Google は、Vertex AI 上で提供している AI コーディング支援ツール「Gemini Code Assist」に、新たに「メモリー機能」を追加しました。
この機能は GitHub 上でのコードレビューに対応しており、レビューのたびにチームの方針や書き方の癖を学習し、AI がチーム特有のルールに沿ってより的確なレビューを行えるようになります。
コードレビューの「属人化」を減らす新しい仕組み
これまでの AI コードレビューは、過去のやり取りを記憶できない「ステートレス」な仕組みでした。そのため、同じような指摘を何度も繰り返したり、開発チーム独自のルールに適応できないといった課題がありました。
新しいメモリー機能では、Gemini Code Assist が GitHub 上のプルリクエストを解析し、チームのレビューコメントや議論から「暗黙のルール」を自動的に学習します。
たとえば「このプロジェクトでは import 文を改行しない」などの方針を把握し、次回以降のレビューで同じ指摘を避けるようになります。
手動設定不要、自然にチーム文化を学習
これまでにも「styleguide.md」などのガイドファイルを手動で追加する方法がありましたが、今回のメモリー機能は完全に自動化されています。レビューの過程で AI が学び、ルールを抽出・保存し、次のレビュー時に自動適用します。
この仕組みにより、以下のようなメリットが期待できます。
- チーム全体でレビューの品質と一貫性が向上
- 新人や外部メンバーがチームのスタイルをすぐ理解
- 過去のノウハウが自然と AI に蓄積される
つまり、AI が「チームメンバーの一員」として継続的に成長し、プロジェクト全体の開発効率を底上げするような運用が可能になります。
セキュリティとスケーラビリティにも配慮
学習されたルールは、Google 管理の安全なプロジェクト環境に保存され、他のチームやユーザーと共有されることはありません。
また、必要なときにだけ該当ルールを呼び出すため、プロジェクトが大規模化しても処理の負担を抑えられます。
導入方法
個人開発者や OSS メンテナーは GitHub Marketplace から、企業・組織では Google Cloud Console 経由で導入可能です。いずれも管理画面からメモリー機能を有効化できます。
まとめ
Gemini Code Assist のメモリー機能は、AI がチームのレビュー方針やスタイルを学習し、レビュー品質を高める仕組みです。
開発現場の生産性向上だけでなく、コード品質やナレッジ共有の強化にもつながることが期待されます。
筆者としても、こうした「チームのレビュー文化を取り込む AI」の仕組みは、今後 Google Workspace や Gemini に応用される可能性があり、コードレビュー以外の業務でも活用が進むことに期待しています。


