この差を不満に感じていたユーザーも多いはずです。
こうした課題に対し、Google が導入した「Restore Credentials API」が、実際に効果を示し始めていることが明らかになりました。
ログイン状態を自動で復元する新しい仕組み
Android Authority の報道によると、Google は昨年「Credential Manager」に Restore Credentials API を追加し、アプリがログイン状態を安全に復元できるようにしました。
仕組みとしては、アプリが生成した「リストアキー(Restore Key)」を暗号化してバックアップに保存し、ユーザーが新端末でデータ復元を行った際にそのキーがアプリへ返されるというものです。
この仕組みが広く採用されれば、SNS、チャット、EC、配車アプリなど、日常的に使う多くのアプリが移行先の端末でログイン済みの状態になります。とくに初期セットアップの手間が減り、端末移行がこれまでよりスムーズになります。
Uber が採用し、ログイン作業を大幅削減へ
この仕組みをいち早く導入した企業として挙げられているのが Uber です。
Uber では、ユーザーが配車を依頼しようとした際にログアウト状態であることが問題になるケースがあり、それを解消するため Restore Credentials API を採用しました。
ロールアウト段階では、1 日あたり平均 1 万人のユーザーがサイレント復元を利用したとされ、全ユーザーに展開すればこの数は倍増する見込みです。結果として、Uber は年間でおよそ 400 万回の手動ログインを削減できる可能性があるとしています。
アプリ側での実装次第では、アプリを開く前にバックグラウンドで完全にログインを復元することも可能だとされています。
iPhone との「移行ギャップ」を埋める可能性
iOS ではほぼ全アプリがログイン状態を維持したまま移行できるのに対し、Android はアプリ側の対応状況に依存しているため、端末によって移行のスムーズさに差が出ていました。
Restore Credentials API が広く採用されれば、この移行時のギャップを大きく縮められる可能性があります。特に Pixel シリーズはバックアップや移行ツールの改善が続いており、この API と組み合わせることで移行の負担を大きく減らせるようになると考えられます。
対応アプリはまだ少ない
ただし現状では、Uber のように積極的に採用した例は限られています。そのため、Pixel ユーザーを含め、すぐにこの変化を実感できるケースはまだ多くありません。特に金融系などセキュリティ要件の厳しいアプリは、対応まで時間がかかる可能性があります。
Android 全体で iPhone 並みの移行のしやすさを実現するには、より多くのアプリ開発者が Restore Credentials API を導入する必要があります。
まとめ
Restore Credentials API は、Android の機種変更で毎回発生していた再ログイン作業を減らすための新しい仕組みで、すでに Uber の導入例では大きな効果が出始めています。
広く普及すれば、SNS やメッセージアプリ、EC アプリなど日常で利用するサービスが移行直後からすぐ使えるようになり、Android の乗り換えがこれまでより圧倒的にスムーズになる可能性があります。
Pixel / Android の乗り換えは長年「iPhone より手間がかかる」とされてきましたが、Restore Credentials API の普及が進めば、この状況は大きく変わっていくかもしれません。


