MediaTek は、2025 年のフラッグシップ Android スマートフォン向けとなる新しいハイエンド SoC (System-on-a-Chip) 「Dimensity 9500」 を正式に発表しました。
この新しいチップセットは、前世代の 「Dimensity 9400」 から CPU、GPU、AI の各性能が大幅に強化されており、特にレイトレーシング性能の飛躍的な向上が特徴です。
また、Qualcomm の次世代フラッグシップチップ「Snapdragon 8 Elite Gen 5」 の直接の競合製品となります。
CPU パフォーマンスと効率の向上
「Dimensity 9500」 の CPU は、MediaTek 独自の第 3 世代 All Big Core デザインを採用しています。CPU構成は以下の通りです。
- 4.21GHz (Arm C1-Ultra) ×1
- 3.50GHz (Arm C1-Premium) ×3
- 2.70GHz (Arm C1-Pro) ×4
C1-Ultra コアはついに 4GHz の大台を突破し、前世代と比較してシングルコア性能が 32% 向上しました。マルチコア性能も 16% 向上しています。
性能向上だけでなく、電力効率も大幅に改善されており、マルチコアのピーク電力使用量は 37% 削減、最も高性能な Ultra コアのピーク時電力消費は最大 55% 削減されました。
これにより、高負荷なゲームや動画編集といったタスクをより長時間、安定して実行できます。
さらに、AI 関連の処理を高速化する Arm の新しい命令セット 「SME2」 をサポートし、オブジェクト検出などの AI タスクの性能が 57% 向上します。

大幅に進化した GPU とレイトレーシング性能
GPU には、新しい 「Arm Mali-G1 Ultra」 が搭載されています。これにより、ピーク性能が 33% 向上し、ピーク時の電力効率も 42% 改善されました。
さらにレイトレーシング性能は、前世代と比較して最大 119% も高速化しています。MediaTek は、120FPS での没入感のあるレイトレーシングゲームプレイが可能であるとしています。
また、Unreal Engine 5.5 以上をサポートしており、よりリアルで高品質なグラフィックス表現が期待できます。
新しい NPU とオンデバイスAIの強化
AI 処理を担う NPU (Neural Processing Unit) には、新しい 「NPU 990」 が搭載され、パフォーマンスは前世代の 2倍 に向上しました。トークン生成速度も 2倍 になり、4K 解像度の高品質な画像生成も可能です。
また、業界初となるCIM (Compute-in-Memory) ベースの 「超高効率NPU」 を新たに搭載しました。これは、常時オンで動作する低電力の小規模 AI モデルの実行に特化しており、電力消費を大幅に削減します。
カメラとマルチメディア機能
「Dimensity 9500」は、カメラとマルチメディア機能も大幅に強化されています。新しい ISP (イメージシグナルプロセッサ) 「Imagiq 1190」 を搭載し、以下の機能を実現しました。
- Android 初の 4K/120fps Dolby Vision ビデオ撮影 (EIS 対応)
- クラス最高の 4K/60fps シネマティックモードビデオ録画
- AI-ISP による強化された最大 200MP の写真撮影
- MiraVision SmartScreen による 1nit の超低輝度表示サポート
特に、Dimensity 9500 を採用する OPPO の次期モデル「Find X9 Pro」 では 200MP のマルチフレーム処理、vivo の 「X300」 シリーズでは 4K/60fps のポートレートビデオ撮影がサポートされることが示唆されています。
接続性
接続性に関しても最新の規格をサポートしています。
- 5G: Sub-6GHz 帯で最大 7.4Gbps のダウンリンク速度を実現する 5CC キャリアアグリゲーション (CA) をサポートします。
- Wi-Fi / Bluetooth: 最新規格の Wi-Fi 7 と Bluetooth 6.0 に対応します。
- Bluetooth オーディオ: 通信範囲が 35% 拡大し、通話や会議中の音声品質が向上します。
- 位置情報: AI-GNSS により位置情報精度が 20% 向上し、ほぼ瞬時に測位が完了します。
Dimensity 9500 搭載スマートフォンの登場時期
「Dimensity 9500」を搭載したフラッグシップスマートフォンは、2025年 第4四半期に登場する予定です。
すでに OPPO は 「Find X9」 シリーズ、vivo は 「X300」 シリーズでの採用を予告しており、これらのデバイスが最初の搭載機となる可能性が高いです。
まとめ
「MediaTek Dimensity 9500」は、CPU、GPU、AI、カメラなど、あらゆる面で前世代から大きなアップグレードとなっています。
Qualcomm のチップセットが主流となっているハイエンド市場で、MediaTek がどこまで戦えるのかは非常に楽しみです。
出典: MediaTek