Google は公式ブログで、大韓航空 (Korean Air) がコンタクトセンターに ChromeOS を導入し、デジタルトランスフォーメーションを推進した事例を公開しました。
大韓航空は、顧客サービスの中心であるコンタクトセンターの近代化を目指し、Google Workspace の全面導入に続いて、エンドユーザーのコンピューティング環境の刷新に着手しました。
同社の最高情報責任者 (CIO) である Choi HeeJung 氏は、今回の移行について「単なる古いハードウェアの交換以上のものでした。これは、Active Directory のようなレガシーシステムへの依存をなくし、より俊敏で安全、かつ効率的な IT 環境を構築するための戦略的な一歩でした」と述べています。
ChromeOS 導入前の課題
24 時間体制で稼働するソウルのコンタクトセンターでは、従来のシステムがいくつかの大きな課題を抱えていました。
- 遅い起動時間: デバイスの起動に 5〜7 分を要し、生産性の大きな妨げとなっていました。
- 業務の中断: 強制的なアップデートや「ブルースクリーン」が頻繁に発生し、業務を中断させていました。
- セキュリティの脆弱性: 24 時間稼働のため、必要なアップデートやセキュリティパッチを頻繁に適用できず、マルウェアなどの脅威に晒されていました。
- 物理的な制約: 大きなハードウェアがデスクスペースを占有し、複雑化する顧客対応に必要なマルチモニターの設置を困難にしていました。
ChromeOS 導入による成果と今後の展望
これらの課題を解決するため、大韓航空はソウルのコンタクトセンターに 670台の ASUS Chromebox を導入しました。この導入は、効率性、セキュリティ、そして将来のイノベーションにおいて大きな成果をもたらしたとしています。
効率性と生産性の向上
ゼロタッチ登録により、デバイスは箱から出してすぐに使用可能で、IT 部門とエージェント双方の導入作業を大幅に簡素化しました。起動時間は数秒に短縮され、エージェントはすぐに業務を開始できるようになりました。
また、コンパクトな Chromebox のデザインはデスクスペースを解放し、マルチモニター環境の構築を可能にしました。
セキュリティ強化と IT 管理の簡素化
ChromeOS に組み込まれたセキュリティ機能により、ウイルス対策ソフトの実行やアップデートのためのダウンタイムを気にする必要がなくなりました。
Google Admin コンソールを使えば、少人数の IT チームでもポリシーの一元管理や問題解決を容易に行うことができます。これにより、IT リソースを保守作業からより戦略的なプロジェクトへと再配置することが可能になりました。
AI 活用と全社展開へのビジョン
ChromeOS という基盤の上に、大韓航空は AI による革新も進めています。
より複雑な問題に対応するエージェント向けに Gemini を搭載した Google Workspace を導入し、Google ドライブ内の情報検索、顧客へのメール作成支援、多言語の問い合わせ翻訳などに活用しています。
コンタクトセンターでの成功を受け、経営陣は来年、全社的に ChromeOS へ移行する計画を承認しました。今後は Cameyo のようなソリューションも活用し、MS Office や ERP システムといった従来のアプリケーションを利用する従業員にもシームレスな体験を提供することを目指しています。
この事例は、ChromeOS の導入が単なるハードウェアの更新に留まらず、クラウド中心のモダンな IT 環境を構築するための重要な戦略であることを示しています。
より詳しい内容については、Google Cloud Blog の「How ChromeOS propelled Korean Air’s digital transformation」をご覧ください。