Google は 2025 年 11 月 13 日(米国時間)、企業のレガシーアプリ問題を解決する新たな仮想アプリ配信基盤「Cameyo by Google」を正式に発表しました。
従来の VDI(仮想デスクトップ)とは異なり、必要なアプリケーションのみを軽量に配信できる “Virtual App Delivery(VAD)” 技術を採用し、ChromeOS や Google Workspace への移行を阻んでいた「アプリギャップ」を根本から解消することを目的としています。
リリースに合わせて、Cameyo by Google は 2025 年 11 月 17 日に一般提供(GA)を開始する予定です。
レガシーアプリが「未来の EUC 戦略」を阻んでいる現状
Google の調査によると、90% の IT リーダーが将来的に Web ベースの EUC(エンドユーザーコンピューティング)戦略を重視している一方で、実際には業務アプリの約 50% が依然としてクライアントベースのレガシーアプリに依存しているとされています。
また、今後 12 か月で最も重要な優先度として「エンドポイントでの AI 活用」が挙げられており、現状と理想のギャップを埋める仕組みが求められていました。
Cameyo by Google とは何か
Cameyo は、従来型の VDI のように OS 全体をストリーミングするのではなく、アプリケーション単位で配信する VAD(Virtual App Delivery) を採用しています。
これにより、企業で長年使われてきたクライアントアプリを、追加のデスクトップ環境を持たずに利用できるようになります。具体的には、次のようなメリットがあります。
- Windows / Linux のレガシーアプリをブラウザ上で直接利用できる
- または PWA(プログレッシブ Web アプリ)として配信し、ネイティブアプリのように扱える
- VPN やファイアウォール設定が不要になり、管理負荷を大幅に削減
- デスクトップ全体を管理する必要がなく、ユーザーのコンテキストスイッチも軽減
実際に、PTSG の Head of Cloud & Infrastructure である Phil Paterson 氏は次のように述べています。
「Cameyo の魅力は、そのシンプルさです。複雑な設定なしにアプリをどんなデバイスでも安全に使えるようにでき、VPN のログインに 15 分以上かかっていた状況が、今では即時アクセスできるようになりました。」
なお、Cameyo はもともと別のサービスとして提供されていましたが、2024 年 6 月に Google が Cameyo を傘下に収めたことで、Google サービスの一つとなりました。
Chrome Enterprise Premium との組み合わせで「すべてのアプリ」をブラウザ内に統合
多くの企業が導入を進める Secure Enterprise Browser(SEB)は、一般的に Web アプリの保護が中心で、ローカルに存在するクライアントアプリは守れないという課題がありました。
この点において、Cameyo + Chrome Enterprise Premium は非常にユニークな組み合わせになります。
- Chrome Enterprise Premium がブラウザを安全な作業領域として提供
- Cameyo がレガシー Windows / Linux アプリをそのブラウザ内に発行
- 結果として、Web アプリもレガシーアプリも、すべてがブラウザの統一されたセキュリティコンテキストで動作
さらに、Chrome の Gemini 統合により、これらのレガシーアプリにも AI の補助機能が利用できるようになります。
ChromeOS・Google Workspace 導入の最大ボトルネックを解消
企業が ChromeOS や Google Workspace を採用する際の最大の障壁は、わずかに残るレガシーアプリの存在でした。
Cameyo by Google によって、この「アプリギャップ」は実質的に解消されます。
- 必須の Windows アプリをブラウザまたは PWA として配信
- ChromeOS Flex を使い、既存 PC を ChromeOS 化してもアプリが使える
- しかも ChromeOS はランサムウェア攻撃ゼロの OS
さらに、Excel の高度なマクロや ERP クライアントなど、従来の Microsoft 依存から抜け出しにくかったアプリも問題なく動作するため、Web ベースのコラボレーション環境へスムーズに移行できます。
導入が圧倒的に簡単、短期間で展開可能
VDI のように数週間〜数か月の準備が必要だった従来の仮想化ソリューションとは異なり、Cameyo は非常に導入が早い点も特徴です。
- 数時間で最初のアプリを配信可能
- 数日で本格運用に移行
- Zero Trust アーキテクチャを標準で搭載し、複雑な周辺設定が不要
IT 管理者にとっても、導入コスト・運用負荷・セキュリティリスクを大幅に減らすことができるソリューションとなっています。
まとめ
Cameyo by Google の登場により、企業が抱えてきたレガシーアプリの課題を解消しながら、ChromeOS や Google Workspace を中心とした Web ベースの環境へ移行しやすくなりました。
今後は、必要なアプリを個別に配信できる VAD(Virtual App Delivery)を活用することで、既存資産を維持しつつ段階的なモダナイゼーションを進められる点が大きなメリットです。
なお、HelenTech では統合途中の Cameyo を実際に試した印象について紹介しています。
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