Arm、新CPUクラスタ「C1」とGPU「Mali G1-Ultra」を発表。オンデバイスAI性能が最大5倍向上

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Arm は 2025 年 9 月 10 日(現地時間)、新しいコンピュートサブシステムプラットフォーム「Arm Lumex」を発表し、その中核をなす新しい CPU クラスター「Arm C1」と GPU「Arm Mali G1-Ultra」を発表しました。

これらの新しいプロセッサは、スマートフォンなどのコンシューマー向けデバイスにおけるオンデバイス AI の性能と電力効率を大幅に向上させることを目的としています。

目次

新 CPU クラスター「Arm C1」の概要

「Arm C1」は、Armv9.3 アーキテクチャをベースにした初の CPU クラスターです。フラッグシップの「C1-Ultra」から高効率の「C1-Nano」まで、性能や電力効率が異なる複数の CPU コアを柔軟に組み合わせることで、さまざまなデバイスの要求に応えます。

最大の特長は、AI 処理を高速化する「Scalable Matrix Extension 2 (SME2)」を CPU に直接統合した点です。これにより、前世代の CPU クラスターと比較して、生成 AI や音声認識などの AI ワークロードにおいて最大で 5 倍の速度向上と、最大 3 倍の効率改善を実現します。

汎用性能も向上しており、業界の主要なベンチマークで平均 30% の性能向上を達成。ゲームやビデオストリーミングなどのアプリケーションでは平均 15% の高速化が見込まれます。

また、SNS や Web ブラウジングといった日常的な利用シーンでは、平均 12% の消費電力削減を実現しています。

各 C1 CPU コアの特徴

C1 CPU シリーズは、以下の 4 つのコアで構成されています。

  • Arm C1-Ultra: フラッグシップデバイス向けに設計された最高性能の CPU です。前世代の「Arm Cortex-X925」と比較して、シングルスレッド性能が 25% 向上しています。
  • Arm C1-Premium: サブフラッグシップ向けの CPU で、「C1-Ultra」よりも 35% 小さい面積で同等の性能レベルを維持し、優れたエリア効率を実現します。
  • Arm C1-Pro: 持続的なパフォーマンスと電力効率を両立する CPU です。前世代の「Arm Cortex-A725」と比較して、ゲームなどの持続的なワークロードで 16% の性能向上、ビデオ再生などでは 12% の電力効率向上を達成しています。
  • Arm C1-Nano: ウェアラブルデバイスなどに最適な、最も電力効率とエリア効率に優れた CPU です。前世代の「Arm Cortex-A520」と比較して、電力効率が 26% 向上しています。

なお、従来の名称である Cortex-X と Cortex-A はなくなりました。

  • Cortex-X9xx → ARM C1-Ultra
  • (新)ARM C1-プレミアム
  • Cortex-A7xx → ARM C1-Pro
  • Cortex-A5xx → ARM C1-Nano

新 GPU「Arm Mali G1-Ultra」の概要

「Arm Mali G1-Ultra」は、Arm の最もパワフルな新しいモバイル GPU であり、「Arm Lumex」プラットフォームのもう一つの重要な構成要素です。特にモバイルゲームと AI 体験の向上に焦点を当てています。

前世代の「Arm Immortalis-G925」GPU と比較して、グラフィックス性能は主要なベンチマークで 20% 向上、AI 推論性能も 20% 向上しています。

ゲームと AI 体験の向上

「Mali G1-Ultra」は、第 2 世代のレイトレーシングユニット「RTUv2」を搭載しており、レイトレーシング性能が最大 2 倍に向上しました。

これにより、モバイルデバイス上でデスクトップクラスのリアルな照明、反射、影の表現が可能になります。実際に「Arena Breakout」で 25%、「Genshin Impact」で 17% など、主要なモバイルゲームでパフォーマンスが大幅に向上しています。

AI に関しては、新しい行列乗算ユニット (MMUL) が FP16 命令をサポートすることで、画像認識や音声認識、AI フィルターなどのワークロードが高速化されます。ユースケースによっては、前世代と比較して最大 104% の性能向上を実現します。

エコシステムと今後の展望

Arm は、開発者がこれらの新しいプロセッサの性能を最大限に活用できるよう、エコシステムのサポートも強化しています。

「Arm C1」の SME2 機能は、「Arm KleidiAI」を介して Google や Meta、Microsoft などの主要な AI フレームワークに統合されており、開発者はコードを変更することなく AI 性能の恩恵を受けられます。

すでに Google の一部のアプリは SME2 に対応済みで、次世代の Android スマートフォンに搭載され次第、AI 機能が向上する見込みです。また、SME2 はフラッグシップモデルだけでなく、将来的にミドルレンジのデバイスにも搭載される予定です。

今回発表された「Arm C1」CPU クラスターと「Arm Mali G1-Ultra」GPU は、スマートフォンでの AI 処理やゲーム体験を新たなレベルに引き上げる可能性を秘めています。

これらの技術が搭載された製品が、近い将来市場に登場することが期待されます。

出典: Arm Newsroom (1, 2)

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著者情報

HelenTech の運営をしている 尾村 真英 です。これまでに 50台以上の Chromebook をレビュー しており、主に小規模事業者を対象に Chromebook や Google Workspace の導入・活用支援も行っています。
現在は、Chrome Enterprise 公式ユーザーコミュニティのモデレーターとしても活動中で、Professional ChromeOS Administrator 資格を保有しています。

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